道路構造物ジャーナルNET

ビームやフィンガーの櫛部が損傷した伸縮装置が対象

NEXCO中日本 伊勢湾岸道朝日東高架橋などで大型伸縮装置を取替

公開日:2022.03.25

 中日本高速道路名古屋支社桑名保全・サービスセンターが施工を進めている伊勢湾岸自動車道の伸縮取替工事の夜間施工が2月20日から行われている。記者が取材した24日夜には60tラフテレーンクレーンを使って1車線分8.0tの鋼製フィンガージョイントを設置した。今回施工したのは、2021年の2月から湾岸長島IC~四日市JCT管内で、1集中工事期間に2基ずつ合計8基の伸縮装置を取り替えている工事の一環であり、最後の2基に該当する。今回記者が取材した朝日東高架橋(上り線)のP10の他、湾岸揖斐川橋(上り線)のAP5の伸縮装置も夜間施工により交換した。(井手迫瑞樹)

施工箇所(以降、注釈なきはNEXCO中日本提供)

伊勢湾岸自動車道四日市JCT~豊田東JCT間56.4kmで対象144基のうち70基が取替済み
 大型車混入率は37%に達する

 旧日本道路公団(JH)では、1996年~2004年間に建設された伸縮桁長が長く伸縮量が大きい橋梁の伸縮装置には、ビーム型の鋼製ジョイントが数多く採用されてきた。同時期は、万博(愛・地球博)前の全通に向けて工事を進めていた伊勢湾岸自動車道及び東海環状自動車道の連続径間数の多い高架橋の設計・施工において、大伸縮量に適用可能であったビーム型ジョイントが採用されることもあった。しかし、伊勢湾岸自動車道で採用したビーム型ジョイントにおいて供用後10年程度経過した段階でビームの損傷が多数見られるようになった他、一部の高架橋で用いられた鋼製フィンガージョイントにおいてもフィンガーの櫛部の折損が発生した。その損傷原因としては、疲労亀裂が推定された。とりわけ、伊勢湾岸自動車道では、2014年の日平均断面交通量が約7.3万台/日に対して大型車混入率が約37%に達している。これは大型車の日平均断面交通量が約2.7万台/日ということになる。また供用からの累計大型車交通量(1方向)は、例えば、伊勢湾岸自動車道名古屋南IC~大府IC間では供用年数約17年で約101百万台に達していた。
 そのため、抜本対策として、ジョイントの取替えを行っているもの。伸縮装置交換の対象となるのは、伊勢湾岸自動車道四日市JCT~豊田東JCT間56.4kmで144基あるが、そのうち70基が取替済みである(今回の2期を除く)。

2車線を確保して施工し渋滞を回避 車両の進入・退出には特に留意
 マイクロクラックを抑制するためWJを使用

 朝日東高架橋では、路肩に余裕があるため、その余裕を用いる形で、2車線を確保して施工しており、夜間とはいえ、渋滞を起こさないよう配慮している。とはいえ、夜間でも大型車はかなりの速度で通過しており、恐怖感を感じるほどだ。伸縮装置交換工事を行っている前後は仮設防護柵を設置して、突入などの事故を防いでいる。ただし、伸縮装置交換箇所はギリギリまで攻めなくてはいけないため鋼板1枚で仕切っている状況で、品質確保上やむを得ないとは言え、大変な工事である。

施工図

 伸縮装置の交換は、路肩も含めた3車線断面を半分ずつ施工した。橋軸直角方向14578mm×橋軸方向1916mm(基準温度15℃時)を最初に施工する追い越し車線側は橋軸直角方向7484mm、走行車線側は同7094mmに分割する形で施工する。遊間幅は基準温度時366mmに対して設置時431mmで据付を行ったため、伸縮装置の幅は1135mm、後打ちコンクリート部(鋼桁側461mm、PC桁側385mm)も含む設置幅は1981mmとなっている。

 施工はまずコンクリートカッターで切断した上でブレーカーにてはつり込み、既設伸縮装置を撤去する、その上で床版と伸縮装置の接続部を100mm程度WJで斫り、マイクロクラックを出さずに鉄筋を露出させ、伸縮装置を設置して、伸縮側と床版側の鉄筋をエンクローズド溶接し、最後に超速硬化コンクリートを打設して完成させた。


左からカッター切断、コア削孔、ブレーカーはつり、伸縮装置施工状況
 WJは基本的に機械式を使い、ディテールはハンドガンを用いて施工した。

WJの施工(左)機械式、(右)ハンドガン

 交換する新しい伸縮装置は鋼製フィンガージョイント(川金コアテック製)を用いた。分割施工の片側あたり約8.0tの重さを有するジョイントを60tラフテレーンクレーンで吊り上げて架設するが、その上下は車が走行しているため、旋回などは行わず、アームは前後に動かすのみとした。ジョイントは当初、写真のように長手方向に置かれているが、これを人力による介錯で90°旋回させて伸縮部に落とし込む形で設置した。ジョイントの路面部には摩擦素子コート工法を採用、供用後の事故抑止に心を砕いている。

新しいジョイント(井手迫瑞樹撮影)

撤去した空間/ジョイントを吊り上げる際もひっきりなしに大型車が左右を通る(井手迫瑞樹撮影)

(左2枚:慎重な位置合わせ、右2枚:際ギリギリでの作業)(井手迫瑞樹撮影)

ほぼ設置が完了したジョイント

エンクローズド溶接で鉄筋を接合、あと施工アンカー(セメフォースアンカー)の施工、超速硬コンクリートの打設、摩擦素子コートの施工

半たわみ性舗装(セメントミルク)の施工、半たわみ性舗装(舗設)の施工、追越車線の施工完了状況、走行車線の施工完了状況

 2車線開放下での施工であるため、車両の進入・退出にはとりわけ気を付けるなど、安全な施工を追求していた。

 元請はIHIインフラ建設。一次下請は野田クレーン。二次下請(はつり工)は東海カッター。

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