道路構造物ジャーナルNET

工数を7割削減、コストを最大5割縮減、複数社に跨る業務も統合管理

ジャスト 橋梁点検調査作成業務クラウドアプリ「タテログ」を上市

株式会社ジャスト
イノベーション・マーケティング部
主任 ソフトウェアエンジニア

藤野 航平

公開日:2022.08.23

 ジャストは、クラウドを用いて橋梁点検調査作成業務の工数を7割削減し、コストを従来に比べて最大5割縮減できるクラウドアプリケーション「タテログ」を上市した。点検業者の調書作成業務のフローが簡略化できるだけでなく、それをまとめる元請や発注者もその内容について俯瞰して統合管理できるメリットがある、同社イノベーション・マーケティング部主任 ソフトウェアエンジニアを務め、タテログ開発者の藤野航平氏に詳細を聞いた。(井手迫瑞樹)

既存のワークフローを変えず作業できる
 写真、損傷図面、エクセルデータを一括取り込みし統合管理

 ――タテログの概要について教えてください
 藤野主任 タテログ(右画像はイメージロゴ)は道路橋の点検調書作成業務において、既存のワークフローを変えず、専用システムを必要とせず、さらに操作画面を簡略化し扱いやすくしています。過去の点検調書データ(エクセル)や、図面データ(CAD)、写真データなどの外部データを一括取り込みできます。内部のテキストデータはタテログのシステム内で編集可能なため、いちいちエクセルベースまで戻る必要がなく、国土交通省の橋梁定期点検要領をベースとした各種様式に従った納品データで出力できます。また、ジャストでは橋梁点検や補修設計も行っている土木部門があり、いわば橋梁点検のプロフェッショナルが問題をフィードバックできます。橋梁点検業務に精通したソフトウェアエンジニアが、それを理解し、さらに専任のUI(ユーザーインターフェース)デザイナーと一緒になってアプリケーションをアップデートしていくことが出来ます。アップデートは約3週間に1回行うことを考えており、これからユーザーが増えてくれば、フィードバックの量も劇的に増え、さらに迅速にアプリを最適化することが可能になると考えています。
 ――既存のワークフローを変えないとはどういうことですか
 藤野 現場で野帳を作成し、野帳を基に損傷図を作成する過程は従来までのシステムと代わりません。他社の既存の橋梁点検調書作成業務ソフトウェアでは、CADによる損傷図作成までシステムの中に入れており、オートデスクなど既存のCAD作成ソフトウェアとは異なったハンドリングで作成せねばならず、操作性や作業効率において作成者に大きな負荷がかかっていました。「タテログ」は餅は餅屋的な発想でCADによる損傷図作成をシステムの中にいれることはせず、CAD図を解析し、オブジェクトとエクセルデータや写真画像データなどを同期させることによって編集管理できるアプリケーションとしています。つまり、タテログ用にCADなどの図面作成データ用の操作方法などを覚える必要がなく、今までの点検調書作成ソフトウェアと比べて作業者の負荷を低減できます。

既存のワークフローは変えずに点検調書を作成できる

 さて、従来の橋梁点検調書作成業務では、過年度の点検調書や作成した損傷図を見ながら点検調書を作成する必要がありました。また、過年度の点検調書から今年度の点検調書への転記も手作業で行わねばならず、さらには点検要領が変わることで調書内の転記において整合性が取れなくなるなどの課題がありました。それらの項目記述箇所の転記や表記の揺らぎ(「伸縮装置orジョイント」、「支承or沓」、「ピアor橋脚」、「ひび割れorクラック」など)も自動的に記述場所を特定することができるため、煩雑な整合作業が不要になります。
 加えて従来の調書作成業務は1箇所修正があると、複数の調書やCAD図に渡る数か所の入力作業が必要で、写真台帳の貼り付け、リサイズ、写真入れ替えなどの作業に膨大な時間を要していました。しかし、タテログではエクセルデータなどをインポートしたデータをアプリに一旦統合し、アプリ画面で修正することで、CAD上や複数の調書上のテキストデータを同時に修正することが出来ます。写真の貼り付け、リサイズも自動で行うことが出来、調書入力、修正作業を大幅に削減することが出来ます。
 最終的な出力も国土交通省、自治体などの要領に合わせたデータで出力されるため、作成者の負担は大きく軽減できます。


従来作業と比較して70%の工数削減効果を有する/橋梁点検のプロの声から生まれたアプリであり、調書作成時の負荷を減らすことができる

損傷や写真などの情報を一括管理、調書の複数のシートへ書き出すことができる

要素番号や部材材料の追加や変更も簡単だ

自社の業務改善がビジネスチャンスを生み出すアプリ開発に昇華
 国土交通省の橋梁定期点検要領の調書をベースに自治体などに対象を拡大

 ――ジャストは非破壊検査を行う会社として知られていますが、なぜこうしたシステムを作ろうと考えたのですか
 藤野 実は最初から社外に売り出すアプリケーションとして作ろうとしたわけではないのです。
 ――と、言うと?
 藤野 社内の橋梁点検を行う部署から、調書作成業務が煩雑で難しく、何とか効率化できないか? という要望がありました。建築業務でもそうしたアプリケーションを開発してきたこともあり、橋梁点検業務でも要望に応えられないかと開発してみると……
 ――思いのほか良いものが出来た、と
 藤野 当社と同じように橋梁点検調書作成業務で悩んでいる方々に寄与できると考えました。
 ――今後のアプリケーションの拡張についてどのように考えておられますか
 藤野 現在対応している橋梁点検調書の形式は国土交通省の橋梁定期点検要領(H26、H31)、神奈川県都市整備技術センターの点検要領(神奈川県内の12市10町の自治体の道路橋が対象)、その他、広島市橋梁点検マニュアルです。また、早期に77条調査報告用様式、埼玉県、山形県、茨城県、岡山県の橋梁点検調書にも対応できるようにしています。今後も公表している点検要領に基づく調書形式はもちろん、未公表の自治体の点検要領の長所もできうる限り入手し、タテログの対応できる範囲を広げようと考えています。


対応する橋梁定期点検要領は今後も追加予定である

撮影者ごとの写真一括登録機能など、ユーザーのフィードバックを元にアップデートし続けていく

15社がテスト利用 その成果をフィードバック
 元請を担う建設コンサルタントもメインターゲットの一つ

 ――操作性や機能向上はどのように行っていきますか
 藤野 現在、当社の土木部門に加え、15社ほどのユーザーにテスト利用していただいており、そのフィードバックによって機能向上を図っています。これからは利用者も増えていきますので、新規ユーザーからの要望にも適切にこたえていき、より使いやすいアプリにしていきます。
 ――このアプリを売っていく主要な需要先はどのような会社を考えていますか
 藤野 メインターゲットは2つあります。1つは点検を直接担う会社です。
 もう1つはそうした点検を担う会社に、橋梁点検業務をアウトソーシングしている元請の建設コンサルタント会社です。
 ――後者はどのような導入メリットがあるのですか
 藤野 点検すべき橋梁の数や規模が大きくなればなるほど、点検会社は1社では賄いきれず、必然的に複数の会社を使わざるを得なくなります。しかし、そこで問題になるのは入力の仕方や表記の揺らぎなどの書式のばらつきです。これを元請がいちいちチェックすることになれば、管理上膨大な負担が生じます。タテログはそうしたチェックを自動的に行うことが出来るため管理者の負担を劇的に減らすことが出来、点検結果の判断の正誤など本質的なチェックに時間を充てることが出来るようになり、より品質の高い点検調書を発注者に提出することが可能になります。元請を担う規模の建設コンサルタント会社には、当面プロジェクト管理に限定して無料で使用していただき、タテログの良さを知っていただきたいと考えています。但し、元請会社が下請に業務を委託してタテログを使わせる際の使用料はいただきます。


建設コンサルタントに特化した機能も用意している

 ――先ほどの拡張性にも関連しますが、建設コンサルタントは将来の補修補強設計業務や架け替えに備えて、長大橋や特殊橋など種類やインフラの価値によっては、点検要領以外の様々な情報を点検時に収集しようとするかもしれません。タテログはそうした時に必要な項目もあるいは元請を担うコンサルタントに対して拡張して提供することはできますか
 藤野 可能です。ユーザーの求めに応じてそうした対応も行っていきたいと考えています。
 ――タテログを導入する際、もしくは使用する際のコストは
 藤野 イニシャルコストとしては導入支援コストがかかりますが、パッケージ化されたソフトウェアを買うことを考えれば、はるかにコストは低くなります。また、使用料は期間を区切っていただくわけでなく、実際に使用した数量に応じていただく方式としています。それでもある橋梁では従来の橋梁点検調書作成業務に比べて工数で7割、コストで約5割削減できる結果をもたらしました。ユーザーからの要望対応に対して、開発が追い付いていない点があり、アプリの改善余地はまだまだありますが、タテログの導入は、橋梁点検業務を行う全ての会社の業務改善に寄与できると自負しています。
 ――ありがとうございました

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