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ヤマダインフラテクノス 山田博文社長インタビュー

「令和3年度リデュース・リユース・リサイクル推進功労者等表彰」において内閣総理大臣賞を受賞

ヤマダインフラテクノス株式会社
代表取締役社長

山田 博文

公開日:2021.11.19

 ヤマダインフラテクノスは、リデュース・リユース・リサイクル推進協議会(3R推進協議会)が実施する「令和3年度リデュース・リユース・リサイクル推進功労者等表彰」において、その最高位の賞である内閣総理大臣賞を受賞した。受賞テーマは、「研削材を何度も再使用し、産業廃棄物の発生を最小限に抑制する環境配慮型ブラスト工法」で、同社が「ゴミを減らして世界を変える」を合言葉に開発した「循環式エコクリーンブラスト工法」が評価されたもの。同工法では、粉砕せず再利用が可能な金属系研削材を採用することで、従来ブラスト工法の非金属系研削材の粉砕により大量に発生していた産業廃棄物を最小限に抑えることが可能。その抑制量は、ブラスト処理面積1,000㎡あたり約40tとなり、二酸化炭素排出の大幅抑制(1/40~1/50に削減)にも貢献している。同社は、全国の橋梁塗装会社などと日本鋼構造物循環式ブラスト技術協会を組織し、普及に努めている。一方で循環式エコクリーンブラスト研究会でさらなる技術改良も進めている。今回の受賞を機にどのように、さらに同工法を展開しようとしているのか山田博文社長に聞いた。(井手迫瑞樹)

喉から手が出るほど欲しい賞
 「ごみを減らして世界を変える」テーマが認められた

 ――「令和3年度リデュース・リユース・リサイクル推進功労者等表彰」において内閣総理大臣賞を受賞されましたが、その感想から
 山田社長 循環式エコクリーンブラスト工法をご支援していただいた関係者にまずはお礼と感謝の思いでいっぱいです。「ごみを減らして世界を変える」というスローガンのもと、事業を進めてきました。循環式エコクリーンブラスト工法の開発は、およそ20年前に始まりました。その際の名称は、まだリサイクルブラストというものでした。その後の研究を経て、エコクリーンブラストと命名したわけですが、そのころから廃棄物の削減や低炭素社会の構築に向けて、塗装業界の素地調整の分野においても、これを何とか達成するという思いで技術の開発を続けてきました。20年という歳月がかかったわけですが、工法の全国展開が概ねでき上ってきました。循環式エコクリーンブラスト研究会の会員は、120社に到達しましたし、全国の自治体や国土交通省、高速道路会社の皆様からご用命いただき、実績も蓄積してきました。
「リデュース・リユース・リサイクル推進功労者等表彰」は、喉から手が出るほど欲しい賞でした。
 ――それはなぜですか
 山田 同工法では国土交通大臣賞、環境大臣賞を受賞してきました。しかしやはりその頂たる内閣総理大臣賞は最高の栄誉です。これまでも国土開発技術賞など技術的な賞を受賞してきましたが、「ごみを減らして世界を変える」という当社のテーマに基づき、廃棄物の削減を目指して活動してきた中で、リデュース・リユース・リサイクルという循環型社会への構築での受賞は大きな励みになります。

内閣総理大臣賞を受賞した

大村秀章愛知県知事への表敬訪問

日本の塗膜除去および素地調整における標準工法にしたい
 「リデュース」が最も大切、グリーン購入法の特定調査品目に指定目指す

 ――工法をさらに伸ばしていくには
 山田 ゴールは、この工法を日本の塗膜除去および素地調整における標準工法にすることです。現在はブラストといっても、鋼道路橋防食便覧や橋梁架設工事の積算仕様書においても、非金属系の研削材を使用したブラストが標準です。これを当社のような鋼製研削材を用いて、繰り返し使うことができ、廃棄物と研削材を分別することで、廃棄物の量を劇的に減らせる工法として標準化したいのです。それが2050年のカーボンニュートラル、CO2排出量ゼロに近づけられる一助となる工法だと考えます。我々施工会社もこの工法の提案はしてまいりますが、同時に発注者様のご協力が必要不可欠です、常に廃棄物の抑制という観点を鑑みた設計を組んでいただきたいと考えています。それが実現すれば、CO2の削減は劇的に進みます。

施工状況写真①

 リサイクル契約はどんな工事の発注においても出てきますが、しかし廃棄物が出てしまったので仕方なくリサイクルしようという考え方は決してよくありません。最初のスタートとして、それを出さなければリサイクルする必要も全くないわけです。例えば建設廃棄物処理指針では、建設廃棄物や建設副産物について様々な施策が掲げられているわけですが、冒頭に書かれているのは『廃棄物の抑制』です。実は「リサイクル」ではなく、「リデュース」が最も大切だと考えます。今後、計画される工事においても、廃棄物の発生抑制を考慮した工法を設計者が発注者に提案していただき、発注者も「リデュース」という時代背景に基づいた発注を行ってほしいと感じています。
 内閣総理大臣賞受賞を機とした次のステップとして、技術審査証明を取得するための審査を進めています。取得は年度内の予定ですが、第三者機関からの証明をいただいた後は、さらに多くの会員や工法を施工していただく業者さんを獲得することによって、循環式ブラストという工法が全国にいきわたるようにしていきたいと考えています。また、グリーン購入法の特定調査品目に指定していただきたいと考えています。

工法開始以来の実績は150万㎡を超える
 循環式ブラスト工法を技術審査証明中

 ――現在の施工面積は
 山田 工法開始以来150万㎡を超える面積で施工をしています。ここ2年は年間35万㎡の施工面積で推移しています。これは国内の年間全塗替え塗装面積のまだまだ3割ほどでしかありません。残りの部分もぜひ循環式ブラスト工法で施工していきたいと考えています。そうすれば廃棄物の削減はさらに大きく進められると確信しています。そのためにも、環境省や経済産業省、国土交通省にグリーン購入法における特定調達品目にしていただけるよう、働きかけていきます。
 また、我々は、循環式ブラスト工法に関して、あえて特許を取得していません。門戸を大きく広げることが工法の普及、ひいては社会への貢献につながると考えたからです。これも受賞の際の大きな判断要素になったであろうと考えています。


施工状況写真②

 ――「オープンイノベーション」といえますね
 山田 そうですね。
 しかしながら課題もあります。正しい循環式ブラスト工法を施工していただかないと、悪貨が良貨を駆逐するということになりかねません。極論になりますが、バケツリレーでブラスト材を2回繰り返し使えば「循環」、非金属系研削材を2回使えば「循環」であると強弁されるのは非常に悲しいものがあります。仮に繰り返し使える鋼製の研削材を使っていたとしても、除去した塗膜と研削材を選り分ける機械がなく、ただ罐につめた研削材を再び使ってしまうということになると、有害物質の残量が多くなる、作業員の安全性が落ちる、素地調整の品質が下がるなどのデメリットが生じてしまいます。そのようなことがないように、当社を含めた循環式ブラスト工法を施工する各社は、一般社団法人日本鋼構造物循環式ブラスト技術協会を組織しており、循環式ブラスト工法を技術審査証明にかけさせていただいています。

ブラスト施工後の回収作業/足場養生状況/集塵機

一般社団法人日本鋼構造物循環式ブラスト技術協会による適正な審査を目指す
 鉛の再資源化も構築

 ――それはどのような内容ですか
 山田 循環式ブラスト工法の定義、内容を明確にしないと、鉛やPCBなど有害な物質を含む塗膜を取り扱っている施工業者として信頼性を失うと考えています。特に有害物を含む廃棄物の抑制ということに関しては、我々は大きな成果を出していると自負しています。それを護るためにも「物差し」を作ることが重要なのです。そのための技術審査証明の受審です。これからも更なる廃棄物の抑制に魂を注ぎ続けます。グリーン調達の申請も名称は「循環式ブラスト工法」とし、一般社団法人で行っています。
 その上で、一般社団法人日本鋼構造物循環式ブラスト技術協会が「循環式ブラスト工法」とはいかなるものか、適正な審査ができるように強い組織にしていきたいと考えています。
 ――工法は結局、それを使う会社、人間の質が結果の良し悪しを左右することは言うまでもありません。加盟した会社や施工する人間の技量、品質をどのように確保してきますか
 山田 施工管理者と施工技術者(直接施工する人の意)の教育という面で、管理者は技術認定、施工技術者は技量認定をそれぞれ行っています。現在、これらの認定講習会は協会本部(ヤマダインフラテクノス本社)で行っていますが、今後は各地方ブロックでも年に1~2回から最終的に月1~2回開催し、技術を理解する施工者を大きく増やしていこうと考えています。

現場見学会なども開催している

 また、アフターケアも行います。協会として現場パトロールを頻繁に行わせていただきますし、施工状況や安全面、環境面で守られているかを把握していきたいと考えています。
 ――もうマニュアル類はできているのですか
 山田 できています。循環式ブラストの施工マニュアルはもちろん、一部の現場で必要なブラスト前の塗膜剥離剤使用も考え、塗膜剥離剤使用の取り扱い、鉛、PCBなど有害物の取り扱い、安全装備についての留意点などもマニュアル化して全国の会員各社に配布しています。
 ――今後の技術的な発展の方向性は
 山田 使用済みの研削材や研削材から出る鉛含有の塗膜について、愛知県からの補助金もいただいており、鉛を含む既設塗膜を高度に選別する装置を開発し、それを三池製錬様のご協力を仰ぎつつ、再資源化(リサイクル)を構築してまいります。

廃棄研削材再生システム全体フロー

研削材リサイクルルームおよび装置類

 ――ありがとうございました

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