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6路線約720kmを管理、橋梁は811橋、トンネルは63チューブ

NEXCO東日本北海道支社 札幌市内の連続高架区間のリニューアル工事に着手

東日本高速道路株式会社
北海道支社
道路事業部長

林 正幸

公開日:2022.06.22

 東日本高速道路(NEXCO東日本)北海道支社は、小樽ジャンクションフル化事業や道東自動車道4車線化事業などを新設事業として進めるとともに、都市部での上部工拡幅をともなう床版取替工事となる札幌市内連続高架区間橋梁リニューアル事業に着手している。それら事業の詳細と、維持管理の現況を同支社道路事業部長の林正幸氏に聞いた。

管理延長の約35%が開通後30年以上経過
 構造物比率は橋梁約12%、トンネル約8%

 ――管内の道路および構造物の現状からお願いします
 林部長 北海道内の6路線約720kmを管理しています。そのうち、開通後30年以上経過した延長が約35%(約270km)を占めています。道内の高速道路で最初に開通したのは、札樽自動車道の小樽~札幌西間と道央自動車道の千歳~札幌南間です。札幌オリンピックにあわせて1971年に供用を開始しましたので、2021年に開通50周年となりました。
 1990年までに道央自動車道が旭川と室蘭まで延伸し、2000年までに札樽自動車道が道央自動車道と接続し、道東自動車道の一部区間と深川留萌自動車道、日高自動車道が開通しています。その後、国土交通省管理の旭川紋別自動車道、帯広広尾自動車道の開通により、2010年までには道内の大部分の高速道路ネットワークができあがりました。2011年には道東自動車道の占冠~夕張間が開通して道央自動車道と直結、2018年12月の後志自動車道の余市~小樽JCT間の開通で有料区間としての新設路線整備は完了しました。


北海道の高速道路ネットワークと延長の推移(NEXCO東日本北海道支社提供。注釈なき場合は以下、同)

 構造物比率は約20%で、橋梁約12%(約85km)、土構造物約80%(約575km)、トンネル約8%(約60km)となっています。NEXCO3社の比率と比較すると、管内では土構造物の占める割合が約5%多くなっていることが特徴と言えます。路線別では、札幌エリアが高架橋となっている札樽自動車道や、山間部の路線で延長の長いトンネルがある後志自動車道で構造物比率が高くなっています。
 供用区間の平均年齢は29年で、延長比率では約35%の区間が供用後30年を経過していることから、構造物の老朽化が進展しています。劣化の主な要因としては、北海道特有の寒冷な気候と冬期の凍結防止剤散布にともなう塩化物イオンの侵入が考えられます。春先にはそれらの影響により、舗装が痛み、大きなポットホールも多数発生することから、橋梁では床版下面よりも上面に損傷が多く発生しているのが現状です。


NEXCO東日本管理の高速道路の供用経過年数

 凍結防止剤は過去3年平均で約30,000t/年を散布していることから、供用後30年でも劣化要素は大きく、構造物にとって厳しい環境にあると考えています。なお、凍結防止剤の散布量については凍結防止剤最適散布システムの導入により、現在、約7%(約2,000t)の削減を図っています。
 10年後には、供用後30年以上となる区間が約70%(約499km)になります。現時点の2倍となるので、それまでの対策が重要になると考えています。
 ――凍結防止剤最適散布システムとは
  同システム(ISCOS)は、乾燥、湿潤、積雪、凍結などの路面状態を見極めて、その状態に応じた最適な散布量を凍結防止剤適量積込み装置(DDホッパー)と自動散布装置で散布するというものです。
 ブリヂストンが開発した路面状態判別システム(CAIS®)を道路管理に活用する目的で、ネクスコ・エンジニアリング北海道と共同研究を行って実用化しました。位置情報システムを搭載しているので100mごとの詳細な路面状態の把握ができ、散布量の削減に寄与しています。2014年度に初導入され、現在は支社管内すべての雪氷基地に配備されています。


路面状態判別システム(CAIS®)の概要

2021年7月には6管理事務所を5管理事務所に再編
 札幌工事事務所と帯広工事事務所も設置

 ――2021年には札幌工事事務所の設置など、管理体制を変更しています
  同年7月1日に管理事務所の再編と札幌工事事務所および帯広工事事務所の設置を行いました。
 管理事務所は6管理事務所(室蘭・苫小牧・札幌・岩見沢・旭川・帯広)から5管理事務所(室蘭・北広島・札幌・旭川・帯広)に再編しています。旧札幌管理事務所は管理延長が143kmと長く、人員と事業費が集中していましたので、2分割する形で管理エリアの南側と旧苫小牧管理事務所の管理エリアを北広島管理事務所の所掌としました。管理エリア北側と旧岩見沢管理事務所の大部分が現札幌管理事務所の所掌となります。旧苫小牧管理事務所の管理延長が75.3km、旧岩見沢管理事務所が同66.7kmと支社内では短かったので、再編により管理延長のバランスを取るとともに、業務の平準化を図りました。


管理事務所の再編

 札幌工事事務所は、札幌高架区間のリニューアル工事と小樽JCT工事などが担当業務で、小樽地区の大規模更新事業の担当も視野に入れています。帯広工事事務所は、道東自動車道の4車線化工事、(仮称)長流枝(おさるし)スマートIC工事などを担当します。

小樽JCTフル化事業 人家と札樽道に挟まれた盛土のり面上の狭小空間で施工
 PC桁はA2橋台背後からP4までの送出し架設を計画

 ――進捗中の事業は
  新設事業では、小樽ジャンクションフル化事業と道東自動車道4車線化事業、長流枝スマートIC事業があります。改築・リニューアル事業では、札幌市内連続高架区間橋梁リニューアル事業や高速道路リニューアル事業、橋梁耐震補強事業を行っています。
 ――小樽ジャンクションフル化事業は
  同事業は、札樽自動車道の小樽方面から後志自動車道の余市方面に向かう小樽ジャンクション(JCT)Cランプ橋を建設するものです。同橋の建設により、小樽JCTがフル化されます。


小樽ジャンクション(JCT)とCランプ橋の概要

 ――同橋の橋梁形式および延長は
  11径間連続鋼・コンクリート混合箱桁橋で、橋長は641m(鋼橋191.5m、コンクリート橋449.5m)です。下部工は、逆T式橋台2基(直接基礎)、単柱式橋脚(張出あり)10基(大口径深礎杭)となります。
 ランプ橋としては橋長が長くなっているのは、管内のランプ橋は基本的に縦断勾配を4%に抑えていますが、札樽自動車道が小樽方面から小樽JCTに向けて3%の上り勾配となっているため、その差1%で札樽自動車道の本線を超える必要があるためです。


小樽ジャンクション(JCT)Cランプ橋 橋梁一般図(※拡大してご覧ください)

同橋 完成イメージ図

 ――鋼・コンクリート混合橋としたのは
  構造上のバランスを勘案したうえで決定しました。A1~P2の曲線半径がR=170程度となっていますので、そのバランスも取ってA1~P3までを鋼橋、P3~A2までをコンクリート橋としています。
 ――進捗状況を教えてください
  余市側のA1橋台は完成しています。2021年夏頃から工事用道路の工事に着手していて、2022年度から下部工施工に着手していきます。ただ、2022年度は工事用道路と基礎の一部施工で終わりますので、実質的には2023年度から2024年度にかけて下部工と上部工に着手していく形です。


完成したA1橋台と工事用道路の施工

 ――施工にあたり課題がありましたら
  単発のランプ橋工事ですが、橋長と現場条件から難しい工事になります。現場は人家が隣接し、人家と札樽自動車道との間に挟まれた盛土のり面上の狭小空間での施工となりますので、細心の注意を払いながら工事を進めなければなりません。


人家と札樽自動車道との間に挟まれた盛土のり面上での施工となる

 ――盛土のり面上に、どのように下部工を構築していくのですか
  P4に上がる工事用道路を整備した後に、本線とP4~P9の間に桟橋を造って本線と反対側に大口径深礎杭を打設していきます。狭いヤードのうえに、本線用ののり面を使うことになりますので配慮をしなければなりません。
 ――盛土の土留めなどの対策は必要ですか
  硬い地盤となっていますので、盛土そのものの対策は行わなくても大丈夫だと考えています。ただ、盛土の下にすぐ人家がありますので、その安全対策を含めて慎重に施工していく必要があります。
 ――上部工施工については
  札樽自動車道の本線上の桁(A1~P1)は移動多軸台車を用いて一括架設を行います。A1~P1の支間長は76mで曲線桁となりますので、こちらも慎重な施工が求められます。ヤードは、Bランプ(後志自動車道余市方面から札樽自動車道札幌方面)建設時に使用した地組ヤードをそのまま使えますので、問題ないと考えています。P1~P3間はクレーンを用いて架設していきます。
 課題はPC桁の架設で、当支社の構造技術課も設計に苦労しています。狭小な現場条件でクレーンベント架設や支保工架設を採用できないことから、A2橋台の背後に施工ヤードを設けて現場打ちを行い、P4まで送出しで架設していきます。A2~P4間は380mで、4%の上り勾配での送出しとなります。P3~P4は支保工架設です。
 ――塩害・凍害対策では
  橋梁排水管には高密度ポリエチレン管、橋梁検査路にはアルミ合金製検査路を採用する計画です。これは後志自動車道の橋梁と同様となります。また、札樽自動車道の直上は塗替塗装が困難となるため、金属溶射(Al-Mg合金溶射)を採用する計画です。
 ――設計および施工会社は
  設計はオリエンタルコンサルタンツ、施工は五洋建設・ピーエス三菱・横河ブリッジJVです。

道東自動車道 占冠IC~十勝清水IC間の全区間が4車線化事業対象に
 トマムIC~十勝清水IC間の延長約9.5kmは準備工事が完了

 ――道東自動車道4車線化事業について教えてください
  占冠ICから十勝清水ICまでの4車線化事業を進めています。同区間のうち、占冠IC~トマムIC間が延長26.2kmでⅠ期線の構造物比率は30.2%(土工18.2%、トンネル6.2%、橋梁1.7%)、トマムIC~十勝清水IC間が延長20.9kmで同33.5%(土工13.9%、トンネル5.9%、橋梁1.1%)となります。
 トマムIC~十勝清水IC間付加車線事業として延長約9.5kmが2019年3月に事業許可された後、2020年3月に占冠IC~トマムIC間4車線化事業(延長約19.9km)、2021年3月にトマムIC~十勝清水IC間4車線化事業(延長約3.2km)として事業許可されました。2022年3月にはトマムIC~十勝清水IC間で残っていた区間(延長約5.9km)も事業許可されましたので、占冠IC~十勝清水ICの全区間が事業対象となりました。


道東自動車道4車線化事業の概要

 ――各事業の進捗状況は
  トマムIC~十勝清水IC間付加車線事業は2021年度に準備工事が完了して、同年度に橋梁下部工やトンネルを含む土工工事2件とPC橋と鋼橋の上部工工事(各1件)の発注を行いました。土工工事は契約が完了し、上部工工事2件のうち、1件(PC橋)が契約完了、残る1件(鋼橋2橋)が手続き中です(編集部注:鋼橋2橋も5月に契約完了)
 占冠IC~トマムIC間4車線化事業は、測量と土質調査が終わり、設計業務に順次着手しています。
 トマムIC~十勝清水IC間4車線化事業は、測量、土質調査、設計業務に順次着手している状態です。
 ――トマムIC~十勝清水IC間付加車線事業区間の構造物について
  橋梁は3橋で、ペケレベツ川橋(143m、鋼3径間連続鈑桁橋)、ペンケオタソイ川橋(291m、PC3径間連続箱桁橋)、広内川橋(221m、鋼4径間連続鈑桁橋)となります。トンネルは広内トンネル(910m)の1チューブです。


ペンケオタソイ川橋(Ⅰ期線)

広内トンネル東坑口

 同区間は十勝清水ICから山間部に入るまでとなりますので、工事用進入路の確保や施工上などでの困難点はほぼないと考えています。広内川橋は橋脚高が20m以上になりますが、通常の施工方法で対応できますし、広内トンネルの地山状況も悪くありません。


トマムIC~十勝清水IC間付加車線事業区間の橋梁とトンネル

 ――占冠IC~トマムIC間4車線化事業は
  橋梁が18橋、トンネルが4チューブで、橋梁は形式検討中、トンネルは設計中です。山間部となりますので、工事用進入路が限られて施工しづらくなりますが、大きな課題が出てくるとは考えていません。ただ、東占冠トンネルは延長が2,493mと長く、脆弱な蛇紋岩の地山となります。Ⅰ期線と線形を少し離したほうがいいという案も出ていますが、検討中です。
 ――発注はいつぐらいになりそうですか
  延長が長く、4車線化が期待されている区間になりますので、設計が完了したものから順番に発注していきますが、未定です。


占冠IC~トマムIC間4車線化事業区間の橋梁とトンネル

 ――トマムIC~十勝清水IC間4車線化事業は
  橋梁が2橋、トンネルが1チューブで、橋梁形式選定中およびトンネル設計中です。
こちらも山間部となり、事業延長約3.2kmのうち、狩勝第二トンネルが2,576mとその大部分を占めます。セパレート区間となり、Ⅰ期線と少し離れた箇所を掘削していきます。


トマムIC~十勝清水IC間4車線化事業区間の橋梁とトンネル

長流枝スマートIC事業 観光面などでの利便性向上に期待

 ――長流枝スマートIC事業について
  道東自動車道 音更帯広IC~池田IC間の音更帯広ICから9.3km、池田ICから12.3kmの位置に本線直結型のスマートICを新設する事業です。十勝川温泉のすぐ近くに位置し、観光面などでの利便性向上が期待されています。また、東側から帯広市内に入る時に活用できるようになります。


長流枝スマートIC事業の概要(国土交通省資料より)

 2020年10月に事業許可され、現在は測量、土質調査、設計業務に順次着手しています。構造物としては長流枝川を横架する橋梁が1橋あり、河川協議を行いながら、最終的な構造形式を検討中です。橋長も未定ですが、単径間になると思います。

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