道路構造物ジャーナルNET

第62回 維持管理は総力戦

民間と行政、双方の間から見えるもの

富山市
政策参与

植野 芳彦

公開日:2021.02.16

3.現状の理解

 現在は、「造る時代」から「管理する時代」への転換期である。これまでの、アセットオーナーと発注者の関係は、良く誤解されている。つまり、発注者と言われる人たちは、国民市民に権限を付託された実行者なのです。こういうことを理解したうえで、今後の世界が、どうなるのかを考えていくと、どうなるでしょうか?
 来年度予算は国をはじめ、多くの自治体はかなり厳しいものになっていく。そして、今後、税収の収入増は増税しない限りは望めない時代に突入するという事実の前で、何とかやりくりするために、マネジメントは必須である。縮小する社会になるのだ。「新しい社会」の始まりであり、挑戦する価値は大いにある。ただし、残された時間は少ない。
「橋梁長寿命化計画」「個別施設計画」というものは、「マネジメントの導入」ということを示したものである。「マネジメント」と言うと、自治体側では「なんか難しそうで、自分のところではとても無理だ」と拒否反応を起こすところが多いと思う。実は、富山市でもそうである。「マネジメント」と言うと拒否された。そこで、シミュレーションを示し、危機感を仰ぎ、「マネジメント基本計画」を策定し、個々を中身として導入した。
 各地方、地域によって実情もさまざまであり、市町村などの状況も異なるので、「地域版の簡易的なマネジメント導入方法とその実践」といったものが必要であると考えている。そのうえで、アセットオーナーとしては新たなものを受け入れる度量というか覚悟が必要であると思う。

 インフラ・メンテナンスにおいては、今後は従来と違い、「総力戦」の必要がある。いわゆる、発注者、官だけで対応することは不可能である。これは、マネジメント的にも技術的にもそうである。産とは協力連携して、効率的な管理の手法や、具体的方策の実施などを行うことが重要である。学に関しては、さまざまなアドバイスや新たな情報の提供、事業の評価等の方策が重要となる(第三者的判断など)。
 市町村の弱みは財政や人財のみではなく、国や県に対する忖度というか配慮があり、なかなか独自路線を打ち出しにくい。その辺は、首長のリーダーシップが必要であり、リーダーの指示ということで、職員は動きやすくなる。また、共通の認識を持った市町村同士の連携や情報交換、支援なども今後重要になってくると考えられる。
 となると、これまでの「隠ぺい体質」は是正しないと、協力者も協力できないことになってくる。私が民間出身だからか、考え方がおかしいからか? 「そんなことは隠してもしょうがないだろう!」「公表したほうが良いんじゃあないの?」と言うことを隠そうとする。何かどこかに弱みがあるのか? 一番は、そういう教育を受けてきたからなのだろう。官側の責任とすり替えてしまっている。
 マネジメントだけではいけない。インフラ・メンテナンスにおいては、「技術」(構造物等に対する知識)も重要である。新技術なども避けては通れない。そういった面での総合的技術力。これも重要である。


新たな調査法の実証

 最近、「協働」というテーマを掲げる方々もいる。これも重要である。しかし、それだけでは片手落ちどころかどれだけの効果が出るのか? 管理しているものの数が少ない、規模も小さいのであれば効果は大きいであろう。しかし、なかなか難しい。
「説明責任」という方々もいる。これも重要である。しかし、これらは言うほど簡単ではない。それよりも我々管理者には、構造物を守り、事故を防ぎ、災害などから市民を安全に守るという責任があり、自分たちの街を持続可能にしていかなければならないという、責任と使命がある。そもそもが隠ぺい体質なのに、説明責任が果たせるわけはなく、「住民に不安をあおる」ということも言われるが、教えてもらわない不安のほうが大きいと思う。
 ここをよく考えて、それぞれの方策のバランスをどうとっていくか? ということを考えなければならない。難しい時代である。我々はそういう時代に生まれてしまったのである。そして、できるだけ負債を子孫に残してはいけない。

 環境問題に取り組んでおられる方々も、同様の考えに基づくものではないだろうか? CO2の発生を極力抑え、地球温暖化を阻止しなければ、ならないわけであるが、どうも、個々の小さな活動、努力のほうにばかり脚光が行き、根本的対策には目が行きにくい。ヒーローも必要なのだが、そうではない。結局は、何も根本的な解決策がないことを隠ぺいするのに利用されているだけである。

4.まとめ

 新型コロナの影響で、予定が大幅に狂ってしまった。もっと取り組もうと思っていたことができない。
 インフラの老朽化対策が叫ばれ、いよいよ本格化してこなければならない時期であり、インフラの維持管理に新規参入の方々も多い。
 まず感じるのは、「勉強が足りない」そして「実績がない」。安易に、大学の先生に相談し、コンサルタントに相談しても、なかなか難しい。これは何度も書いている。しかし、いまだに「勉強が足りないな!」「もっと勉強してこい」というのが正直ある。なぜ、「一緒に勉強しましょう」「論文を出しましょう」というのがないのか? 民だけでなくて官側も勉強が足りない。ということは、本当は未だ困っていないということなのだろう。
 実は、インフラの維持管理というテーマは、私が社会に出た40年ほど前から言われている。しかし、少し動き出すとなぜか(?)天災が起きて、後回しにされてきた。某社の社長が会議中に、非常に実績が悪化してきた状態の時に、震災が起こったら「神風が吹いた」と言っていたが、非常に不謹慎である。被災された方々が聞いたら、袋叩きにあっても仕方がない。社会から排除されるだろう。森発言以上だ。どうも、そういう状況で建設界では本気になってきたなと思うと風向きが変わってきた。しかし、今回はコロナという疫病なので、建設業界には関係が薄い。ましてや、神風は他人の不幸を喜ぶ不逞の輩には吹かないはずである。
 最近つくづく思うのは「ヒト」である。さまざまなところで活動が取り上げられる方々は年齢に関係なく、「何かをやろう」と自分で考えられる人たちだ。こういった人の話を聞くと「組織で浮いている」と言う。私も実はそうだった。ズ~ットどこにいても浮いていた。考えてみたら小学生のころから浮いていた。
 最近感じたのは、同じ組織にいて同じような年齢でも考え方が違う。これは、個人の資質と役所では上司の影響が大きい。上司に従うか従わないか? 組織論で言うと従ったほうが正しいが、個人としては面白くない。その上司が信頼できるものが大きければそれが正しいが、果たしてそうなのか? 時代に合っているのか? 日本人は「同調」したがる。私も面倒くさいと同調して済ましてしまうが、どうしても同調できない場面もある。意味深な書き方をしているが、なんか、ここに書くことも繰り返しになってきた。ということは、なにも進んでいないということである。休眠するか、引退しようかと思う。少し別なことを考えよう!
(2021年2月16日掲載。次回は3月16日に掲載する予定です)

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