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製作・架設・防食など上部工の詳細に迫る

気仙沼湾横断橋 主塔の架設を終えて桁の張り出しへ

 国土交通省東北地方整備局が、三陸沿岸道路気仙沼道路(気仙沼~唐桑間約9km)の気仙沼港を渡る箇所に建設中の気仙沼湾横断橋(仮)、(以後は便宜上(仮)を外す)はこの5月中旬に主塔の架設を終えて、2020年末までの上部工の完了を目指し、桁の張り出し施工に着手している。現在までの主塔架設及び桁架設を中心に防食上の工夫などを加えて、上部工の内容に迫った。(井手迫瑞樹)


 気仙沼湾横断橋は、気仙沼港のシンボルとなる橋たるべく東北地方整備局道路部が造る橋としては初めて斜張橋形式を採用している。橋長はA1~P10の陸上部も含めると橋長は1,344mに及ぶ。海上部の斜張橋は、その半分を超える680mで鋼重は8,800t(主塔、主桁、鋼床版に達する。斜張橋部はP10から斜張橋中央部(約331m)を朝日地区上部工としてJFE・IHI・日ファブJVが、A2から斜張橋中央部(約349m)を小々汐地区上部工としてMMB・宮地・川田JVがそれぞれ製作・架設を行っている。主塔高は両主塔とも高さ100mに達する。桁下クリアランスは32m(H.W.L上面から)で、橋脚高は27.5m、33.4mと橋脚天端部は先の東日本大震災における津波時推移より上になること(鋼製主塔を海水にさらさないこと)、津波時漂流船舶の船首が主塔に衝突しない高さであること、平常時に既往最大船舶の船首が主塔に衝突しない高さである必要を鑑み、TP+15mとしている。さらに海面から主桁までのクリアランスは35m程度ある。東日本大震災時の津波高(H.W.L+10m)に対し余裕を取った設計といえる(図1、2)

図1 断面図(提供:国土交通省近東北地方整備局仙台河川国道事務所、以下注釈無きは同)


図2 主桁一般図

 朝日地区の陸上部にある主塔は3月中旬に大型クレーン1基によるブロック架設を終え、さらには斜ベント部の桁架設も終え張り出し架設に移行している。また、小々汐地区の主塔は5月中旬までに大型FC船を使った大型ブロック架設を完了し、主塔周りの桁を、斜ベントを用いて架設している。朝日地区からその詳細について触れる。


朝日地区上部工

主塔の製作・架設

 朝日地区上部工の主塔架設上の最大の特徴は、それが海上部になく、FC船による一括架設が不可能で陸上クレーンによる架設をしていかなくてはならないという点だ。

 そのため、ブロックを小割にして架設していく必要があるが、そのブロック数は、主塔基部のアンカーフレーム(以降「AF」)を含めると30に達する(図1)。これを台船から650tクローラークレーンで水切りして仮置きし、さらに自走多軸台車に積み替え、750tクローラークレーンで1ブロックずつ架設していった(写真1)

写真1 主塔の架設/写真2 板厚は最厚で44mmを有する

 1ブロック当たりの架設重量は最高で85tに達する。ウェブ・フランジの板厚は最厚で44㎜を有する(写真2)。主塔の鉛直精度は4000分の1(最上部で±25mm以内の誤差)を確保して架設していく必要がある。そのため、まず主塔の基礎となるベースプレートは相対誤差0.3mmにて据え付けを行った。その精度確保のため早朝に計測を行い、日射による部材への影響を排除している。その後の主塔部材もブロック架設ごとに主塔鉛直度および平面度について慎重に計測や調整を行った。

 そうした現場での精度管理を容易にするため工場製作段階でも工夫を凝らしている。

 まず狭隘かつ溶接量が多いケーブル定着部では、溶接時の作業性を確保するため、設計照査段階で構造の見直しを行った。実物大模型や縮尺模型を用いて、実施工の作業手順の検討・確認も実施している(写真3)

写真3(縮尺模型(主塔合流部))/写真4(部材製作完了時の出来形の計測)

 主塔は縦16段のブロックに分割されているが単一のブロックに割り当てられる許容誤差は長さ・鉛直度ともに僅か2mmにも満たない。ブロック製作においては、生じる誤差が僅かでも、蓄積すれば精度は達成できなくなる。それを防ぐべく、単一ブロックの溶接を完了した後(写真4)、夜間にブロックの温度が安定したところを狙ってブロック端面を切削し、製作時の誤差を極小化した(写真5、6、7)。また、先に完成したブロックの誤差を確認して、後から製作するブロックにその誤差を反映して合わせ面を形成することで、ブロック組み合わせ時の精度を改善している。

写真5(端面切削中(遠景))/写真6(端面切削中(機器接写))

写真7( 端面切削後(部材接写))

 同工事の主塔は二股に分岐しているため左右のブロック同士の間隔が崩れると、ブロックの合流部で接続ができなくなる。そうした事態を避けるため、仮組立時には左右のブロックの感覚を保持するための形状保持材を設置し(写真8、9)、全体形状の管理を行った。また、仮止め時はパイロットホールを内側につけており、ずれが生じないように位置調整した。

写真8、9(仮組立時の形状保持材)

 実際の施工については、臨海地域かつ冬季の架設ということもあり、風に留意した。架設作業は10分間平均風速が10m/s以上で中止しなくてはいけないため、実際に架設を延期したこともあり、完了時期も2月末から3月中旬にずらさざるを得なかった。風速を周知するため、デジタル風速計を設置し、さらに作業中止基準を回転灯で知らせる設備も導入している(写真10、11)

写真10、11 デジタル風速計

 今回は、主塔の架設が単材と言うこともあり、23箇所の溶接・塗装作業用足場を設けた(写真12)。足場の高さは最大115mに達するため、いつも以上に資材の落下防止対策には神経を使った。

写真12(主塔足場(全景))

 主塔の施工は2018年10月中旬から始め、今年(2019年)の3月13日に完了した。


主桁の製作・架設

 朝日地区上部工が担当する主桁架設は23ブロック(ブロック長は平均15m程度)、総計2672.785tを架設する(表1)。

 最大はP11主塔部の幅員が拡幅するJ11~J12ブロックの189.175tで最小でも118t強(P10近傍のJ3~J4ブロック)に達する。架設はP10隣接ブロックおよび斜張橋主塔部近傍の45m部分のみ斜ベントを設置した後(写真13)、750tクローラークレーンを用いて施工する、P10~主塔近傍(J13まで)は陸上からの直下吊り架設(写真14)、J14-A2間は2,000t積台船で桁を運び、直下吊り架設(写真)を行う。吊り上げは20tウインチを4台(片側2台)(写真15)使って桁下から吊り上げ、左右のバランスを取りながら交互に架設している。当初設計ではジャッキによる吊り上げとなっていたが、台船による航路の占有(航路閉鎖)時間短縮を図るため、ウインチに変更したもの。




写真13 斜ベント架設完了/写真14 直下吊上げ架設状況


写真15 吊上げ設備

 1ブロックの架設にはおよそ2週間必要なため、同地区上部工の桁架設完了は最初のブロック架設からおよそ10ヵ月~1年後になりそうだ。

写真16、17 2019年7月中旬の桁架設状況

 ブロック同士の剛結は塩害を考慮して、主塔・主桁共に主塔J1(ジョイント1、根元部)部以外は、すべて全断面溶接(写真18)としている。
写真18 溶接状況

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