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今夏には東西水路横断橋も施工

東京都港湾局 臨海道路横断橋を夜間架設

公開日:2018.06.27

 6月2日夜から3日早朝にかけて、臨海道路横断橋(仮称)の鋼桁を架設した。東京都と国土交通省が建設を進めている臨港道路南北線および接続道路事業の一環で、その名の通り東京港臨海道路を跨ぐ橋梁。橋長133m(支間長39.75+51.0+40.35m)、全幅員36.89mの鋼3径間連続鋼床版箱桁橋だが、今回はそのうち臨海道路をまたぐ部分の橋長56.6m×全幅員36.89mの桁を架設した。施工に伴い中防大橋南詰交差点~若洲キャンプ場入口までは夜間全面通行止めとした。

 施工に伴う注意点は、走行時の車線幅と既に建設済みの橋脚上げ越ししなければいけない点だ。中防大橋南詰~東京港ゲートブリッジに至る間の臨海道路の一部は、本線橋やランプ橋の橋脚を建設するヤードを確保するために片側3車線を2車線に絞っている。そのため、左右の桁支点間の幅は12mと狭く中央に偏っている。また路面から鋼桁下端までの高さは6500mmであり、これを交わすためにある程度必要量をリフトアップした状態で架設地まで運ぶ必要があった。


既設橋脚を交わしつつ進む必要がある

 桁の鋼重だけでも約1,300tに達し、テーブルリフトやベント材、発電機などの設備類を加えると一括架設時の重量は1,742tに達する。そのためトラッククレーンベントや送り出し工法も検討した。しかし、前者は「当地は元々ごみを埋め立ててできた人工島で軟弱地盤であるため、クレーン据え付けには相当程度地耐力を上げる必要があることや、供用中の道路に中間ベントを建てることは著しく困難である」(東京都)こと、後者は「送り出し設備を入れるにはバックヤードが不足している」(同)ことから、移動多軸台車による架設工法を採用した。


移動多軸台車の採用

 移動多軸台車(宇徳保有『スーパーキャリア』)は22軸×2列を用いた。22軸は4軸台車を4台、3軸台車を2台で構成している。現場は最大560mmの高低差(移動多軸台車の両端で)があるが、台車は700mmまでの高低差を吸収できる仕様となっている。
 中間にある建設済みの橋脚を交わすため、予め1350mm程度リフトアップした状態でまずヤードから本線内に45mほど横移動し、(ここでの移動速度はMAX毎分1.2m)規制フェンス目いっぱいまで引き出す(離隔は約2m)。


ヤードから本線への移動①

ヤードから本線への移動②

フェンスぎりぎりまで引き出す

移動多軸台車による移動

 その後、本線内を現場まで約155m(移動速度はMAX毎分3m強)運んだ。橋脚付近で4°ほど反時計回りに旋回させ、支承に収まるよう設計位置の±50mmに位置調整した後に900mmほどリフトダウンし、支承高さまで下げ、桁を橋脚に預け終わった後、さらに300mmほどリフトダウンし、移動多軸台車への荷重を開放し、午前0時前には移動多軸台車を退出させることができた。通行止めも想定より3時間も早く午前3時に解除することができた。


慎重に支承位置を合わせてリフトダウンしていく


反省を生かし、予定より早く施工を完了した。

 これほどスムーズに施工できたのは、5月12日にこの一括架設を予定していたが、支障物等の関係から工事を途中で中止して延期し、十分な検討を行い実施したためである。移動多軸台車の上には1列の多軸台車につき4台のテーブルリフトを載せている。中央部は2台のテーブルリフトに通し桁を架ける形で、3主桁に対応し、前後3点(中央と両外)ずつの支点があり、そこでテーブルリフトの数に比例し両外側:中央が1:2の荷重割合で桁を受けている。5月12日の施工では移動多軸台車は左右2つの油圧グループで動いている状況であった。多軸台車の反力管理がしやすい反面、中央の支点の中間で油圧グループが変わるため、偏荷重がかかりやすくなり、安全装置が働いて動かなくなるという事態に見舞われた。また、同日は途中にある橋脚を交わすためにジャッキのストロークを1900mmまで上げていたが、実際は1350mmまでしか上がらなかったにも関わらず、十分な余裕をもって通過できた。さらに、これが最大の中止要因であったのだが、到達側にある車両感知器が障害となり交わすことができず、橋脚に据え付けることができなかった。


移動多軸台車のシステム変更

 そのため、まず①車両感知器を移設し、鋼桁との離隔3758mmを確保するとともに、移設後に実測し鋼桁と干渉しないことを確認した。


車両感知器の仮移設

 さらに②テーブルリフトアップ時の反力調整に時間を要したことから、リフトアップを地組ヤード内で実施し、規制時間内のリフトアップ作業を省略した。加えて移動多軸台車の油圧グループを両外側および中央とテーブルリフトと連動するように変えて、テーブルリフトの反力管理をし易くした。実際に夜間において走行試験およびライナー調整も行い、問題ないことを確認している。また前回の実績を踏まえ、③交わすべき建設済み橋脚の高さを実測した結果、リフトアップ量を前回同様の1350mmとし、施工時においても建設済み橋脚とのクリアランスを高所作業車によって監視員が目視確認した。さらに念を入れて、④受け側のP2、P3橋脚上にジャッキおよびサンドルを用意して、もしテーブルリフトが不具合でリフトダウンできなくても、受け側で降下できるよう予め準備した。


リフトダウンできない事態にも備えた

 施工時の安全については台車と桁間をラッシング固定し、不均等が生じても対応できる設備を施した。ラッシングについては5月施工時は内側に加え外側にも張り出すようにしてかけていたが、今回はリフトアップ高さが低く規制フェンスに干渉するため内側のみのラッシングとした。
 なお防食は、東京港臨海道路を跨ぐ橋梁あることを鑑みて、桁端部および支承に金属溶射を施している。
 今後は7月からP3側側径間とランプ橋の一部の桁架設をトラッククレーン+ベント工法で行っていく。もう一つの主構造物である東西水路横断橋(仮称)は夏ごろに台船による一括架設を行う予定だ。


移動多軸台車退出直後の状況

 上部工はIHIJFE横河三井JV、一次下請は移動多軸台車が宇徳、架設がトキワエンジニアリング、現場溶接が島川工業。

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