道路構造物ジャーナルNET

大震災や大水害を考慮した災害に強い道路を構築

福島県 県の骨格を担う6本の連携軸とふくしまの復興・創生のための道路ネットワークなどの整備を進める

福島県
土木部
次長(道路担当)

曳地 利光 氏

公開日:2021.07.05

 福島県は、2011年に東日本大震災で主に浜通りで甚大な損傷を受け、さらには原子力災害により大きなダメージを受けた。さらに同年夏には主に会津地方を襲った新潟・福島豪雨によって甚大な被害を被った。最近では主に阿武隈川流域を襲った一昨年夏の台風の被害も記憶に新しい。こうした災害から県土を守り、さらに県の大切な産業を育成・発展するため、同県では縦軸3本、横軸3本、合計6本の連携軸で繋がれた多極分散型の県土構造を支える道路を建設している。その内容と構造物の特徴、維持管理上の課題について同県土木部の曳地利光道路担当次長に詳細を聞いた。(井手迫瑞樹)

福島県の地勢的特徴を踏まえて
 県土の活力を高め、安全・安心を支える道路整備を着実に進める

 ――県内の地勢的特徴と道路網の現状からお願いします
 曳地次長 本県は、全国3位の面積(約13,783.9km2・・・首都圏1都3県がまるごと入る)を誇り、奥羽山脈や阿武隈高地などの急峻な地形や急勾配の河川など、社会資本整備を進める上で厳しい条件が存在します。
 道路の現状を見ましても、本県の道路改良率(幅員5.5m以上、市町村道、国道も含めた)は22.7%(全国第36位)で全国平均27.6%と比べて4.9ポイントの差があります。県管理の県道、国道では道路改良率は67.8%となっています。いずれも2019年4月1日現在です。
 県内は、奥羽山脈と阿武隈高地により浜通り地方・中通り地方・会津地方の3つに区分されます。浜通り地方は相双・いわき地域、中通り地方は県北・県中・県南地域、会津地方は会津・南会津地域、合計7つの特色ある生活圏が形成され、それらが縦軸3本、横軸3本、合計6本の連携軸で繋がれた多極分散型の県土構造となっております。
 県土の骨格を成す6本の連携軸では、東北中央自動車道(北部軸)の整備を始め、磐越自動車道(横断道軸)や常磐自動車道(浜通り軸)の4車線化が進む中で、会津軸についても着実に整備を図るなど、引き続き、生活圏相互や県外との連携、交流を支え県土の活力を高める道づくりを進めていく必要があります。
 急峻な地形が入り組んでいる山間地や峠部などにおいては、自動車交通不能区間や異常気象時通行規制区間が残っています。(自動車交通不能区間15路線16区間、冬期交通不能区間40路線56箇所、異常気象時通行規制区間86路線132箇所)特に、中山間地域においては移動手段をほとんど車に依存しており、地域の実情に応じた生活道路の整備や、冬期交通不能区間の解消・期間短縮等が求められています。

 ――震災や新潟・福島豪雨後、10年が経過しました。道路の面で、沿岸部を中心に想像を絶する規模の被災となりましたが、道路事業の面で、これまで進捗したこと、これから進めなくてはいけないこと、構造物の安全性の面で気を付けなくてはならないことを、震災を振り返ってみて述べていただけましたら幸いです。加えて国やNEXCO東日本に対する要望も述べてください。また、下記の新設にもラップしますが、今後の震災復旧に益する道路事業として進めて行くものを、お答えください
 曳地 東日本大震災については、主に沿岸部、いわゆる浜通りで津波による甚大な被害が発生しました。また、それに起因して福島第一原発も被災し、今なお避難の継続を余儀無くされている県民の方々がいらっしゃいます。
 津波被災地においては、総合的な防災力の高い復興まちづくりを進めるため、海岸堤防の嵩上げや防災緑地、土地利用の再編(防災集団移転、区画整理等)、道路整備を一体的に組み合わせた多重防御を進めてまいりました。
 津波被災地における道路事業の進捗については、帰還困難区域を除き令和2年度末までに概ね完了(完了303/全体304)しました。
 さらに、道路事業において、復興支援道路として東北中央自動車道(相馬~福島)が全線供用、常磐自動車道の4車線化が推進してきたことに対し、国及びNEXCO東日本のご支援とご尽力に感謝申し上げます。
 県では、原発事故により避難指示が出された地域周辺において、避難解除区域等の復旧・復興、住民の帰還の促進を図るとともに、地域の持続可能な発展を支えるために、避難解除区域等と周辺の主要都市等を結ぶ幹線道路8路線を「ふくしま復興再生道路」として、一日も早い供用に向けて重点的に整備を進めております。特に国道399号十文字工区及び吉間田滝根線広瀬工区では、一部、橋梁及びトンネル区間について、国の権限代行による整備や、いわき上三坂小野線小名浜道路では、常磐自動車道に接続する区間について、NEXCO東日本の委託区間として整備していただいており改めて感謝申し上げます。
 近年、激甚・頻発化する自然災害や、加速化するインフラ老朽化に対応するため、安全・安心を支え、信頼性の高い道路ネットワークを構築する必要があります。
 このため、6本の連携軸はもとより、それらを補完する地域連携道路等の幹線道路の強化によるリダンダンシーの確保、落石対策や橋梁の耐震補強など防災・減災対策による災害に強い道づくり、さらには、予防保全の考え方に基づいた計画的・戦略的な維持管理・修繕を進めていくことが重要です。
 また、高速道路については、安全性や生産性の向上のみならず、災害時のリダンダンシー確保の観点からも4車線化を進めていく必要があります。
 そのうえで、常磐自動車道及び磐越自動車道の4車線化については、今後とも国やNEXCO東日本のご支援をいただきたいと存じます。


2011年の福島・新潟豪雨では多くの道路橋・鉄道橋が被災した(井手迫瑞樹撮影)

 新潟・福島豪雨との関連では、国道252号本名バイパス事業を進めています。現道の一部区間はダムの直上を走っていますが、ダムの上流にバイパスする道路を建設しているものです。構造物では、本名トンネル(1,429m)、新霧来沢橋(161m)、湯倉橋(219m)がありますが、施工は完了しています。

令和元年東日本台風 道路277箇所、橋梁1か所が被災
 県道会津若松三島線の銀山橋で洗掘により橋脚が沈下

 ――令和元年東日本台風等により被災した県管理道路の復旧・復興は
 曳地 被災箇所は 277箇所、橋梁は1橋に上り、これらについて、令和3年4月末現在、道路262箇所、橋梁1橋で復旧工事に着手しております。引き続き、一日も早い復旧に向け、工事を推進してまいります。

令和元年東日本台風等により被災した県管理道路の復旧・復興状況例(福島県提供、以下注釈なきは同)

 ――損傷した橋梁は
 曳地 
会津若松市と会津美里町の市町境にある県道会津若松三島線の銀山橋です。PC3径間連続T桁×4連の橋で、2つある橋脚のうち1つの橋脚の基礎が洗堀されて約50㎝沈下しました。復旧工法としては上部工をそのまま再利用し、橋脚を新設するとともに、洗掘を防止するため橋脚周りに、根固めブロックを設置し補強しています。上部工のうち、桁の継ぎ目と高欄は損傷していたので、各々補修しています。4月27日には片側交互通行で供用を開始しています。現時点では架替えの予定はありません。

銀山橋の被災状況(福島県公開資料より抜粋)/復旧した銀山橋

 ――被災した道路箇所は、どのような個所のどのような斜面やのり面がどのように被災したのでしょうか、

 曳地 被災した道路の特徴として、河川増水に伴う道路擁壁等の損傷が多かったです。

「ふくしま復興再生道路」8路線29工区で整備 14工区が完了
 小名浜道路では6橋 吉間田滝根線広瀬工区では407mの鋼橋などを施工中

 ――進捗中の各事業路線の目的と概要、現況をお答えください
 曳地 福島県では、津波被災地の復興まちづくりと一体となった道路整備や、地域を連携する道路ネットワークの強化等を行っています。
特に重点的に進めている「ふくしま復興再生道路」は、8路線29工区で整備を進めており、これまでに県道原町川俣線八木沢工区(平成30年3月開通)や国道399号戸渡工区(令和元年7月開通)、県道小野富岡線小白井工区(令和3年3月開通)など14工区が完了したところです。現在、残り15工区について整備を進めており、このうち大規模な3つの工区について紹介します。
 ――まず、国道399号十文字工区からお願いします
 曳地 国道399号は、福島県いわき市から山形県南陽市に至る一般国道で、福島県の阿武隈高原を縦断する路線であり、十文字工区は、いわき市と川内村を結ぶ区間ですが、幅員狭小で急勾配・急カーブが連続する隘路で、円滑な交通の支障となっていることから、バイパスの整備を行っているものです。構造物延長は3131.1m(全体延長比50.5%)となっています。
 工区の全体延長は6.2㎞で、そのうち3.3㎞が直轄権限代行として国土交通省による整備が行われています。
 区間の主な構造物は、橋梁が2橋、トンネルが1個所です。
 そのうち内倉湿原1号橋(PC4径間連結コンポ桁橋、151.1m)はすでに施工を完了しており、現在は内倉湿原2号橋(PC2径間連続Tラーメン桁橋、105.0m)と十文字トンネル(NATM工法、2,875m、国施工区間)を施工中です。十文字トンネルについては貫通済みで現在はトンネル内設備を施工中です。

内倉湿原1号橋

内倉湿原2号橋

 ――吉間田滝根線広瀬工区は
 曳地 県道吉間田滝根線広瀬工区は、あぶくま高原道路小野インターから県道小野富岡線までの区間ですが、幅員狭小で急勾配・急カーブが連続する隘路で、円滑な交通の支障となっていることから、バイパスの整備を行っています。全体延長は9.2㎞でそのうち国土交通省が整備を進める直轄権限代行区間が6.6㎞を占めています。構造物延長は2,437.9m(全体延長比26.5%)です。
 構造物はランプ橋を除き、6橋、トンネル2個所があり、いずれも施工中です。1号橋は橋長123.0mの(PC3径間連続箱桁ラーメン橋)です。4-1号橋は橋長69.0mの(鋼単純非合成箱桁橋)です。4-2号橋は橋長74.0m(施工中)の(PC2径間連結ポステンバルブT桁橋)です。以上3橋は国施工分となっています。

吉間田滝根線広瀬工区5号橋/同6号橋
 5号橋は橋長26.9mの(PC単純ポステンコンポ橋)です。6号橋は橋長117mの(鋼3径間連続非合成I桁橋)です。7号橋は管内最長の橋梁で、橋長は407mに達します。(鋼9径間連続非合成I桁橋)です。

同7号橋

 広瀬1号トンネル(NATM工法、1,403m、国施工区間)、広瀬2号トンネル(NATM工法、218m)は既に貫通しており、現在は覆工工事を進めています。
 ――いわき上三坂小野線小名浜道路は
 曳地 同道路は、福島県の浜通りの南端にあるいわき市内の県道で、いわき市泉町からいわき市山田町に至る自動車専用道路です。
 重要港湾小名浜港と常磐自動車道を直結する道路となり、広域物流ネットワークの強化を図るとともに、小名浜港周辺へのアクセス道路として産業を支える役割も担います。また、防災面からも、東日本大震災時に救急物資の受入港として大きな役割を果たした小名浜港と被害直後から救援活動や緊急輸送を支えた常磐自動車道を直結させることで、大規模災害時の円滑な緊急輸送を確保することが期待されます。全体延長は8.3㎞で、そのうち2.5kmをNEXCO東日本に施工委託して整備を進めています。構造物延長は1,309.3mで全体延長比15.8%となっています。
構造物は、橋梁が8橋(ランプ橋除く)あり、2、3号橋のみ設計中であとの6橋はいずれも施工中です。
 1号橋は橋長124.0mの(鋼3径間連続非合成鈑桁橋)です。2号橋は59.2mで橋梁形式は(鋼単純鋼床版箱桁橋)です。3号橋は75.4mで橋梁形式は(PC2径間連結ポステンコンポ桁橋)。4号橋は橋長466.0mの(鋼7径間連続箱桁橋)です。5号橋は橋長213.0mの(PC3径間連続ラーメン箱桁橋)です。6号橋は橋長294.0mの(鋼6径間連続鈑桁橋)です。5、6号橋についてはNEXCO東日本に委託しています。8号橋は橋長45.0mの(鋼単純非合成鈑桁橋)です。9号橋は橋長32.7mの(PC単純ポステンバルブT桁橋)です。

小名浜道路1号橋

同4号橋

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