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橋梁を全面塗り替え 支承交換など

NEXCO西日本 沖縄道許田高架橋で大規模な塩害補修

公開日:2016.06.20

 NEXCO西日本九州支社沖縄高速道路事務所が所管する沖縄自動車道の北端に位置する許田高架橋で、大規模な補修補強工事が進んでいる。同橋は1975年(昭和50年)に沖縄海洋博覧会の開催に合わせて建設された鋼連続非合成鈑桁橋。架橋地点は沖縄西海岸の名護湾に面しており、管内では海岸飛沫地帯に最も近い橋梁となっている。供用後40年が経過し、経年劣化や飛来塩分による影響で様々な部位に損傷が発生しており、今回の工事では損傷の著しい支承・検査路・添設板・高力ボルトの取替および橋梁の全面塗り替えなどの補修工事や落橋防止装置の設置工事などを実施している。詳細を報告する。(井手迫瑞樹)


上空から見た許田高架橋と今回の施工区間

位置図

劣化状況

WJで斫って断面修復
 マクロセル腐食対策にシラン系含浸材

 同橋は、沖縄自動車道路の北端に位置する。記者が取材したのは4月中旬だが、比較的爽やかで、風は少し強かったがよく晴れた絶好の取材日和だった。同橋を含む許田IC~石川IC間の沖縄自動車道北部区間は、前述した通り、沖縄海洋博覧会に合わせて1年程度の突貫工事で建設された。当時は海砂の塩分総量規制が無く、現在のような施工前の塩分除去が不十分であったことに加え、記録的な空梅雨と伝えられており、自然洗浄も起きなかった。そのため、結果的にコンクリート中に多くの内在塩分を抱えることになり、それが床版や橋脚などに悪影響を生じさせているのは広く知られている。橋脚など比較的マッシブな部材で空洞などを生じさせずきちんと打設している箇所では、塩分量が多くても空気が侵入しないので腐食反応は起きず、塩害の進行は比較的少ないが、床版のような薄い部材、特に当区間のようなグレーチング床版では損傷が著しくなる(ハンチ部などは脆くなっている)。そのため、今回の工事でもウォータージェット(WJ)で斫って断面修復し、なおかつ第三者被害の可能性がある箇所については、シラン系含浸材(アクアシール2000)を塗布してマクロセル腐食電流の発生を抑止した上で、剥落防止工を施工している。


WJによるはつり工(左が機械式、右がハンドガン)

マクロセル腐食対策として断面修復前にシラン系含浸材を塗布

支承取替は296基、塗装塗替が54,000平方㍍
 高力ボルト約17万本を交換 検査路改良は1,317㍍

 工事概要
 さて、今回の工事内容である。同橋は土工部を挟んで橋梁が分離しており、名護終点側A1~A2間が2+3+2+3径間の鋼連続非合成鈑桁で橋長304㍍、那覇起点側A3~A4間が3+3+3+4径間の鋼連続非合成鈑桁で橋長449.5㍍の上下線という構造形式である。支承取替が296基、塗装塗替が約54,000平方㍍、高力ボルト取替工が約82㌧(約170,000本)、検査路改良工が1,317㍍、添接板取替工が510箇所、落橋防止構造の設置個所が64箇所となっている。
 施工手順は、まず吊足場組立を行い、コンクリート剥落防止対策(WJによる斫りおよび断面修復を伴う)、高力ボルト・添接板取替、桁補修・支承取替、塗替え塗装、落橋防止装置および検査路の設置という順に続く。通常120人/日程度が並行して働いている現場であり、中規模の新設現場よりも大規模な現場と言える。


吊足場を組み立て

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