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上り線施工時の一時的な活荷重の増加が床版の急速な劣化を招く

東日本高速道路 東北道迫川橋(下り線) 予想外の床版取替工事現場ルポ

 東日本高速道路は、2019年5月26日~6月29日の35日間、東北道築館IC~若柳金成IC間の迫川渡河部に位置する迫川橋(下り線)の床版取替工事を行った。同橋は上り線について2018年度に床版を取替えている。下り線は当面の床版取替の予定はなかった。しかし、上り線施工後、再度調査したところ床版の劣化が急速に進んでいることが確認され予定外の床版取替を実施することとなった。床版取替面積は2,509㎡。その現場を取材した。(井手迫瑞樹)


橋梁概要図(東日本高速道路提供、以下注釈無きは同)


橋梁概要と床版の損傷状況

 同橋は1978年12月に供用された橋長215.9mの鋼3径間連続4主版桁×2連の橋梁。幅員は10mで斜角は78°を有している。既設床版厚は230mmである。交通台数は片側で13000台強~14000台弱である。増厚や床版防水は未実施であった。同橋の床版は骨材に栗駒地方の火山性の骨材を使用しており、これが軽くて比較的脆い性質を有する。

 さらに昨年春に施工した上り線の床版取替の際、通常の2倍に相当する交通が集中したことから床版が急速に劣化した可能性がある。今後の大規模更新の計画上留意すべき点かもしれない。また、同橋につながる高架橋はRC中空床版桁である。著しい塩害により損傷が進んだ例としては阪和道の松島高架橋などがある。同橋は新設時の海砂由来による損傷だが、ここは毎年散布する凍結防止剤による塩害である。早晩、こうした高架橋も大規模更新対象になるのではないだろうか。

 さて、下り線は実際にどのように変状したのか。下り線の床版は上り線と同様に舗装上面にポットホールが発生していたため、2010年、2014年に床版上面補修と床版防水(グレードⅠ)を施していた。その際、床版上面には浮きが発生しており、下面はエフロエッセンスを伴うひび割れや剥離が生じていた。凍結防止剤散布の影響により、コンクリート中の塩化物イオン量は高く鉄筋近傍においても最大で7.6㎏/m3であり発生限界値をはるかに超えている状況にあった。

 下り線部の床版は、2017年度の上り線発注時においては劣化の程度が上り線に比べ低いことから、発注に含めていなかった。しかし、上り線の完了後、一部で大きな変状が目視で確認できたため、詳細に調査した結果すべての径間で損傷が急速に進行しており、特にP1-P5の4径間においてはいずれも損傷判定Ⅱが実に最大でⅤにまで上がっていた。そのため緊急に木製コンパネを床版裏面に配置し、パイプ型鋼管でπ型に支持してしのぎ、今回の床版取替まで持たせた。なるほど現場の床版切断面を見ていると下端筋にも水平ひび割れが出ている(写真)。床版がシリアスな状態にあったのは想像に難くない。


床版の損傷状況1

床版の損傷状況2(床版上面の損傷状況)

床版の損傷状況3 下り線床版の対面通行規制前後の床版劣化状況。急速な劣化が生じたことがわかる

パイプサポートを設置してしのいだ

 

パネルの割り付け

 さて、横断勾配は2.0%、縦断勾配は約0.42%から-0.39%の拝み勾配となっている。縦断勾配が緩やかなため、排水桝の設置間隔を短くした。桁の角度はA1側で78°、A2側で79°と少し斜角がついている。そのためパネルの配置は基本的に直角だが、端部のみ台形形状のパネルを配置し、さらにそれと対象になるような形で現場打ち床版を打設している(図)。斜角を有する場合、斜め方向に分割して斜角なりにプレストレスを導入する方法もあるが、床版内に排水桝、スタッド用孔、高さ調整ボルトなどを配置せねばならない。それらとの取り合いを考慮するとPC鋼材を主桁に対して直角に配置したほうが有利と判断した。場所打ち床版は伸縮装置が設置でき、所定の鉄筋定着長が確保できる幅として桁端から1mほどを最小幅として割り付けた。


A1-P3の割り付け平面図

P3-A2の割り付け平面図