道路構造物ジャーナルNET

長大橋、大深度地下、近畿圏久々のビッグプロジェクト

国土交通省近畿地方整備局浪速国道事務所 大阪湾岸西伸部と淀川左岸線延伸部の事業に着手 

国土交通省
近畿地方整備局
浪速国道事務所長

粟津 誠一

公開日:2018.02.08

清滝生駒道路 進捗率は6割弱
 下田原跨道橋 河川と国道168号をシングルスパンで飛ばす

 ――清滝生駒道路は
 粟津 規模からいえば小さいですが、路線としては重要となります。関西文化学術研究都市の開発による交通量の増加の対策や2車線で線形が悪いための渋滞改善を目的とした事業で、事業延長は、大阪府四条畷市中野~奈良県生駒市鹿畑町間11kmとなっています。大阪と奈良を繋ぐ道路で、大阪府側が5.3km、奈良県側が5.7kmです。4車線化未供用区間7.4kmのうち構造物は橋梁のみの860mとなっています。
 大阪側から優先的に整備しており、進捗率は約59%に達しています。四条畷市中野から清滝トンネルを超えて下田原西ランプ間の3.6kmは4車線で、さらに下田原ランプまでの0.8kmは2車線で供用しています。現在は下田原西ランプから清滝トンネルの東、国道168号タッチ部までは大阪府域であり、現在、その周辺を中心に事業を展開しています。具体的には、四条畷市域(1.7km)の工事の発注および施工です。下田原ランプ以降国道168号タッチを超え、生駒市域の国道163号に至るバイパス部約3kmは、設計が終わったところから用地買収を進めています。残る終点側約3.6k)は地元説明会も未開催で、これからになります。
 ――構造は
 粟津 地域高規格道路ですので、主要な交差点は立体交差となります。一部、現道を拡幅する区間もありますので、沿道利用も部分的に考慮した形である程度の高速性が担保できる構造にしたいと考えています。
 ――主要構造物は
 粟津 まず(仮称)下田原跨道橋があります。橋長87m、幅員21.5mの2径間連続鋼合成少数鈑桁橋です。下部工は完了しており、上部工の施工に入っています。来年度の完成予定です。下部工では(仮称)168号跨道橋の工事が進んでいます。同橋は河川と国道168号をシングルスパンでとばすもので、箱桁で設計しており、下部工の工事に着手しています。


清滝トンネル

供用した高山大橋交差点

下田原跨道橋の現況

 ――河川も含む跨道橋部ですか。送り出しが大変ですね
 粟津 国道168号の1日当たり交通量は、約11,000~12,000台です。河川も近接していますので、工法も含めて現在検討しているところです。
 3つ目の(仮称)下田原東ON/OFFランプ橋は、交差点に行くための川を跨ぐ橋となります。(仮称)北田原線橋は市道・北田原線を跨ぐ橋。(仮称)高山高架橋は川と2本の道路を跨ぐ橋。6径間連続高架橋。(仮称)鹿畑橋、鹿畑西高架橋、鹿畑町高架橋は現道を跨ぐ橋となっています。
 ――架橋予定地の地盤は
 粟津 悪くないです。現道の切り回しをしながらの工事になりますので、少し大変です。
 ――ボーリングは安全を考慮する上でし過ぎると思うぐらいがちょうど良いと思います
 粟津 そう思います。地盤によってはフーチングの前後で違います。

淀川左岸線延伸 安全には最大の配慮
 大阪湾岸道路西伸部 みなと神戸にふさわしい橋を

 ――改めて特徴的な構造物を挙げるとすると、どこになりますか
 粟津 淀川左岸線は地下70m以上のトンネルで、大阪層群は研究対象にもなると考えていますので、研究者にも見ていただきたいと考えています。公共事業の理解を進めるうえでも情報公開や現場見学を地元とあわせて行っていきたいですね。何せ70m以上という大深度の道路トンネルを掘ったことは誰もないので、地層としても興味深いと思いますし、周辺には工学系の大学もありますので、興味をもってもらって、この分野を掘り下げてもらえたらありがたいと思います。もう1つは、淀川の堤防と並行して四角の構造物を構築していくことです。安全には最大の配慮をしなければならない。JR、阪急、地下鉄が通っているので、それらとの基礎との兼ね合いも調整しなければなりません。防災上の関係もあります。
 大阪湾岸道路西伸部は、神戸市から海上の長大橋について、神戸の新たなランドマークとなり「みなと神戸」にふさわしい世界に誇れる景観の創出を期待されており、今後、有識者や市民の方など幅広くご意見を伺いながら検討を進めたいと考えています。また、和田岬以西は高さのある既設護岸のすぐ内側を橋梁で通過し、一部海側にも張り出す構造で計画されており、既設護岸との取り合いやテトラポットの復旧など海岸線をきちんとした構造で造っていくことは、地味ですが大事だと考えています。
 ――しつこいようですが個人的には吊橋を期待します(笑)。日本で吊橋の計画がなく、技術が廃れる恐れもありますので。関西が日本の橋梁技術をリードするという夢のある話にもなります
 粟津 勉強しながらですね。

i-Constructionを積極的に活用

 ――若手の研究者が保全ばかりで、橋梁構造の研究者が少なくなっています。吊橋を計画すれば関西から橋梁ルネッサンスを起こすことができます。国土交通省、阪神高速道路のインハウスエンジニアリングの方も士気が上がっていると思いますが、学術系の方の士気もあげてほしいですね。さて、特徴的技術や材料についてありましたら
 粟津 i-Constructionを積極的に活用していきたいと考えています。国が推進して活用していますが、自治体ではまだそれほど普及していません。地元の業者の方も自治体で活用しないと設備投資ができません。清滝生駒道路では、土工工事を進めていますが、ICT土工の見学会を市町村(枚方市、交野市、四条畷市の3市)を対象に行いました。


ICTの活用 ①ドローン


ICTの活用②ドローンによる撮影

ICTの活用 ③自動化施工

 各自治体から20名の方々に参加していただきました。そのようなことにも力を入れていきたいと考えています。見学会では、3Dで管理したデータをバックフォーに入れて自動化を行うというものでした。こうした重機を的確に操作する能力は、現状ではオペレーターの高い技術力が必須です。しかしそうしたオペレーターが少なくなってきているので、ICTの力を借りて施工するようにしていきたいと考えています。国土交通省では大きな土工ではICTを適用するように義務付けています。現状、大手は自前でそうした機会を所有できますが、中小は借りてこなければいけないのが現状です。その現状を、フィールドを使って市町村にも普及させることで、地元の中小企業の投資意欲を促進し、ICTを使った施工が当たり前になるように、していきたいと考えています。
 ――ありがとうございました
(2018年2月8日掲載)

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