阪神高速技研の社長に川北司郎氏が就任した。同氏は専務取締役からの昇任で、同社発足当時は企画部長も4年間勤め、同社には思い入れが深い。社長就任の抱負を聞いた。(井手迫瑞樹)
今年度売上は5億円増の51億円を見込む
阪神高速湾岸線の側道橋(兵庫県管理)の設計や施工管理も行う予定
――事業環境と社長就任の抱負について
川北 事業環境は悪くありません。売上高も2020年度の46億円に対し、今年度は51億円を見込んでいます。淀川左岸線や大阪湾岸道路西伸部などの建設事業や大規模更新・修繕事業の進捗もあり、阪神高速グループの積算や施工管理を担う当社としては、今後10年程度の見通しは立っています。ただし、その後を見据えてグループ外の仕事を受注することにもトライしています。ここ数年は、湾岸線(大阪―神戸間)と一体となった、兵庫県西宮土木事務所が所管する側道部の橋梁耐震補強設計を阪神高速道路本社が受注しており、同社から委託される形で設計や施工管理を行う予定です。
こうした事業環境の中で私が社長としてやるべきは、社員に気持ちよく働いてもらう環境を作ることに尽きます。そのため就任に際して、社員には3つの方針を示しました。
自分の気持ちを言葉に表す、人の長所を見つける、悩みを抱え込まない
社員のケアには全量を傾け、人財を護り育てる
――どのような方針ですか
川北 ①自分の気持ちは言葉に表しなさい、②人の長所を見つけるようにしてください、③悩みがあったら抱え込まないようにしてください、というものです。とにかく組織内の風通しを良くすることが私の責務と考え、このような方針を示しました。
また、具体的に社員のケアも充実させています。当社では昨夏、7人の休職者がいました。1人はフィジカル的なものですが、6人はメンタルケアを必要とするものでした。当社は平均残業時間は少なく、どちらかといえばホワイトな企業と言えます。しかし、中には一人で仕事を抱え込みすぎて精神的に行き詰まってしまった人も見受けられました。こうした社員について、外部の力も借りて、リワークのプログラムを組むことで休職者をフィジカルケアが必要な1人にまで減らすことに成功しています。残りの社員についても厚くケアしていく方針です。当社のようなコンサルタント会社は人こそが財産です。それを大切にし、気持ちよく働いてもらうことを今後も示していきたいと考えています。
勤務中の同社風景
――改めて、御社の阪神高速道路グループ内の立ち位置は
川北 当社は阪神高速道路グループにおいて、積算と施工管理、補修設計、交通分析、Hi-TelusやCOSMOSなどの業務支援システムの構築とメンテナンスなどの業務を行っています。グループの中核企業であると自負しており、人員は正社員が発足時の25人が119人、契約社員や派遣社員、出向者も含めると210人までに増えています。入社した若手も各種技術士などの資格をコンスタントに取得しており、量だけでなく質の面でも向上しています。
阪神高速グループの中核企業として様々な業務にあたっている
新設から保全、学び、そして組織づくり、貴重な5つの経験
発足から4年余りは当社の企画部長として勤務
――長年、阪神高速道路に携わってこられましたが、印象に残っている現場を挙げてください
川北 5つほどあり、そのどれもが貴重な経験であり、公団・会社の節目で、得難い経験のできる部署に配属されたことに感謝している次第です
まず1つ目は湾岸線建設現場(S61.4~H1.7)です。正連寺川から中島(府県境)までの湾岸線の建設を担当、鋼管井筒基礎やニールセンローゼ橋(神崎川橋梁、中島橋梁)、多柱式基礎の建設を経験できたことは、その後の技術者としての原点と思います。
2つ目はアメリカ留学(H1.8~H3.7)です。コロラド州立大学大学院に留学(MS)させていただき、風工学を専攻して学びました。妻と二人の子供(2歳、2か月)を連れ、渡米しました。公私にわたり多忙を極めた期間でした。
3つ目は神戸線復旧建設部(H7.1~H8.9)です。神戸管理部調査設計課に係長として在籍時に阪神大震災が起こり、3号神戸線が壊滅的な被害を受けました。同年4月に組織された「3号神戸線復旧建設部」の調査設計課係長として、復旧設計に携わりました。大地震からの復旧という前例のない取り組みで、手探りで設計に取り組んだ貴重な経験でした。当時は忙しくて、大変でしたが。
4つ目は、民営化総合企画室(H17.10前後)時代です。全国的な道路公団民営化の動きの中、阪神公団として民営化に向けた取り組み(国・他道路公団との調整、制度設計、関連事業の掘り起こしなど)に従事しました。民営化後の会社の姿が分からない中、組織が大きく変わるのではとの漠然とした思いをいだいていた職場でした。
最後は阪神高速技研、すなわち当社のの立ち上げ(H21.4前後)に関わったことです。会社発足の数か月前から、新会社の立ち上げ(組織人員の貼り付け、グループ会社としての諸規定の制定など)に従事しました。そして設立から4年3か月間は企画部長として勤務し、会社の運営とはどういうことかを考えさせられた職場でした。
阪神高速グループに合うロボット開発に取組む
余剰時間を技術習得や新分野取組みに振り向ける
――最後に新技術や新分野などへの取り組みについて
川北 新しい技術としてはRPA(ロボティクスプロセスオートメーション)の活用・阪神高速グループに合うロボット開発を考えています。これをうまく使えば事業の効率化や働き方改革、それによって生まれる余剰時間を技術の習得や新分野への取り組みに振り向けることができます。本社のDX戦略室にもこうした提案を行っています。
――ありがとうございました