道路構造物ジャーナルNET

都市計画道路整備率は93%

札幌市 骨格となる環状・放射道路の整備進める

札幌市 建設局
維持担当部長

渡辺 和俊

公開日:2017.05.16

 札幌市は、北海道の3分の1が集中している人口約195万人の政令指定都市である。行政や産業の中心地であるだけでなく、観光の中心であり、国際的な知名度も高い。そうした状況下で、さらに同市が発展するための道路事業上の施策や、他の自治体と同様に進む構造物の老朽化対策をどのように行っていくか、など諸課題について同市建設局の渡辺和俊維持担当部長に聞いた。(井手迫瑞樹)

道人口の3分の1が集中
 盤渓北ノ沢トンネルの供用を開始

 ――札幌市は195万人と北海道の人口の3分の1が集中しているため、朝夕を中心に都心部と市街地で渋滞が発生し、交通上の障害となっています。それをふまえて、北海道の中心地である札幌市をさらに発展させていくために、必要な道路行政上の課題をまず教えてください
 渡辺部長 主な課題としては、現在、平均走行速度が時速13km程度となっている都心部での円滑な道路確保や、空港・港湾・高速道路へのアクセス性が低いことによる国際競争力低下の懸念があります。これらに対応すべく、骨格道路となる環状道路と放射道路の未整備区間の整備を進め、都心部への不必要な自動車流入を極力抑制するようにしていきます。また、周辺都市や市内の各拠点に容易に到達できる有機的なネットワークの構築を検討していきます。
 都市計画道路874kmのうち、平成27年度末時点で813km、約93%の整備率となっています。
 ――主な事業の現況は
 渡辺 本年2月3日に、盤渓北ノ沢トンネルの供用を開始しました。主要道道西野真駒内清田線のトンネル部分を含めた2.8kmの整備です。トンネル区間が1,612m、橋梁2カ所で、構造物比率では約59%となります。工事は22年度に着工し、26年10月にトンネルが貫通しました。
 札幌市中央区と南区との連絡道路になっていて、札幌市全体では南側の環状道路というイメージです。整備前は急勾配・急カーブが連続しており、特に冬期間は路面凍結するなど非常に道路環境が悪くなることから、一年を通じて安全な交通を確保するための事業として行いました。


 盤渓北ノ沢トンネル 平面図

 予定ルート(空撮)

 北ノ沢側坑口

(仮称)北24条大橋は上部工架設へ 

 豊平川により分断された東区と白石区をつなぐための仮称北24条大橋の施工も開始しています。橋長は318.7m、4径間連続鋼細幅箱桁橋となります。豊平川に架かる札幌新道の豊水大橋と環状通の環状北大橋の2つの橋に慢性的な渋滞が発生しており、その対策のため、15、16年度に技術検討委員会を開催し、20年度に都市計画として決定しました。23年度に事業認可、その後用地確定と実施設計を行い、25年度から下部工の施工に着手しました。現在、すべての橋台、橋脚が完成しています。今後、上部工に取り掛かり、取付道路を含めて34年度の供用開始を目指しています。


 仮称北24条大橋 平面図

 完成予想図

 A1橋台施工状況

 P2/P3橋脚

苗穂駅自由通路に溶射を採用
 鋼桁だけでなく鋼製橋脚にも溶射を施工

 また、苗穂駅自由通路(橋長130m、4径間連続鋼床版箱桁および単純鋼床版鈑桁)も施工中です。札幌駅の隣駅であるJR苗穂駅の移転・橋上化にともない、苗穂駅連絡通など、地域と地域を結ぶネットワーク道路の整備となります。JR軌道上を横断する自由通路は、鉄道の建築限界の確保が必要で足場の設置が非常に難しいことに加えて、き電を停止した短い時間でしか施工ができません。維持管理の点でも厳しい制約が発生します。そのため、可能な限りメンテナンスフリーに近い仕様にするため、桁外面塗装には亜鉛・アルミニウム合金溶射を採用しています。耐用期待年数は約100年間です。
 ――橋脚が鋼製というケースがたまにありますが、苗穂駅自由通路の橋脚はRCでしょうか
 渡辺 駅のホーム部分はメタルですが、ほかはRCです。ホーム部分の鋼製橋脚部にも溶射を使用しています。


 苗穂駅自由通路 完成予想図

 金属溶射の様子

 ――仮称北24条大橋ですが、橋脚と橋台の施工は終わったという話でしたが、札幌市を含め北海道の構造物は、凍結融解や凍害、凍結防止剤の散布に留意して施工しなければならないと思いますが、仮称北24条大橋の橋脚と橋台で技術的に行ったことはありますか
 渡辺 特異の技術の採用はしていません。凍結防止剤について、札幌市では標準的な作業として主要幹線を除いて全面ではなく部分的に撒いていますので、使用量は少ないと思います。
 ――先ほど溶射の話がありましたが、仮称北24条大橋での塗装は
 渡辺 フッ素系塗装となります。
 ――風景がきれいなところなので、塗装色の検討はされていますか
 渡辺 景観に配慮して、豊平川に架かる橋の塗装色は揃えています。札幌市では、景観色を決めてそれぞれに名前をつけています。「氷雨」という薄水色の採用を予定しています。ちなみに、昨年塗装した水穂大橋は、「雪まつり」という同系色の薄水色でした。
 ――仮称北24条大橋のほかに施工中や設計中の橋梁はありますでしょうか。また、架け替え予定の橋梁は
 渡辺 施工・設計中で言えば現在は仮称北24条大橋ぐらいで、大規模なものはありません。架け替えなどの大規模修繕の予定もまだありません。

【関連記事】
北海道庁 宮下 忠昭道路課長インタビュー 
NEXCO北海道支社 加納正志道路事業部長インタビュー
水の供給によるコンクリート構造物表面被覆材の剥がれ防止に向けて
台風10号 北海道水害現場を歩く

ご広告掲載についてはこちら

お問い合わせ
当サイト・弊社に関するお問い合わせ、
また更新メール登録会員のお申し込みも下記フォームよりお願い致します
お問い合わせフォーム