道路構造物ジャーナルNET

大規模更新は切土法面の補強工事など施工中。耐震補強も紫川や遠賀川渡河部などで対策進める

NEXCO西日本北九州高速 関門橋リニューアルが補剛桁を完了し、終盤へ

西日本高速道路
九州支社
北九州高速道路事務所
所長

本山 和幸

公開日:2022.06.17

 NEXCO西日本九州支社北九州高速道路事務所は、高速道路4路線と一般有料道路2路線、合計6路線135.8kmの管理を行っている。その中には関門海峡をつなぐ構造物である関門トンネルと関門橋があり、関門橋については現在リニューアル工事を進めており、補剛桁までが完了し、現在はケーブル補修工を施工中だ。管理対象が本州と九州をつなぐ箇所であるため。維持管理についてはより細心の対応が必要であり、耐震補強や各種大規模更新・大規模修繕の対応も進んでいる。八木山バイパスや椎田道路の4車線化も含め、本山和幸所長に詳細を聞いた。(井手迫瑞樹)

高速道路4路線と一般有料道路2路線、合計6路線135.8kmを管理
 橋梁は16.7km、トンネルは17.6kmで構造物比率は約25%

 ――路線概要から教えてください
 本山所長 当事務所は、中国道の下関IC付近(小月IC~下関IC間)0.5kmと、関門自動車道と九州道の一部(下関IC~福岡IC)77.7km、東九州道の北九州JCT~中津IC間43.4km、一般有料道路椎田道路10.3km、関門トンネルが3.9km、全体として高速道路4路線と一般有料道路2路線、合計6路線135.8kmの管理をしています。
管内の特徴としては、関門橋(1,068m)、福智山トンネルや金剛トンネルといったトンネル延長が2kmを超える長大トンネル、海底トンネルである関門トンネル(3,925m)という重要な長大構造物を管理している事務所といえます。

 1日当たりの断面交通量としては、新型コロナ出現前の参考値ですが、古賀IC~福岡IC間の6万7千台を筆頭に、八幡ICまでは6万台で推移し、八幡ICから東が少し落ちて北九州JCTまでは4万5千台前後となっています。関門橋と関門トンネルの断面交通量は合わせて7万台ほどで、東九州道は北九州JCT~苅田北九州空港IC間が2万1千台、それより南側、苅田北九州空港IC~椎田南IC間が1万5千台前後、椎田南IC~中津IC間が1万台前後となっています。
コロナ禍においては、2020年度で交通量が前年比15~20%減少しています。車種別では、観光を目的とした普通車の減少が顕著で、大型車の減少は軽微に留まっています。

 ――現在の管内橋梁・トンネルの内訳は
 本山 管内道路延長135.8kmのうち、橋梁は16.7km、トンネルは17.6km、土工101.5kmで構造物比率は約25%となっています(※ランプ部除く)。
 橋梁は本線橋が144橋、ランプ橋が38橋(数え方は上下線ある場合は合わせて1橋とする)で、橋種別は、それぞれRC橋が4割、PC橋が3割、鋼橋が3割を占めています。
供用年数別では関門橋が供用後48年を超えているほか、九州道の八幡IC~福岡ICが供用後40年を経過しています。管内で30年を経過した橋梁は7割に達しています。

 トンネルは、管内で25チューブを管理しています。
 関門トンネル(3,641m)、福智山トンネル(3,590m)、金剛山トンネル(2,200m)、高城山トンネル(2,074m)などの長大トンネルがあります。
 工種別は、九州道の小倉南IC~八幡ICおよび、東九州道の12チューブがNATM工法、そのほかの区間は在来矢板工法が11チューブ、開削工法が1チューブとなっています。
 長大トンネルの工法は関門トンネルのみ在来矢板工法で、他はNATM工法となっています。

橋梁 RC床版の浮き・剥離が最も多く、特に床版端部に見られる
 関門トンネルで一部補修を検討中

 ――管内の構造物劣化状況について、点検を進めてみての管内各路線の構造物の劣化状況を教えてください
 本山 橋梁の劣化状況としては、RC床版の浮き・剥離が最も多く、特に床版端部に見られます。主な原因は伸縮装置からの漏水の影響と思われます。その漏水に伴い、凍結防止剤による塩害の影響もあるものと考えられます。
鋼橋では伸縮装置からの漏水による桁端部の腐食が多く見られます。また、排水管からの漏水により下フランジ付近が腐食している箇所もあります。

床版の損傷状況


上部工の損傷状況

鋼桁下フランジの損傷状況(左)と部分補修完了状況(右)

 ――排水管の損傷は、継ぎ目部からの漏水により、桁などに損傷を生じさせる可能性があります。その補修についてはどのように考えていますか
 本山 現時点において計画的な更新等の対応は予定していませんが、排水管の接続部を補修する際は「受け桝構造」を「伸縮継手構造」に変更するなど、補修時に現設計要領に適合する構造に見直すことで変状の再発を防止しています。
 ――トンネルの劣化状況は
 本山 覆工コンクリートの浮きや剥離が生じています。また、漏水がアーチ部、目地部に見られます。
特に関門トンネルについては、覆工打ち継ぎ目の剥離や漏水に加え、ケーブルダクトを抱える側壁コンクリートが劣化により浮き・剥離を生じています。ただし、後打ちの側壁部の浮き・剥離で構造的な変状ではないと考えています。2021年度に調査を完了しており、次年度以降の補修を検討中です。


関門TN覆工漏水状況/関門TN側壁部打ち継ぎ目部はく離

 ――軸方向の浮き・剥離は生じていませんか
 本山 当管内にそうしたシリアスな損傷は今のところ生じていません。

 ――橋梁など耐震補強の進捗状況について教えてください
 本山 橋梁の耐震補強については、契機として、高速道路などの緊急輸送道路について、落橋・倒壊の防止対策に加え、路面に大きな段差が生じないよう、耐震補強を進めているところです。進捗状況としては、ロッキング橋脚の耐震補強は全て完了(北九州管内は3橋)、それ以外の橋梁についても、適用道示の年次や現地状況(補強状況)を確認しながら、橋としての機能回復が速やかに行うことができる対策が必要と判断される橋梁から順次補強工事を実施しています。
 北九州管内では、2021年度までに2件の工事発注を行い、施工に着手しているところです。
 落橋防止装置についても、橋脚補強と同様に、設計条件を確認しながら必要と判断される橋梁から順次工事を進めています。

新門司IC~若宮IC間の橋梁などで耐震補強を施工中
 大規模更新 橋梁床版取替は3橋で実績 現在は切土法面対策が2件で進捗

 ――2021年度および22年度の耐震工事の対象橋梁及び対策工法を教えてください。ま該当橋の橋梁形式ついても教えてください
 本山 対象橋梁は新門司IC~若宮ICにある本線橋・ランプ橋です。具体的には畑第一高架橋と長野第1橋、長野第2橋、長野第4橋、長野第5橋、紫川第1橋、紫川第2橋です。対策工法は落橋防止装置の設置やRC巻立て補強、炭素繊維巻立て補強などです。形式はいずれも桁橋と中空床版橋です。

耐震補強の施工状況

 ――橋梁の長寿命化修繕計画に基づいた対策の進捗状況について教えてください。
 本山 省令点検1巡目(H26~H30)において、健全性Ⅲと診断された橋梁の補修を計画的に進めています。主な損傷はRC床版端部や張出部の浮き・はく離であり、伸縮装置の漏水対策及び断面修復工にて補修しています。

 ――大規模更新・大規模修繕事業のここ数年の実績と今後の予定について詳細に述べてください。また、発注の工夫、施工上の対策、同事業における新技術・新工法の活用などについて、現場ごとに行っている対策を詳細に述べてください
 本山 大規模更新・大規模修繕事業については、老朽化が進む高速道路の、安全・安心で長寿命化な道路の取り組みとして、「高速道路リニューアルプロジェクト」に着手しており、15年という長い年月の中で大規模更新・大規模修繕事業を行ってまいります。
 大規模更新事業は、橋梁部の損傷した鉄筋コンクリート床版を、より耐久性の高い床版へ取り替える工事を行うもので、取り替え後の床版には工場製作のプレストレストコンクリート床版(以下「PCaPC床版」)を採用しています。
 大規模更新の実績として、関門道(門司港IC~門司IC)の山中高架橋及び広丸高架橋(いずれも下り線)を2019年3月に、関門道(下関IC~門司港IC)の本町高架橋(上り線)を2021年4月に、それぞれPcaPC床版への取替えを完了しました。


本町高架橋の床版取替状況

山中橋の床版取替状況

 いずれも、通行止めを行わず両方向(上下線)の通行を確保する対面通行規制の活用により可能なかぎり交通への影響を抑える方法で施工を行っています。今後の予定については、未定です。詳細点検結果、損傷の状況から随時計画しています。
 大規模修繕事業としては、切土のり面の安定性を高めるグラウンドアンカーについて、損傷している旧タイプアンカーの代替として、防触性能の高い新タイプアンカーを設置することで長期安定性を向上させる工事を、九州道(新門司IC~小倉東IC)で現在2か所の施工を行っています。今後も、定期点検や詳細調査の結果に基づき、大規模更新・大規模修繕事業を順次進めてまいります。

 また、供用から48年経過した関門橋において、大規模修繕を目的とした関門橋リフレッシュ事業を2011年度から行っており、現在補剛桁の塗り替え、既設支沓の取替、防護柵等の取替が概ね完了している所です。今後は、既に施工を行っている主ケーブル等の塗り替えを行うとともに、アンカレイジの壁の補修、主塔の塗り替え等を進めていく計画としております。


支承取替などは完了している

 ――4車線化を進める八木山バイパスの進捗状況は
 本山 現在、国交省において土工・トンネル・橋梁工事を実施中です。その後、舗装・施設工事を弊社の担当で実施する予定です(篠栗IC~筑穂IC間の令和6年度開通を目指し工事実施中)。

ご広告掲載についてはこちら

お問い合わせ
当サイト・弊社に関するお問い合わせ、
また更新メール登録会員のお申し込みも下記フォームよりお願い致します
お問い合わせフォーム