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レベル2地震に特化、有機材不使用のため耐久性向上

低降伏点鋼の特性を生かした免震ダンパー

公開日:2016.02.11

極めて大きい減衰性能

 従来の低降伏点鋼を用いた座屈拘束型ダンパーはレベル1地震およびクリープ・乾燥収縮、温度変化時に生じる橋桁の変形や移動においても機能し、それらによる累積損傷が生じるため、許容ひずみレベルを小さく設定せざるを得なかった。このためレベル2地震動の際のエネルギー吸収効果が十分に発揮できなかった。一方、従来の粘性ダンパーは、粘性材料の経年劣化が課題とされてきたが、BRDはこのような有機物を使用しておらず、すべて鋼部材で製作されているので、100年オーダーの耐久性を確保できる。BRDは低降伏点鋼に作用する荷重をレベル2地震動に限定させることにより、許容ひずみを大きく設定することができ、極めて大きい減衰性能を発揮出来るように工夫されたものである。


構造と取付けイメージ

応答比較(左)/衝撃力緩衝機能付き伸縮管の構造(右)

 レベル2地震が生じた際にはBRDの応答変位に基づいて累積損傷度を計算できるので、レベル2地震を受けた後も、累積損傷度が1に到達するまでは、さらなるレベル2地震にも対応できることになる。皿ばねは、高層建築構造物の制振に多数使用されている信頼性の高いものである。皿ばねは平和発條が製造しているもので、皿状の鋼材を重ね合わせ、荷重がかかった際にその皿が椀状から平板状に変化することで復元力を発揮する。皿ばねはシリンダーの中に内蔵され、シリンダーには左右に移動できるスペースが設けてある。また、十分な防食性能を有しており、粘性ダンパーに比べて耐久性も優れている。さらに、部材強度や寸法、変位を自由に設定可能であるため、強度、変位量にかかわらず様々な用途に適用可能というメリットがある。


伸縮管部(左)/座屈拘束ブレース端部(右)

 具体的な用途としては、①今後の大規模更新事業において行われる床版取替工事における重量増による地震時慣性力の増加に関して、下部工の補強を軽減できるほか、橋台に設計耐力以上の地震力がかかる場合は、橋台をウォータージェット工法で削孔してグラウンドアンカーに直結し、橋台の転倒を抑止しつつ減衰性能を発揮させ、地震応答を低減する機構、②上限値を正確に設定できることから、現在桁間の落橋防止構造に用いられているPC鋼より線を用いた落橋防止構造の代替――などが期待されている。BRDは上限値が定められているため、引きずりによる落橋や鋼製ブラケット部分の先行損傷などの懸念がないためである。


具体的な用途例

 今回の公開試験では、(クレビス部分を除いた)実物大製品の座屈拘束ブレース(塑性区間長さ1500㍉、ブレース長2200㍉、芯材規格:LY225、降伏軸力342kN、降伏変位δy=1.87㍉、等価軸剛性ke1=182.9kN/平方㍉、Ke2=0.03ke1=5.49kN/平方㍉、スライド量±30㍉)+皿ばね(スライド量±33㍉)を試験体として、軸歪み±2%の動的載荷において、周期3秒を3波、周期0.8秒を3波、周期2秒を3波といった周期の異なる正弦波を与え、免震性能と速度依存性の確認を行った。その結果、伸縮管のストロークエンド到達時点から、皿ばね機構、ブレース材のスライド、座屈拘束ブレースへの力の伝達というメカニズムなどが有効に機能したことが確認された。


試験体の概要および試験条件

各種試験入力波



当日の動的載荷試験状況

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