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渡辺博志氏が英国道路庁滞在時の経験などを語る

PC床版継手工法研究会が技術講演会を開催

 PC床版継手工法研究会は21日、東京・赤坂インターシティコンファレンスセンターで技術講演会を開催し、約50人が参加した。講演は、土木研究所 先端材料資源研究センター 材料資源研究グループ長の渡辺博志氏(右肩写真)が「維持管理に関する調査研究を振り返って」というテーマで行った。



約50人が渡辺氏の講演を熱心に聞き入った


 同氏はまず補修したコンクリート構造物の劣化実態調査をもとに予防保全の意義を説明した。海岸線から100m以内の橋梁では補修後5~10年後に58%(100m以上では15%)が再劣化していることや、塩害で建設10年後に損傷が発生したPC橋のLCC(ライフサイクルコスト)を例にあげて、塩害環境の厳しいところでは早期対策が重要で、事後的対応ではコスト増および頻繁な対応が必要になるとした。また、建設後35年が経過した塩害環境にあるRCラーメン橋の非破壊検査を実施した経験から、客観的な判断が可能な中性化深さ測定や自然電位測定などの診断技術の必要性について述べた。

 続いて交換研究生として英国道路庁に1年間滞在したときの経験について触れた。渡辺氏は、塩害やASRに対する維持管理マニュアルや補修・補強ガイドラインなどの技術指針作成に携わることが多かったが、「英国に行く前と後では維持管理、とくに技術指針に対する考え方が変わった」と述べた。指針を作成する立場とすると「書いた内容がひとり歩きしてしまうのが一番嫌なこと」であるが、英国では“紙に書いた”技術指針・マニュアルに頼らない仕組みになっていたという。技術指針類ですべてをカバーせずに、カバーされていない案件は技術者による協議で決めていき、その過程をデータベースに収録して共有していくやり方がとられていて、技術者の判断が尊重されていると話していた。

 同氏はもうひとつ印象に残ったこととして、英国の構造物維持管理データベースシステムを挙げた。データベースには、構造物の現況、点検・補修履歴、点検員のメモ、補修スコア、今後の点検・補修予定のすべてが記録されており、補修などでの迅速な対応や情報共有が図られていて、現地職員に「メリットがあり有効活用ができればデータベースの質は上がっていく」と聞けたことが収穫だったと話した。

 コンクリート構造物のひび割れのとらえ方についても解説した。とらえ方には、鉄筋腐食や凍結融解、はく離、漏水などのひび割れが構造物に与える影響に着目する視点と、(施工)品質への懸念や想定しない荷重作用などのひび割れが発生した原因に着目する視点のふたつがあり、許容できるひび割れとできないひび割れの議論をするには、どちらの視点でひび割れをとらえるのかを明確にしておく必要があるとの考えを示した。

(2019年2月24日掲載)