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インタビュー詳細

道路橋床版の維持管理を分かりやすく解説

道路橋床版の維持管理マニュアル、防水ガイドラインを改訂

土木学会
鋼構造委員会
道路橋床版の複合劣化に関する調査研究小委員会
幹事長
((一社)日本建設機械施工協会 施工技術総合研究所)
谷倉 泉 氏

道路種別や管理主体に応じてランクわけ

 ――マニュアル、ガイドラインを自治体に普及させていくには

 谷倉 例えば、防水ガイドラインでは、道路種別や管理主体に応じてランク分けして選べるようにしています。ただ、防水層が無くても数十年の長い期間供用している地方道の橋もあります。そういったところは簡単な塗膜を塗るだけでも良いわけです。そのような要求性能が高性能なものではなく、重要性の低い地方の中小橋のような場合にも適切な防水システムが選べるようにしています。

 ただ、これらの規準類が出版されても知らない、知っても読む余裕がない、などの意見も聞かれますので、なるべく読んでわからないところは専門家に聞くとか、講習会に参加するなどの取組みが必要と思われます。


複合劣化は4,50年後に急激に進展する可能性を有する

 ――中には人口密集地と寒冷地の性格を併せ持つ自治体などもあり、相当の知識がないと対応が難しい現実もありそうです

 谷倉 高度成長期に建設された橋梁の一部では、供用後40~50年経って急激にポットホールが発生し、毎年数多くの対策が求められるようになってきています。そうした橋梁を調査すると、表面の乾燥ひび割れや鉛直方向の貫通ひび割れに表面から塩化物イオンが浸透するケースだけでなく、水が浸入することによっても劣化・損傷が進展し上側鉄筋が腐食膨張しています。今まで軽微と見なしていた損傷が徐々に重篤化していると言えるわけです。古い橋梁も今までなかったから良いのではなく、数年後に大きく損傷が進行する可能性があることがわかってきています。調査の際にそうした知見を念頭に入れて対策をどうするか考えないと、管理する橋全体の合理的な維持管理の方針は定まらないと思われます。なかなか難しいかも知れませんが、そういうことを道路管理計画(AMS)と併せて考えていくべきであろうと思っています。今後20年もすると我が国の橋の半分が、供用後50年を経過します。そうした時に慌てても手遅れとは言いませんが、橋の健全度的にも、自治体の財政的にも課題がある中で、予防保全を含めた早期対策が重要であるという内容をガイドラインで記しています。このような留意事項をまとめただけでも大きな意義があったと思います。


床版防水がなされていないと大幅に損傷が進み架け替えに至るケースも

 ただ、前述しましたように、こうしたガイドラインを刊行して講習会を開いても、地方自治体の方はなかなかご参加されていません。そのため、コンサルタント任せになっているという実態があります。主体的な責任を有しているという自負をもって、高くアンテナを張っておくための資料にしてもらいたいと思います。

 ――残念ながら、国内の床版防水は個別の床版が置かれた環境や劣化状況を鑑みて決めるのではなく、道路橋示方書の記述に応じて、画一的に施工されている感が否めません

 谷倉 我々が20年ほど前に自主研究でヨーロッパの床版防水工を視察した時は、防水層の性能評価の厳しさや施工レベルの高さに驚きました。その後もJHの方々を交えて訪欧を継続し、JH基準(JHS)を整備しました。さらに、十数年ほど前には松井繁之先生も加わって訪欧したのが大きな契機となり、土木学会でガイドラインを取りまとめることになったと理解しています。道路橋示方書では、平成14年の改訂の際に全ての橋梁に防水層を設置することが義務付けられましたが、ドイツやイギリスでは、その40年も前に設置を義務付けています。車両の輪荷重を直接支える床版の耐久性確保と、交通の安全を維持するためには防水工が大きな役割を果たすという事です。我が国もこれから徐々に整備されていくものと思われます。


内部進展の把握には微破壊検査が最適

 防水工施工前に表面含水量の的確な把握を

 ――変更点のうちとりわけ強調したい箇所は

 谷倉 道路橋示方書が求める性能を満足させるためには、土木技術者や予算が足りない機関でも高性能に限らず、バラエティに富んだ防水層が選定できるように提示しています。またせっかくやるからには、基本となる下地処理や接着性能について留意して下さいということを強調しています。

 維持管理マニュアルでは、昔のような疲労だけではなく、損傷が複合的かつ内部で進展していることも疑って調査と対策を行う必要があります。また、1箇所で大きな損傷が出ていれば、別の箇所も顕在化する一歩手前になっている可能性は高いので、内部ひび割れをいかに把握するかということが大事です。

 内部ひび割れの検査方法として、非破壊ではまだ完全に把握できる方法はありませんので微破壊試験が適切だと思います。巻末にもそうした資料が添付されています。

 また、床版上面の水分量によっては、防水層が接着しませんので、表面の水分量を適切に管理できる測定器(水分計)を具体的に推奨し、なるだけ乾燥に近い状態で施工することを求めています。


多くの現場で使用されているHI-100


米国では7割近くがコンクリート舗装

 小規模な自治体で防水工とは別の選択肢に

 ――コンクリート舗装の採用について

 谷倉 前述の防水層の義務付けに対し、維持管理予算や人材が不足している地方自治体ではそうした対応ができないケースも考えられます。特に小規模で交通量が少ない橋を多く管理している自治体に、防水工や舗装の打ち替えを一定期間ごとに繰り返させるというのは、合理的ではないという考え方もあります。もちろんこれは橋が傷んでなければという前提条件となります。

 その代替策として防水層と舗装を設置する代わりに、コンクリートで置き換える方法はないのかということで検討を始めたものです。その理由として、国内の橋梁を調査すると、コンクリート舗装の中小橋梁がたくさん残っていることが明らかになってきました。単位的には数千~数万橋単位で残っているようです。それも40~50年以上経過している橋梁も多く存在しており、九州~北海道まで調査すると想定していたより健全です。こうした結果を「道路橋床版の橋面コンクリート舗装」という冊子にまとめました。


北海道の橋梁で用いられているコンクリート舗装例(左)

手前のアスファルト舗装の方が損傷が繰り返されている(右)


 調査で知りましたが、米国の高速道路延長の7割近くはコンクリート舗装になっています。維持管理が楽だからです。2014、15年に米国全土でのコンクリート舗装の実態調査を行いました。14年は藤野陽三先生や前川宏一先生、内閣府の方々とも共に調査し、翌年も別途、大田委員長らを中心として調査を行い、日本でも使えるのではないか、という方向性が少し見えてきました。これらの調査結果をもとに、国内の実橋での施工試験を京都で行いました。