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インタビュー詳細

道路橋床版の維持管理を分かりやすく解説

道路橋床版の維持管理マニュアル、防水ガイドラインを改訂

土木学会
鋼構造委員会
道路橋床版の複合劣化に関する調査研究小委員会
幹事長
((一社)日本建設機械施工協会 施工技術総合研究所)
谷倉 泉 氏

大山崎町所管の天王山古戦橋で試験施工

 勾配は最大11% ラテックス改質コンクリートを採用

 ――どこの現場で施工したのですか

 谷倉 大山崎町(京都府)が所管する橋長206.9㍍の天王山古戦橋です。橋の選定に当たっては、京都でインフラ整備(iMec)を主催されている舞鶴高専の玉田和也先生のサポートを得ました。同橋はJR東海道本線や京阪電車を跨ぐ橋であり、なおかつ11%の最大勾配を有する条件の厳しい橋でした。そのうち33㍍程度の2径間を試験フィールドとして提供していただきました。試験施工の結果は、コンクリート舗装にひび割れや剥離も発生せず、大変うまくいきました。施工にあたっては、日本道路とフタミ、太平洋マテリアル、太平洋セメントさんらの協力を得ました。

 ――コンクリート舗装の厚さは

 谷倉 試験施工した橋梁は地方道なので、舗装厚を50㍉としました。工程は既設舗装を剥ぎ、床版表面にショットブラストによる研掃工を実施し、その上にコンクリート舗装50㍉を直接打設しました。端部には試験施工でもあることから、安全のために接着剤を塗布しました。打設に使用したコンクリートはゴムラテックスを混入したもの(ラテックス改質コンクリート)を使用しています。鉄筋は配置せず、表層には横断方向にグルービングを設け、被膜養生剤を散布しました。



日射の影響を考慮して夜間に施工を行った


金属円盤を用いたタイングルービング/仕上げ工


施工半年後の天王山古戦橋


 ――通常の増厚や補修のように床版上面を10㍉削って(鉄筋裏まではつりだし)60㍉打設したというわけでは無いのですね

 谷倉 違います。舗装撤去後にショットブラストを行っただけです(投射密度150㌔㌘/平方㍍)。

 ――打設の際の手間がかからず面白いですね

 谷倉 試験施工に使った橋梁は、元々名神高速道路を建設する時に作った工事用道路がそのまま使われている橋梁です。経過年数は50年くらい経っていますが、損傷がひどくなかったため、比較的手間を必要としませんでした。工事車両が通っていた割に傷んでない理由は、版厚が200㍉と当時としては比較的厚く、縦断勾配も大きかったので水はけがよかったことが理由として考えられます。

 ――ゴムラテックスコンクリートを用いた理由は

 谷倉 ひび割れが生じにくいことが最大の理由で、国内何箇所かでの施工実績とつくばでの試験施工結果を踏まえて採用しました。

 ――今後の技術開発の方向性は

 谷倉 ゴムラテックスコンクリートのような高品質なコンクリートだけでなく、一般的なコンクリートを用いて地方の業者でも施工でできるコンクリート舗装の開発を進めていくべきであろうと考えています。

 コンクリート舗装の長所は、一回施工すれば、損傷が起きない限り半永久的に近く供用できるので経済的なことです。また、鉄筋の被りが大きくなるので、コンクリート内部への劣化因子の進展の影響が少なくなって耐久性も向上します。

 一方短所は、騒音と表面が滑りやすくなることでしょうか。こうした課題はありますが、米国ではコンクリート舗装を結構使っていて、被りを2インチ以上とり、さらに表層に1~2インチの別の表層舗装(ポリエステルコンクリート:一種のPCMに近い樹脂コンクリート)を舗設しています。この表層コンクリートには最近日本で開発された材料を使っており、カルトランス(カリフォルニア州交通局)には、逆に「なぜ日本ではこれを使わないのか?」と質問されたのが印象に残っています。

 このほか、騒音を抑える方法としては溝の深さと幅を調整したグルービングを路面に設けることが選択肢としてあるようです。米国ではその条件を細かに分類して、車の走行(騒音低減,滑り抵抗の改善)に最も適したグルービングを行っているとのことでした。さらに、維持管理の省力化を図るため、自走式路面点検ロボットを開発し、これで表層部の剥離を検知し、その後ろに控えるロボットで剥離部に接着剤を注入するシステムが開発されていました(橋梁と基礎,2015.7,9月号参照)。

 このような対策で騒音や滑りの問題が解決されれば、地方道において普及する可能性があり、土木学会では次年度以降さらに本格的に検討していくようです。

 ――山間部の交通の少ない箇所にはこうした方策を適用し、交通量がある程度あり、騒音にも対応しなくてはいけない箇所には防水工→アスファルト舗装ということになりますかね

 谷倉 世界的にアスファルトの供給は少なくなってきているようです。ピーク時の半分になってきているというような話も聞かれ資源価格が上がってきています。一方でコンクリートは我が国が自給できる数少ない天然資源(石灰石)であり、有効活用すべきものと考えることもできます。


損傷が徐々に顕在化する前になすべきこと

 ――最後に、今後どのような点を床版では研究していくべきだと思いますか

 谷倉 床版は橋梁の主要構造部材とは見なされてこなかったのですが、最近の維持管理分野においては全く無視できない重要な部材と位置付けられるようになってきています。すなわち、文字どおり交通荷重を支える床となり道路の安全性を維持するために不可欠の部材です。このため、既設・新設を問わず、床版は高品質で耐久性のあるものを絶えず追求していかなくてはなりません。同時にアセットマネジメントの観点からも、如何に床版の管理が重要かということを認識してもらい、具体的な交通状況・環境条件から、どのような対策を行っていけばいいかということを、各道路管理者に認識してもらうことが最も重要だと思っています。


左は東海地方の自治体の山間部の橋梁の床版裏面/右は北海道開発局所管の橋面舗装

いずれもそれほど車は通らないのだが......。(当サイト内の写真を再掲)

 これまでさほど注目されてこなかったコンクリート床版の問題が、疲労、塩害、凍害、ASRなどの複合劣化の進展に伴って脚光を浴びてきたと感じています。今後さらに10~20年経過すると、現在でも対応に苦慮しているような事例が一段と増加することが想定され、そのようになる前にこのような資料を参考にして確実な対策を少しでも多く進めていってもらいたいと思っています。

 中長期的な道路計画に応じて、対策は取らずに調査は継続するというケースもあると思いますが、対策を実施する上では第一に防水・排水設備を整えて水を橋の外に排出する仕組となっているか確認しておくことが重要と思います。これが予防保全的な対策にもなります。あとは床版の損傷状態や道路管理計画に応じて各種の補修補強、さらには架け替えも視野に対応していくことになると思います。

 このマニュアルやガイドラインを読むと感じていただけると思いますが、床版の維持管理において、「水を制することは橋を制す」と言えるのではないかと感じている次第です

 ――ありがとうございました