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インタビュー詳細

気仙沼湾横断橋、津谷川橋など長大橋が続々と進捗

仙台河川国道事務所 復興・復興支援道路建設佳境へ

国土交通省
東北地方整備局
仙台河川国道事務所
所長
松居 茂久 氏

津谷川橋 下部工に特徴

 橋台高さは24~25mに達する

 ――特徴ある形式を有する橋梁について数橋挙げて詳細を説明してください

 松居 まず、歌津本吉道路の津谷川橋があります。同橋は橋長190.1m、幅員12mの5径間連続非合成鈑桁橋(RC床版)です。同橋の特徴は上部工ではなく下部工にあります。


津谷川橋

 ――どのような特徴を有するのですか

 松居 橋台高が24~25mと非常に高い構造高さを有している点です。これは本橋が二級河川津谷川の災害対策事業による堤防嵩上げ(バック堤)と、JR気仙沼線と交差することから、20mを超える高盛土に連続して橋梁が計画されているためです。橋台内部は周囲の壁と内部の筋交い壁(後ろ壁が1,000mm、前壁が3,100mm、中の筋交い壁が800mm、左右の外壁が800mm)を除き、中空断面であり、軽量化を図っています。


津谷川橋側面図


橋台背面は片流れの地層

 ニューマチックケーソンを採用

 橋台背面は片流れの地層になっており、支持層である岩級区分CL~CM級の風化粘版岩の上位に、津谷川の氾濫堆積物の軟弱地層と粘性土と砂層の互層が位置しています。そのためニューマチックケーソン基礎(基礎高さ23.5m)を採用しています。橋台および基礎工の規模縮小を図るため、橋台背後に土圧軽減策として、15m高部分に気泡混合軽量盛土(FCB)を採用しています。通常の盛土でも構造的には成立しますが、その場合はケーソン基礎や橋台の規模がさらに大きくならざるをえません。そのコスト縮減を図ることが目的です。現在は最後の下部工であるP2橋脚を施工中で、29年度内に橋台背後の高盛土と気泡混合軽量盛土の施工を行う予定です。


津谷川橋背面盛土の施工

 施工に当たっては、歌津本吉道路の津谷川周辺は、三陸沿岸道路(国交省、開通目標:平成30年度)、津谷川災害復旧(バック堤)事業(宮城県、同平成29年度)JR気仙沼線災害復旧事業(JR東日本、同未定)の工事が輻輳するため施工調整が各事業の完成に大きく影響します。特に津谷川P1橋脚周辺は、三陸沿岸道路の高盛土、宮城県津谷川バック堤盛土、JR津谷川線橋梁工事がほぼ同時に施工しなければ、それぞれの目標時期に完成できない状況にありました。特に三陸沿岸道路の津谷川橋とJR津谷川線橋梁の施工ヤードとして使用している右岸バック堤の施工がクリティカルとなっていたことから、国土交通省とJRがバック堤の一部分の工事を施工することにより、各工事の引き渡し期間を省略することが可能となり、施工期間の短縮を図ることができました。 


工事工程調整

 加えて、将来の維持管理コストの縮減を図るため、耐久性向上のほかに、支承交換時におけるジャッキ位置を決定し、桁製作時に補強材を設置しています。また、ジャッキアップポイントとして桁に明記することで将来の維持管理における省力化を図っています。


東北地方整備局道路部初の鋼斜張橋形式

 気仙沼湾横断橋 長期耐久性向上考えた最先端の斜張橋

 ――気仙沼湾横断橋の特徴について教えてください

 松居 同橋は、当整備局の道路部が所管する橋梁として初めてとなる斜張橋形式を採用しています。長期耐久性の向上やメンテナンスのし易さも考慮して設計しており、最先端の斜張橋と言えます。


気仙沼湾横断橋側面図


気仙沼湾横断橋フォトモンタージュ

 橋長は1,344m、幅員は11mです。形式は基礎が場所打杭基礎(A1、P4~P7)、直接基礎(P1~P3)、鋼管矢板基礎(P8~P12)、組杭深礎基礎(A2)となっています。下部工は逆T式橋台、張出式橋脚(P1~P3)、壁式小判型中空橋脚(P4)、壁式中空橋脚(P5~P7、P11~P12)、張出式中空橋脚(P8~P10)です。上部工は起点側(陸上部)からが鋼3+7径間(190.5m+473.5m)連続箱桁、気仙沼湾を渡る海上部が鋼3径間連続斜張橋(680m)という構造です。床版は陸上部でRC床版、海上部で鋼床版(16mm厚)をそれぞれ採用しています。鋼重は全部で12,700t(箱桁部が3,800t、斜張橋が主塔も合わせて8,800t)に達します。平成26年3月から工事に着手しており、現在は下部工が陸上部の一部(A1,P2,P3,P5~P8)の施工を完了し、海上部を含む残る橋脚の施工を進めている状況です。上部工は3径間の箱桁が製作中で、斜張橋部については受注者が決まり、7径間連続箱桁部が発注手続き中です。


海上部橋脚の施工(井手迫瑞樹撮影)


斜張橋採用し、影響を最小限に

 洗掘層よりさらに下に基礎天端を設定

 ――鋼重を聞いただけでもその大きさが分かりますが、規模も含めてその特徴を教えてください

 松居 海上部を斜張橋にしたのは、漁船や大島との連絡船など航行船舶の安全確保に必要な支間長を確保し、区画漁業権への影響を最小限にするためです。経済性および安全性等を考慮して最も優れた形式として採用しました。

 特徴は大きく分けて4点あります。

 第1点は橋脚基礎の洗掘防止を目的として、洗掘削層(約10m)、液状化層(約12m)のさらに下に基礎天端高を設定しています。平成23年度の東日本大震災において、気仙沼湾の表層が7m程度洗掘されました。一般的対策としては護床工による洗掘対策がありますが、永久的なメンテナンスが必要となることから、技術検討委員会を設けて検討した結果、洗掘層よりもさらに下に基礎天端を設定することにしました。

 

エポキシ樹脂塗装鉄筋を採用

 維持管理の低減・効率化図る

 2点目は橋梁強度低下リスク削減のため、鉄筋については錆に強いエポキシ樹脂塗装鉄筋を採用しています。橋脚(海中部、海面上全て)はもちろん、床版にも採用する予定です。


エポキシ樹脂塗装鉄筋を採用(井手迫瑞樹撮影)

 3点目は維持管理の低減・効率化を図っていることです。

 点検の効率化という点では、道路橋示方書に設計の基本理念として、「維持管理の確実性」が追加されたことや、設計において維持管理の方法、維持管理設備やスペースについて配慮することが明記されました。こうした点に対応するため点検設備を考慮しています。具体的には、航空障害灯の日常点検(1回/月)、定期点検(1回/年)が容易となるように、桁上から塔頂(主桁から100mの高さ)に至るエレベータを設置しています。主塔内部の点検・補修作業がいずれの個所も可能となるように梯子・段梯子を設置しました。さらに主桁と主塔内部には照明を設置点検しやすくしています。



点検しやすくした主塔内部

 また、詳細設計の中で橋梁全体の点検・維持管理計画を作るように指示しており、桁についても内外面とも点検しやすくなるようディテールに配慮する方針です。


桁は全断面現場溶接を採用

 4点目は、長期耐久性確保です。

 主桁などの連結で使用する添接ボルトが腐食を招く原因となるため、気仙沼大島大橋と同様、桁は全断面現場溶接継手としました。主塔頂部や主桁端部など腐食しやすい部位の防食は、溶射+フッ素の仕様になります。


全断面溶接を採用

 ただ、大島大橋と異なるのは、大島は陸上部で地組して溶接し、FC船で運んで架設したため、海上部での溶接は両端2点しかありませんが、気仙沼湾横断橋では、主塔(主塔は2ブロックごとにFC線で吊り曳航し組み上げていく)を立てこんだ上で、台線で運んできた桁を吊り上げて、当初は斜ベントを用いて順次海上で張り出し架設するため、全断面が海上部の風防足場のなかでの溶接になります。

 ――女神大橋(長崎県)のやり方ですね。施工の難易度が跳ね上がっていますね

 松居 架設計画はこれからですので、提案によっては、もう少し合理化した施工が可能になるかもしれません。台船からの桁のつり上げも、船舶通航や潮の状況から短時間で行う必要があります。航路幅も最大で約190mと確保できる範囲が決まっています。このような所与の条件下でどのように施工するか、ひな型はインハウスで作成していますが、受注した業者がそれをトレースできるかどうかを確認し、できなければ新しい架設方法を提案してもらう必要があります。


塩害環境考慮し、低発熱収縮抑制型高炉セメントや各種混和剤を採用

 ひび割れ幅は最大でも0.07mmに抑制

――気仙沼湾横断橋の海中部主塔の橋脚(P12)は施工や材料の面から工夫を施していると聞きました。

 松居 橋脚躯体内の施工性・品質確保・工期短縮を目的として、従来の切梁・腹起構造から開口の大きい構造となるトラス構造支保を採用しています。速さもさることながら、海中橋脚に継ぎ目を作らずに済むため、品質確保に対する寄与も非常に大きなものがあると考えています。


トラス構造支保を採用

 同橋脚基礎の鋼管矢板施工におきましては、日本に2台しかないカプセルホウ・パイラ工法を採用し、工期短縮、施工効率の向上などを図っています。施工精度を高めるため、鋼管矢板の施工は1枚分飛ばして2枚施工し、次にまん中の矢板を入れ込むという手順を繰り返しています。


カプセルホウ・パイラ工法

 厳しい塩害環境下であり、有害ひび割れの発生をできる限り減らすため、低発熱収縮抑制型高炉セメントを採用し、施工に伴う温度ひび割れと耐久性の観点から、配合検討(混和剤(※編注:太平洋マテリアル製)など)を実施しています。加えて打設リフトの設定分割数においては、塩害環境下における耐久性に配慮した上で、温度応力解析を実施して、有害なひび割れを絶対に起こさないよう、コンクリート打設リフトを設定しています。結果的には最大でも0.07mm幅に抑制できています。


 加えて、凍結防止剤や飛来塩分によりアルカリ分が供給されてASRが引き起こされている事例があります。今回はまさに海水の中にコンクリートが突っ込まれている状態ですから、ASRに起因するひび割れ抑制を目的として、使用材料および配合条件を検討の上、通常の試験より厳しくコンクリートバー法及びSSW(塩害環境下)による確認試験(3%NaCl水溶液を用いた各種試験)を行っています。結果、高炉スラグを入れることでASRにおける耐久性は十分あると確認できました。

 ――港湾という事で橋脚設置後の船舶の安定航行について配慮している点はありますか

 松居 船舶の衝突による橋脚損傷を防止し、衝突した船舶の損傷を軽減することを目的として防舷材を設置する予定です。また、横断橋建設後は船舶からの見通しの悪化が懸念されるため、建設後と現況の視認状況をシミュレーション上に再現し、視認の安全性を確認しています。

船舶航行シミュレーション


防舷材の設置イメージ


 ――海上に建設する斜張橋であるわけですが、レインバイブレーションや渦励振などの対策は何か取る必要はありますか

 松居 設計に当たって、実構造物の模型を作製して風洞実験を行い、留意点を洗い出した上で桁形状を決め、風荷重や渦励振などに対応しています。レインバイブレーションについてはケーブルの形状変化(外回り加工)などで処理する方針です。


風洞実験