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2023新年インタビュー⑤ RC2層式アーチ、長支間の波形鋼板ウェブ橋、100m近いハイピア、難易度の高い6車線化

NEXCO西日本新名神大津 持てる技術を総動員して考え、施工する

西日本高速道路 関西支社
新名神大津事務所
所長

宮内 智昭 氏

公開日:2023.01.26

 NEXCO西日本関西支社新名神大津事務所は、新名神 大津JCT(仮称)~城陽JCT・IC間(延長約25km)のうち、滋賀県域の延長12.2kmの建設事業と、甲賀土山IC~大津JCT(仮称)間(延長28.5km)の6車線化事業を担当している。橋梁は新設が8橋(3.6km)、4車線から6車線への拡幅対応をしなければいけない橋梁は27橋(約6.2km)に上る。新設部は波形鋼板ウェブはもちろん、2層アーチ形式の橋梁などもあり、多様性に富む。またピア高100m近い、信楽川橋などもある。拡幅部は1日5万台の交通量をさばきながら施工しなくてはいけないため、工事の安全と品質、サービス確保において、非常に厳しい工事と言える。同事務所の宮内智昭所長に詳細を聞いた。(井手迫瑞樹)

新設 滋賀県域延長12.2kmを担当 橋梁が8橋、トンネルが2本
 下部工は全橋着手済み、一部橋梁は上部工に移行

――管内の事業概要からお願いします
 宮内所長 新名神高速道路は、名古屋市を起点として、神戸市に至る延長約174kmの高速道路です。『新名神』は、先発路線である名神高速道路と適切な交通機能分担を確保することで、名神高速道路の混雑を解消し、利用者のサービスの向上を図ることを建設の目的にしています。また、災害や事故などの緊急時や大規模な補修工事による交通規制時には、名神高速道路と交互に代替機能を発揮して的確に交通処理を行うことを目指しています。
さらに、名神高速道路、中国自動車道など周辺の高速道路とともに、近畿圏と中部圏を結ぶネットワークを形成、強化します。
 これにより高速道路に求められる「高速性」、「定時性」、「快適性」、「安全性」などの機能を高めると共に、沿道及び西日本の広域医療・観光・文化交流などの地域の経済・住民生活への貢献も期待されます。
 また、平成31年3月、亀山西JCT~大津JCT(仮称)について6車線化の事業化がなされ、①物流の効率化による生産性向上、②ネットワークの代替性強化による安定的な交通の確保、③名神リニューアル工事等の実施時における円滑な交通の確保といった効果が期待されます。


新名神全体図(NEXCO西日本提供、以下注釈なきは同)

 ――新名神の新設事業から進捗状況をお願いします
 宮内 当事務所では、大津JCT(仮称)~城陽JCT・IC間(延長約25km)のうち、滋賀県域の延長12.2kmの建設事業(京都府域は新名神京都事務所担当)を担当しています。

 当事務所担当区間の道路構造は、切盛土部が約7.9km(64%)、橋梁が8橋で約3.6km(30%)、トンネルが2本(上下線)で約0.7km(6%)、となっています。構造物比率は36%です。
 橋梁工事は下部工について全橋で着手済みであり、一部橋梁においては上部工工事にも着手しています。トンネル工事は下り線が10月中旬に貫通し、引き続き付帯工を施工中です。上り線は作業坑が貫通していたことから、3車断面への拡幅掘削を行っています。
 舗装工事・施設関係工事については、発注準備中です。

6車線化 延長28.5kmを担当 橋梁拡幅部は27橋
 概ね上部工拡幅のみだが、4橋で下部工からの拡幅施工が必要

――6車線化拡幅事業については
 宮内 当事務所では亀山西JCT~大津JCT(仮称)間(延長約41km)の6車線化事業のうち、甲賀土山IC~大津JCT(仮称)間(延長28.5km)を担当しています。
担当する区間の道路構造は、橋梁拡幅部が27橋で6.2km(22%)、トンネル部が6.4km(22%)、土工部が15.9km(56%)です(但し拡幅しない橋梁延長も含む)。トンネル断面は、上下線とも3車線断面であったため、照明設備の交換とレーンマークの引き直しの対応となります。
 進捗状況は、まず、2022年3月に上り線の金勝山トンネル区間約5kmと下り線の甲南トンネル区間約4.5kmについて3車線の運用を開始しています。そのうち、両区間におけるトンネル区間はいずれも約3kmです。
 現在は、甲賀土山ICから西側の上下線各約6kmについて、既に土工工事・橋梁拡幅工事などに先行着手しており、引き続き進捗を図っていきます。既に土工工事・橋梁拡幅工事などに着手しており、引き続き進捗を図っていきます。
 残る区間については、土工工事や橋梁拡幅工事(技術提案・交渉方式による発注)の工事発注を行っています。
 ――6車線化区間においては上部工を拡幅するだけで済むのですか
 宮内 概ねそうですが、新治橋(上り142m、下り138m、いずれも鋼3径間連続2主鈑桁橋)と文蔵谷橋(上り21m、下り22m、いずれもRCポータルラーメン床版橋)については、下部工から施工する必要があります。他の橋梁は全て下部工が完成しており、上部工構造の拡幅工事となります。

大津JCT 下部工がすべて完了し、上部工が進む
 供用中のDランプの交通を規制しながら大型移動型わくを動かす

 ――新名神の新設事業から個別の構造物について特徴などを教えてください
 宮内 まず、大津JCT部はAおよびDランプ橋は完成供用していて、現在は本線橋(大戸川橋、上り1,313m、下り1,338mのいずれもPRC10径間連続波形鋼板ウェブラーメン箱桁橋)とBランプ橋(橋長602m、PRC2+5径間連続波形鋼板ウェブラーメン箱桁橋)、Cランプ橋(橋長694m、PRC2+5径間連続波形鋼板ウェブラーメン箱桁橋)を建設しています。B、Cランプ橋、本線橋とも、ピア高80mに近い箇所も含めて下部工を全て完了し、上部工工事に着手しています。


下部工施工時の大津JCT


大戸川橋の架設状況

大津JCTBランプ橋、Cランプ橋の架設状況

 ――大津JCT部における上部工の施工上の特徴は
 宮内 供用している新名神高速道路上を張出し架設することになります。既供用線を横過する橋梁は、本線橋の上下線及びCランプの計3径間になります。移動作業車の移動中は、新名神高速道路の通行車両の安全を確保するため、新名神高速道路(下り線)を先頭固定規制して、一時的に通行車両がいない時間帯を作り移動作業車を移動させることを考えています。先頭固定規制の手順としては、信楽ICから管理用パトロールカーを3、4台出して、通行する車両の頭を押さえて、時速30km程度で走行させることにより、前を走る車両との間隔をあけ、1回の先頭固定規制ごとに10分程度の時間を作り出します。その時間で上空の移動作業車を動かし、次のブロックの施工を行っていくわけです。この規制は2023年2月以降に行う予定ですが、都合約30回を予定しています。

 ――先頭固定規制で作る時間で作業を行うのは移動作業車の移動だけですか
 宮内 はい、大型移動型わくの移動時間帯のみ考えています。大型移動型わくの移動時においては、もちろん逸走防止のための安全装置は設置していますが、どうしても移動時には固定装置を開放して移動するので安全を考慮し、移動時のみ先頭固定規制を考えております。移動に要する時間は1分につき1mの能力がある移動装置を使用します。1ブロック長さは4m~4.8mで、1回の移動につき4分から5分要します。従いまして1日1回から2回の先頭固定規制になります。
 ――Bランプ橋の架設については
 宮内 Bランプ橋は片持ち張出し架設工法により施工します。Bランプ橋は直下に高速道路がないため、順調に進捗しており、順次閉合する予定です。

大戸川橋 リブ付き床版構造を採用
 張出床版部はPC板を配置して後追い施工

 ――本線橋となる大戸川橋において工夫していることは
 宮内 上部工の架設方法はB、Cランプと同様片持ち張出し架設工法にて行います。
架設・構造的に工夫しているのはリブ付き床版構造を採用し、張出床版部はPC板を設置して後追い施工している点です。


大戸川橋上部工一般図

 ――もう少し詳しく教えてください
 宮内 本橋は、張出床版長が右側と左側で異なります。右側は約2.8mに対して左側については、約5.4mとアンバランスな張り出し長となります。左側の張り出し長に対しては構造対応として、リブを設けることにしました。標準のリブ間隔は2.4mとしました。
リブを設けることにより床版厚を小さくでき軽量化が図れます。リブは、工場で製作するプレキャスト製品としており、現場では煩雑な型わく施工が省略できることで、施工時における合理化を図っています。
 また、右側と左側の張り出し長が大きく違うので、特に張り出し架設時において左右のアンバランスから左右同時架設のための移動作業車の補強(改造)は非常に困難で他の方法を模索していました。そこで、同じ張り出し長(つまり左側の張り出し長)をまず施工して、1ブロックあとから左側の残りの張り出し部を施工する方法を採用しました。これによりアンバランスによる施工課題が解消しました。次に残りの張り出し部の施工については、移動作業車が移動してしまっているので型わくの支持をどうするかということで、今回はPC板を採用しました。PC板はコンポ橋と同様な構造と思ってもらえれば理解しやすいと思います。PC板の受けとして、プレキャストリブを利用することできわめて合理的な施工が可能となりました。


プレキャストリブおよびPC板配置図

 ――そのリブというのはどのようなものですか
 宮内 リブ付き床版箱桁橋は、上床版を補強する橋軸直角方向のリブを橋軸方向に等間隔で配置することにより、荷重による床版応力を橋軸方向と橋軸直角方向の2方向で分担する構造で、床版支間を広く、また床版厚を薄く設定できる特徴があります。
大戸川橋では、リブの間隔は標準で2.4m、橋軸直角方向の長さは、床版端まで、幅は30cm、高さはウェブ上で50cmとしております。なお、全長で最低13.94mになることから、架設重量の関係から2分割にしております。

 ――ストラットよりも施工が楽になり、コストも縮減できるのですか
 宮内  本橋のような波形鋼板ウェブ橋にストラット構造にした例はあります。この場合ストラット1本ごとの長さや角度が異なることから、煩雑な施工になったものと思います。本橋のリブは、工場製作したリブをウェブ上で設置し、床版を施工する工法であることからストラットと比較すれば施工は、省力化されています。両者のコスト比較については、下部工構造から全体コストで考えないといけませんので何とも言えません。
 ――拡幅床版部におけるPC板というのはプレキャストPC製の底板という理解でいいのですか
 宮内 そうです。中央部は現場打ちで施工しますが、張出し部はプレキャストPCパネルを底型わくのような形で配置し、その上で張出し部の床版を現場打ちして、その後、プレグラウト横締め鋼材で一体化していきます。
 ――ランプ橋と本線橋の橋長と進捗率はどの程度まで進んでいますか
 宮内 橋長は、本線橋上り線で、1,313m、下り線は1,338m、Cランプは694m、Bランプは602mです。進捗率は全体で約45%です。


本線橋とCランプ橋の進捗状況

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