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埋設ジョイントと床版防水の「ONE-PIECE」化を実現

福美建設 小規模橋のジョイント~防水~舗装を1日で施工 

公開日:2017.06.07

橋長20m以下、設計遊間幅20mm以下、のPC・RC橋が対象
 「ARCHIST ONEPIECE GEL SYSTEM」工法

 福美建設は、桁長20m以下(寒冷地は16m以下)、設計遊間幅20mm以下のPC・RC橋を対象とした伸縮装置および床版防水の一体化工法「ARCHIST ONEPIECE-GEL SYSTEM工法」を開発した。同工法はアスファルト乳剤およびウレタン樹脂混合物の2液混合型充填剤「ONEPIECE-GEL JOINT」(以降JOINT)を遊間に充填し、かつ同アスファルト乳剤系の塗膜型床版防水工「ONEPIECE-GEL PROOF」(以降PROOF)およびアスファルト舗装と一体化するもの。伸縮部を埋設化すると同時に床版防水を同時施工でき、弱点(伸縮部からの漏水)を克服し、工程や工期も低減・短縮できる工法だ。2017年1月の工法発表から既に岐阜市内で3橋を実施済みで、先日は岐阜市が所管する同市大洞の「19無名橋」で4橋目を施工した。同社では今月から同社の開発した小規模橋梁に特化した保全システム「ARCHIST」にラインナップし、積極的に適用を働きかけていく考えだ。


ARCHIST ONEPIECE-GEL SYSTEM工法の埋設ジョイント部断面図

同工法の床版防水構造断面図

重ね継手部も確実に一体化
 3日の工期を1日に短縮

 施工は、まず切削機やはつり機械で舗装や既存床版上面のコンクリートの脆弱部および伸縮装置部分の既設シール材を除去する。次いで不陸が著しい部分については当該部にエポキシ樹脂系の接着剤(ボンドE2000)を塗布し、超速硬高靭性モルタル(オートモルスーパー)で断面修復する。


ジョイント近傍不陸部への断面修復材用プライマーの塗布

超速硬高靭性モルタル(オートモルスーパー)で断面修復

 ジョイントの施工はウレタン樹脂発泡体のバックアップ材を挿入後、最低20mmの厚さでJOINTを充填、ジョイント前後200mmにもJOINTを塗布する。さらにその上面には、目地部の伸縮作用を分散させるためにメッシュシートを貼り付けJOINTで含浸させる。JOINTの施工は概ね30分程度で完了でき、さらに30分程度の養生で次工程に移ることが可能だ。


バックアップ材の設置/ジョイント用プライマーの塗布/メッシュシートを現場に合わせて切断

「JOINT」の攪拌作業

伸縮装置部への「JOINT」の充填作業

メッシュシートの含浸工

 ジョイントの施工が完了後、床版全面にもシラン溶剤系速乾プライマー次いでPROOFを塗布、PROOFはそのままジョイント部も覆う形で塗布する。次いで舗装工を施工し、完成となる。既設舗装の撤去から新設舗装までを1日で完了できることも魅力だ。従来はジョイント部の撤去、再設置、床版防水および舗装で各1日の計3日間を要していた。


床版表面の清掃は箒やブロアで行う程度

橋面防水のプライマー塗布

「PROOF」の塗布

PROOFの上面に珪砂を散布/舗装以外の施工が完了した状況

 また、交通量が多いことなどの理由により、車線毎の施工が要求される橋梁であっても「同系アスファルト乳剤であるため重ね継手部の接合は数日程度経過しても施工でき、かつ接着強度に問題は生じない」(同社)としている。
 今回の橋梁は、近くに老人介護施設があることや生活道路として使用される橋梁であることから1日で路面上を補修することが望まれたため「ARCHIST ONE PIECE GEL SYSTEM工法」が採用された。期待に応え、ジョイントの埋設化から床版防水、舗装の打ち替えまでを一日で終えることができた。
 橋長20m以下の橋梁は全国に60万橋程度存在するが、自治体を中心に古く桁長が短い橋梁は床版防水工が未設置の橋梁が少なからず存在する。また、伸縮装置からの漏水により桁端部や支承が損傷しているケースも多い。中小規模の自治体では点検も含めて手が追い付いていない状態だ。損傷原因となりやすい伸縮装置部を埋設化して漏水などによる損傷を未然に防止し、かつ既存の舗装撤去から舗装の打ち替えまでを行える今回の工法は、中小規模の自治体ニーズに応えた工法と言えそうだ。(井手迫瑞樹)


実施例 ジョイント部は埋設され、舗装と一体化されている

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