HOMEインタビュー一覧道路橋床版の維持管理マニュアル、防水ガイドラインを改訂

インタビュー詳細

道路橋床版の維持管理を分かりやすく解説

道路橋床版の維持管理マニュアル、防水ガイドラインを改訂

土木学会
鋼構造委員会
道路橋床版の複合劣化に関する調査研究小委員会
幹事長
((一社)日本建設機械施工協会 施工技術総合研究所)
谷倉 泉 氏

補強と補修を併用すべき

 補修で重視すべきは「水」の影響排除

 ――補修補強の併用とは

 谷倉 基本的には、疲労対策(補強)とその他の劣化要因対策(補修)の併用です。例えば今から50年ほど前の高度成長期に建設された床版は180㍉前後の厚さですが、最近設計されているB活荷重では230~250㍉程度の厚さが要求されます。そのため床版上下面から版厚(版剛性)を増やす補強と、もう一つの対策はひび割れ注入や断面修復、床版防水、排水設備の整備などを行う補修です。特に防水層の施工によって水が床版内に入らなくなることで、疲労や塩害、ASRに対しては非常に大きな効果が発揮されます。床版の下地処理(プライマー塗布)と防水、舗装、排水、この4つの柱で床版を守ろうというのが床版防水システムガイドラインの柱です。


床版防水システムの概要(左)と床版防水層の種類(右)


 また、複合劣化に対する補修補強併用対策の事例として電気防食工法と補強工法の併用の事例も取り入れて記述しています。今後、複合劣化の対策事例も増加すると思いますので参考になるものと思います。


防水ガイドラインを分かりやすい表現に改訂

 小規模自治体の技術者でも使いこなせるように

 ――次にその防水ガイドラインの改定について

 谷倉 以前のガイドラインは、重要な路線の床版を守るために、床版内部に水を浸透させないことを重要視していたこともあり、どちらかというと高機能床版防水に大きく記述を割いていました。ただ、2㍍以上の橋は全国に約70万橋ありますが、そのうち地方自治体が約8割の56万橋近くを管理しており、それぞれの橋長は小さいものが多いとは言え無視できるものではありません。しかしながら、地方であるがゆえにさほど重要ではない橋が多いのも事実で、そのような橋に対しては、橋の供用環境や交通条件に応じて様々な性能の防水層が選べるような説明を加えました。


床版防水システムの計画事例フローおよび床版防水システムの組み合わせ事例


カテゴリーの詳細表

 平成14年度の道路橋示方書の改定では全ての橋梁に防水層の設置を義務付けましたが、このガイドラインは小規模な自治体でも防水層を施工する一連の工程が理解できるようにと、わかりやすい表現を念頭に書き改めています。


下地処理の重要性を強調

 排水設備の具体的事例も列挙

 ――分かりやすい表現とは

 谷倉 土木学会の委員会においてもかなり議論したところでもありますが、概ね大卒3年後の技術者でも理解できるようにという方針でとりまとめました。松井繁之先生の実験・研究でも明らかにされていますが、水が床版内部に浸入しないように防水できると、床版の耐久性は100倍以上に改善されます。すなわち防水は床版の寿命を左右する要素であり、この点でも道路交通の安全性を確保する上で死活的に重要な対策と考えます。この点を踏まえ、いかに床版の設計・施工・維持管理をやっていくかということを具体的にまとめています。その際、道路管理者は橋の重要度を整理して、それに応じた防水の対応レベルを設定することと、選定した防水層に対しては設計・施工上の留意事項、さらには排水設備についても効果的な構造や設置手法について詳解しています。


排水設備の設計上の留意点


桁などに排水がかからないよう流末処理は適正に(左)、排水管は適切な位置および径のものを設置する(右)


 一方で、主に床版防水工の一部では、防水層の下(床版との接着部)と上(舗装との接着部)で剥離して舗装をやりかえる例が見られます。いかに防水層の性能が良くても、下地となる床版や、その上に設置する舗装と接着していなければ意味がありません。床版上面との剥離を防ぐため、ガイドラインでは床版の下地(上面)に残るゴミやレイタンス、アスファルトの残材をショットブラストやウォータージェットで除去して清浄な接着面を確保することを求めています。しかし、実際には予算が無かったり、予算があっても実施していないケースが非常に多く見られます。それが原因で、いまだに防水層の膨れ(ブリスタリング)や剥離が生じて再施工を余儀なくされるケースがあります。


RC床版上面のショットブラスト/RC床版上面のウォータージェット

 もう1つは舗装との接着が確保できないケースです。一部の床版防水工法では、防水層と舗装の間に接着剤を設置して、接着剤を舗装の熱によって溶融させて接着させるものがあります。ところが、それが溶けて接着していないケースがあります。その理由は、工事の発注が秋から冬にあり、寒い時期に施工するため温度不足で溶融しないためです。一例として、舗装の施工は150度前後のアスファルト合材を運んできて110度以上で舗設するように決められていたりするのですが、実際は100度以下で施工されることがあれば、溶けて付着させることができなくなります。他の例としては、舗装の転圧が不十分な場合は、そこに水がたまって輪荷重がかかるとその圧力で付着を切ってしまい剥がれてしまうという事例も報告されています。防水メーカーもこれらの課題に対応できる材料の開発を進めていますが、交通規制をしながら再施工するというサービスの低下を防ぐためにも、下地処理をしっかり行うことや、十分な品質管理のもとで舗設することの重要性を述べています。この点に関しては、舗装の改良や防水層との相性も考慮し、FB(フラットボトム)13やグースアスファルトに近い材料など、空隙の発生が少ない材料を用いた舗装での施工も推奨しています。

 先進諸国の例を見ると、EUではプライマーの性能評価も行っています。防水システムという観点からは、床版上面に塗布するプライマーによって床版内部からの水蒸気圧などの影響を遮断すること、耐久性のある防水層の採用、水を通しにくい舗装との組み合わせが推奨されています。防水層の性能については、特に傷んだ床版上面で確認できるひび割れが交通荷重に伴って開閉することに追従できる性能を求め、耐ひび割れ開閉負荷性能を重視しています。この試験法は日本道路協会の防水便覧でも紹介されています。

 また、舗装表面からの排水だけでなく、舗装下の防水層面からも排水できるような排水設備や横断勾配の無い箇所に設ける排水パイプなどの具体的な事例も紹介しています。今までの排水設備は等間隔で設置されたり、目詰まりを生じさせることが明白な設備であっても使用されていましたが、ここではなるべくそのような目詰まりしにくい構造例や、水のたまりやすい伸縮装置付近での排水設備の設置の重要性や事例についても解説しています。