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シリーズ「コンクリート構造物の品質確保物語」㉑

東北地方整備局編最終回 より早くより良い復興道路を造る

横浜国立大学
大学院 都市イノベーション研究院
准教授 
細田 暁 氏

土木学会の委員会で専門知識や技術的な知己を得る

 取組みの持続 キーパーソンを見出し繋げることが大事

 遠藤 空気量7%で長期的な強度を確保できるのでしょうか。まだ実証されていないと思うので、二の足を踏んでいるところがあります。

 細田 コンクリートの圧縮強度で問題が発生した事例はほとんどありませんね。

 さて、東北地整の課長補佐という立場で土木学会のコンクリート委員会(「コンクリート構造物の品質確保小委員会」や「コンクリート構造物の品質・耐久性確保マネジメント研究小委員会」)に参画されたわけですが、どのような感想を持たれましたか。

 遠藤 めったにできない経験をさせてもらいました。先生方の専門的な話を聞けたことや、これまで正しいと思っていたことに対して、根本から疑問を提示して委員会内で議論をしていることは新鮮でした。最大の収穫は、多くの先生方や業界の方と知り合いになり、話ができるようになったことです。メールでも気軽にやり取りができるようになり、東北地整のインハウスエンジニアの中でも非常に得をしていると思います。橋梁のコンクリートのことで心配なことがあっても、阿波先生や小山田先生に質問をして返事をもらえ、生コンの会社さんにはデータをもらえる関係になれました。

 「コンクリート構造物の品質確保小委員会」では復興道路、復興支援道路のコンクリート構造物をどのように良くしていくかを検討しましたが、その一環として現場での試験施工を見学しました。コンクリートは私たちが直接扱うものではなく触れづらいところがありますが、目的と課題をもって取り組めば解決できるものだとわかりました。コンクリートにひび割れが入れば直せばいいという世界から、きちんとした考え方で勉強をしながら実践していくことを実際に見て経験できたことは、これから役に立つと思います。この経験は自分だけのものにするのではなく、部下や監督官、現場の人に伝えていきます。委員会に参画させてくれた東北地整にも感謝しています。

 細田 復興道路への思いをあらためて聞かせてください。

 遠藤 やはり地域の方は早くできることを心待ちにしていて、できあがると効果は絶大です。道路が開通すれば、観光客の数も全然違います。地域の大きな期待があることは非常に感じているので、早くつくることは重要ですが、それだけではなくて使いやすく長持ちする道路にするという気持ちが品質確保や耐久性確保につながってくると思っています。30年で打替えが発生するものはつくってはいけなくて、予算が限られていることを意識しながら、より早く、よりいいものをつくることを目指していきます。

 細田 品質確保や耐久性確保の手引き類を作成してきましたが、それらは決して100点ではなく、まだ課題はたくさんある、と私は考えています。トンネルも無傷のものができているわけではありませんし、フライアッシュを使用するなどの特別なコンクリート対策をしていないと思われる箇所ではすでに地覆に凍害が始まっているようなところも見受けられます。今後、この取組みを改善しながら続けていくためには、どのようなことが必要だと思いますか。

 遠藤 核となって動いてくれるキーパーソンをいかに見つけて、つないでいくかだと考えています。各事務所でも責任感のある人を見つけて、その人を中心に広げていく。当然、異動はありますから、本局で適切な地位にいる人が先生方と付き合いながら、適任者を見つけていき、その人が課長だとすれば、事務所に副所長として戻るかもしれません。同じ意識を持っていれば取組みは進むし、その下についた人も同じ思いで勉強していけば、さらに広がっていくと思います。

 細田 手引きも技術も大事ですけど、結局は人だと私も思っています。

 遠藤 動く人がいないと周りは動きません。動かない人を動かそうと思っても無理だと考えています。

 

気仙沼湾横断橋 低発熱低収縮高炉セメントを採用

 ――(編集部)仙台河川国道事務所管内には大きな橋梁がたくさんあります。気仙沼大島大橋は架設されましたけど、その横には気仙沼湾横断橋という大物が控えています。先ほど、復興道路の開通を地域の方が心待ちにしていると言われましたが、ある年寄りの方に聞いたら、大島大橋と横断橋は市民にとっては50年くらい待ち望んでいた橋で、生きている間に完成するのを見られるとは思わなかった、と言っていました。その気仙沼湾横断橋は現在水中部の下部工を鹿島JVが施工していますが、非常に難しい現場だと聞こえてきます。仙台河川国道事務所の副所長として、手引き書の実施や事業の対応などで行っていることがあれば教えてください。

 遠藤 私のところには必ず施工承認がきます。設計図や仕様書などの設計図書を確認して、マニュアルや手引きに合致したものになっているかを担当者に確認して、できていなければ私のところで直させます。

 気仙沼湾横断橋は海中に橋脚が立つので、コンクリートの仕様について鹿島建設さんと品質や長期耐久性をどのように確保するのかを相談しながら、進めています。佐藤さんと石田先生にアドバイスをもらい、低発熱低収縮高炉セメントを躯体に使用することにしています。

 ――副所長の立場で、南三陸国道事務所のような建設監督官の環境づくりは行っていますか。

 遠藤 まだ特に行っていません。4月に赴任して、これから勉強会を予定していますので、そこで意識付けを行いたいと考えています。表層目視評価や施工状況把握チェックシートはすでに行っているので、それ以外の工夫をどう取り入れるかを考えているとことです。

 ――コストの話をされていましたが、気仙沼湾横断橋はコストよりも塩害対策などの性能維持のための課題が多くて大変だと思います。

 遠藤 上部工の構造も耐久性を見込んだ工夫した形になっています。施工業者が決定したら、打ち合わせの中で提案を求めていきます。工期的にも厳しいので、品質を確保しつつ、どのようにスピードを上げるかが課題です。

 ――ありがとうございました。