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インタビュー詳細

大阪湾岸道路西伸部、淀川左岸線延伸部、大規模更新・大規模修繕など

阪神高速道路 新設・保全を考慮した技術開発動向

阪神高速道路株式会社
技術部長
加賀山 泰一 氏

淀川左岸線延伸部 様々なセグメント構造を検討

 ――淀川左岸線延伸部は

 加賀山 細かな検討には入っていませんが、大深度であることをターゲットに検討していく必要があると考えています。当社事業で最も長いシールドトンネルは大和川線ですが、それと同じ考え方では不合理になる部分が生じる可能性があるため、大深度を意識したセグメント構造についても検討課題だと考えています。


様々なセグメントを組み合わせる


 ――場所によっては断層があると聞いています。どういうセグメントを使うかの開発コンセプトはできているのですか

 加賀山 メタルとコンクリートをどう組み合わせるかになります。セグメントには様々なタイプがあります。合成セグメントや六面鋼殻セグメント、断層部では損傷制御セグメントといった鋼製主体のセグメントなどです。


様々なセグメント構造を検討(写真は大和川線での施工状況)


左からRCセグメント、損傷制御セグメント、六面鋼殻セグメント(耐火工施工前)


 ――シールドマシンの開発は、土質も関係しますが、どのようなイメージを

 加賀山 これからボーリングを行い、その調査結果に基づいて方針を定めていきます。大深度での施工実態の資料収集についても引き続き行っていきたいと考えています。


大規模更新事業 湊町の鋼製フーチング基礎は止水壁を周りに設置

 3号神戸線湊川付近は中間に橋脚を1本追加

 ――大規模更新事業について

 加賀山 大規模更新事業として、具体的に進んでいるのは2箇所あります。そのうちの1つとして湊町の鋼製フーチング基礎がありますが、当該基礎は一部地下街の上に載っています。詳細に調査したところ、錆は見られますが腐食による減肉はさほどありませんでした。取り替えまでは必要なく、現行の構造を活用して長期的な耐久性を維持できるというのが結論です。ただ、水が浸入していることは事実ですので、止水壁を周りに設置し、地下水から遮断する処置は行う必要があります。市街地の真ん中で行う必要があるので交通規制など大変な作業となります。


湊町鋼製フーチング内の状況


 大規模更新・修繕事業に係る工事もそうですが、施工条件が厳しかったり、施工方法が困難であったり、従前の発注形態では工事受注も厳しくなると思っています。難易度の高い工事に挑戦していただける業者さんにはさらにインセンティブの働く契約手法についても検討しているところです。

 ――湊町に関しては周りに止水壁をつくる

 加賀山 囲って、構造物を点検しやすいような空間をつくります。

 ――止水壁の建設と点検空間の構築ですよね。内部の腐食の補修はどのように行いますか

 加賀山 金属溶射を候補にしています。

 ――もう一箇所、検討が進んでいる箇所は

 加賀山 3号神戸線湊川付近です。桁高が薄く扁平な鋼床版桁で、疲労き裂が非常に多く発見された箇所です。神戸山手線との分岐に近く、交通量が非常に多いところですので、通行止めにするわけにはいかないということ、及び大阪湾岸道路西伸部が事業化されたことも踏まえ、すぐに取り替えるのではなく、当該事業が終わるまでの間、暫定処置ができないかということも含めて検討しています。薄い構造のためたわみの大きい橋梁ですので、中間に橋脚を1本追加する案も考えています。



湊川鋼床版損傷・対策状況


 ――SFRCを打設するのかと思いました

 加賀山 SFRCの施工で止まるような疲労き裂ではありません。震災時もかなり変形を受けていて、継ぎ接ぎで直しています。西方面からのルートを確保するため、本来ならば取替えたい桁を暫定的な補修で凌いでいる状況です。当時は新たな橋脚を設置できない箇所でしたが、路下条件の変化により設置が可能となりました。

 ――最終的には取り替えるのですか。取り替える場合でも交通規制しながらですよね。大変な作業ですね

 加賀山 対象区間は400m程度で、国道2号を挟んで上下線が分離しています。迂回路(大阪湾岸道路西伸部)が供用し、当該区間の交通量が減少すれば取替の可能性も高まってきます。

 現時点では、交通影響を考えれば暫定処置による対応が現実的であろうという判断です。その間、モニタリングによる監視はしっかりしないといけません。必ずしも中間橋脚を立てたからといって止まるき裂ばかりではない可能性もありますが、支間長が短くなることで、リスクは減ります。

 その他、喜連瓜破高架橋については現在詳細調査中です。支間中間部の沈下は続いており、コンクリートの劣化状況について橋脚も含めて詳細に調査しています。取り替えを選択した場合、橋脚も含めた取り替えの必要性についても検討が必要です。橋脚と桁が一体構造(ディビダーグ構造)ですが、橋脚はこれまでの点検結果では健全です。橋脚は残してその上に鋼桁を設置する鋼・コンクリート複合構造が採用できないか、部分的な取替えも視野に入れ、調査結果も鑑み構造を検討していきます。工事実施時期としては、大和川線の供用後の平成32年度から着手ができれば良いですが、迂回路をどのようにするか、が課題です。


喜連瓜破高架橋の橋の沈下状況


現在はアウトケーブルで補強(井手迫瑞樹撮影)


 ――喜連瓜破高架橋はASRも生じています。橋脚と桁の施工を一体化していたということであれば、橋脚もASRの可能性があります。現在は止水が効いており、橋脚に水がほとんどいかなくてASRが生じていませんが、架け替えで水が万が一供給されれば反応が進む可能性もあります

 加賀山 そもそも、使用したコンクリートが異なっており、試験の結果、ASRの反応性は確認されていません。

 ――連続桁にするのですか

 加賀山 懸念されているのは中央部のヒンジ構造であり、架け替える場合、3径間を連続化します。当該部は端橋脚でもともとジョイントがあります。この橋脚を柱部だけ使用し、かぶせるような形で上部と複合構造にできないか、と考えています。

 ――首の部分から代えるということですね

 加賀山 神戸線でも実施した複合構造です。PC桁で施工すると多くの時間を要しますし、橋脚を取り壊すにも時間がかかるため、できれば有効活用したいと考えています。そのためにも、ASRを含め材料劣化がないか、骨材の心配がないかを調査する必要があります。

 ――そのほかには大規模修繕も含めて

 加賀山 阪神高速では過去から取り組んでいるノージョイント化も大規模修繕のメニューの一つとして考えています。今までは桁の数が同じで、その位置が揃っていた箇所についてのみ、桁連結をやってきましたが、それらはほぼ完了しています。そこで、今後は橋脚上の梁を入れ替えることによって連続化することを検討しています。法円坂で実施したように橋脚上の梁を全部置き換える案もありますが、施工工期を短縮するため、梁を入れ替えず、既存の横桁をコンクリートで固め、合成構造化し、一体化させようとする案で構造照査の実験をしています。これによりノージョイントの適用範囲を拡大していこうというものです。



法円坂での対策状況


現状の法円坂高架橋



鋼桁横桁連結工法の開発


 ――それはメタルで連結するのではなくて、コンクリートで連結するということですか。あまり聞いたことがないですね

 加賀山 既存橋梁の連結ではそうかもしれません。新設では、橋脚の上だけコンクリートの横桁を配置していることがあります。カウンターウェイトのようなイメージです。

 ――法円坂も力技でした。施工業者さんも工事に苦労していた記憶があります。法円坂みたいにとても短いスパンとなる個所は他にもあるのですか

 加賀山 あそこまでスパンが短い箇所はありません。法円坂は地中に難波宮遺跡が存在していたことから杭基礎構造は採用できませんでした。法円坂は今の技術ならば軽量盛土でできるレベルです。

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冨士精密 ゆるみ止めナットを始めて半世紀 U-NUTなど橋梁・土木分野含め堅調に推移