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WJなどマイクロクラックを出さないはつり方法の徹底、低弾性断面修復材の採用が柱

名古屋高速道路公社 コンクリート床版上面の補修要領(案)を制定

名古屋高速道路公社
メンテナンス事業部長

沖森 克文 氏

公開日:2022.04.19

 名古屋高速道路公社は、コンクリート床版上面の補修要領(案)を制定した。以前は、比較的力の強いチッパーなどで斫りこんだうえで、超速硬コンクリートで断面補修する方法を取ってきたが、マイクロクラックおよび母材コンクリートと断面修復材との静弾性係数の差により、層間剝離を引き起こし、再損傷に至る例が無視できないほど多くなったためだ。WJ工の採用や低弾性な断面修復材の採用など、その内容について沖森克文メンテナンス事業部長に詳細を聞いた。(井手迫瑞樹)

補修を行う際の脆弱部のはつり方に問題
 断面修復材由来の損傷

 ――コンクリート床版上面の補修要領(案)制定の背景は
 沖森 そもそも床版防水は平成14年道示で床版防水が明記されるまで行われていませんでした。H14道示後に建設された一宮線や東海線などはシート防水などを設置していますが、それ以前に作った路線は防水をせずに床版の上に直接アスファルト舗装を施工していました。平成12年以降は、毎年定期的にリフレッシュ工事と称して舗装の打ち換えを行っていました。基本的には表層を切削してオーバーレイするやり方ですので防水層は施工していません。また、その際に小規模な劣化部については樹脂モルタルで補修していました。しかし平成23年度にはその樹脂系モルタル施工個所から再劣化が生じ、大規模な補修が必要となりました。その後のリフレッシュ工事では、劣化した舗装を全てめくって、床版の脆弱部をはつり、接着剤を塗布して、繊維補強モルタルで補修していきました。このときには床版防水を併せて施工しています。しかし、最近ではそうして補修した部分についてもコールドジョイントのように浮きが生じて剥離し、既設床版を叩いて再損傷はおろか損傷範囲を拡大するような事象が生じてきたため、その対策の必要に迫られたのが要領(案)制定の背景といえます。

リフレッシュ工事の現在までの施工状況(名古屋高速道路公社提供、以下注釈なきは同)

 ――要領(案)制定にあたり着目した事項は
 沖森 1つは補修を行う際の脆弱部のはつり方に問題があったのではないかという点です。その中でもマイクロクラックやフェザーエッヂの発生に着目し、それを起こさないため、新たなはつり工法としてWJを採用することと、マイクロクラックを極力生じさせないような電動チッパー(4.5kg以下)の使用を標準としました。マイクロクラック対策としては、WJによるはつりが最も望ましいのですが、限られた時間内で補修を実施するためにはWJだけというのは難しいため今回選定した工具と使い分けていきます。


WJの採用

 加えて、今まではカッターを入れて脆弱部と健全部を縁切りしていましたが、どうしてもそのカッターの範囲内には健全部が含まれてしまい、それらもチッピングして除去しなくてはいけなくなります。そのチッピングで新たなマイクロクラックやフェザーエッヂの発生を招く懸念があるため、悪いと思われるところに直接チッピングをかけていき、補修が必要な個所だけ補修をかけていくようにしました。健全なところは極力削らないようにした、ということです。フェザーエッヂを作らないようにチッピングは鉛直に行うよう徹底します(下図)

 

 2つ目は断面修復材由来の損傷です。既設床版と断面修復材間の層間剝離を起こさないように、その規定については、既存RC床版の強度およびヤング係数に適した接着剤および断面修復材を選びました。以前の床版補修は静弾性係数が20~24N/mm2の既設床版に対して40~50N/mm2の繊維補強モルタルを断面修復材として使っていたことにより、界面剥離を引き起こしていたと考えられたからです。NEXCOの要領に準じる形で断面修復規定を示しています(既設床版と静弾数係数が等しい(25N/㎟程度)の低弾性材料の使用を規定し、接着剤もまた要求性能を規定しています。)現場では具体的にはPCMを採用しています。

断面修復工規定


断面修復材の施工

WJは施工能力とはつりすぎ抑制、水処理に長けたシステムを要求
 クラック抑制シートを床版防水と基層の間に試験施工

 ――WJはどのような性能を求めますか
 沖森 限られた施工時間内で施工する能力(おおよそ5m2/時間)とNEXCOの要領と同じような平坦性試験とはつり深さの管理ができるものを要求しています。WJはツーノズル以上あるタイプで衝撃を抑えることができ、さらに施工箇所に水たまりや、対向車線へ水が広がらないよう処理ができる性能を求めています。シングルノズルでも深さ管理できるものもあるとは思いますが、フェールセーフを考えてツーノズル以上のものに縛っていきたいと考えています。水処理については、昨年秋の集中工事で使用したサーフェステクノロジーさんの機械のように施工箇所を箱で覆い、中で負圧をかけて吸っていくタイプは、水が下に落ちず、プール化もせず、供用車線に広がることもなく効果的でした。



昨秋の大高線リフレッシュ工事でのWJ実施例

フェールセーフを考えてツーノズル以上のものに縛っていきたいと考えている

試験施工中のツーノズルタイプのWJ

 ――チッピングを使う個所ではどうしてもマイクロクラックやフェザーエッヂの発生が皆無とは言えないと思いますが、その対策は
 沖森 人力ではつる箇所は再劣化の発生可能性が高いため、とりわけ輪荷重直下の補修箇所はリフレクションクラックの発生による舗装面へのひび割れ抑制を行うべく、クラック抑制シートを床版防水と基層の間に試験施工として実施しており、今後経過観察をしていく予定です。

 ――防水工の基準改定はなかったのですか
 沖森 現在の複合床版防水は有効に機能していると考えています。複合床版防水工法を施工した個所で再劣化している部分もありますが、それは防水工が劣化したというより、母床版そのものが悪いか、断面修復材の剥離による再劣化であると考えています。


複合床版防水例

 一方、幅50cmの路肩コンクリートは、下部に床版防水層を施工することが出来ず、劣化の温床となっています。路肩コンクリートを撤去し、床版防水を全面に施すことも改めて要領で明記しました。今後、基層までを打替え床版防水を施工する箇所は全て撤去していきます。実際の現場では、静的破砕剤を用いて脆弱化させたのちにバックホウなどを用いて撤去する工法などを用いており、撤去に要する時間をかなり短くすることが可能になっています。


路肩コンクリート撤去フロー/事前準備工図

事前準備工の状況

(左)破砕剤注入工/(中、右)人力またはバールなどにより撤去

(左2枚)バックホウなどにより剥ぎ取り/(右2枚)路肩コンクリート切削工

 ――そうした手法を施工フローとしてかなり明確にまとめましたね
 沖森 当公社の職員は定期的に組織内の人が入れ替わっていきます。そうした状況でも技術的なばらつきを防ぐために丁寧な施工フローを作ることによって、限られた施工時間の中でばらつきの無い施工ができるようにしたいと考えて作成しました。
 フローでは、まず打音検査を行い、目安として異常範囲が1㎡以上か未満かでふるい分けます。1㎡以上の大規模なものにはWJを施工してはつり、断面修復工、床版防水工を施します。1㎡未満のものはさらに変状の有無で判断します。変状がある場合は、床版劣化部を電動チッパーなどではつった上で、断面修復工、防水工を施します。変状がない場合は、損傷が軽微であると判断し、そのまま防水工を施します。


コンクリート床版上面の劣化部補修フロー

 ――WJは1㎡以上でしか使わないのですね
 沖森 マイクロクラックを防止できるので、本来は小規模な個所にも使うべきですが、時間的な制約の中で一定の品質を確保する上では、要領(案)のとおり施工することが妥当であると判断しました。小規模なものでも集中していれば大規模と判断して使うなど、現場に応じた運用はしております。
 また、電動チッパーを使うと、どうしてもマイクロクラックの発生は避けられません。ですので、浮きがあっても、ひび割れや砂利化が進んでいない個所であればチッパーなどで強引にはつることは止めています。

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