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実測して効果を確認した荒川河口橋の方法を敷衍 

東京国道 SFRCを中心とした国道357号鋼床版疲労対策を策定

公開日:2016.02.02

葛西高架橋(山側)、京浜大橋(海側)を優先

 国土交通省関東地方整備局東京国道事務所は1月28日、同事務所内で第4回鋼床版疲労対策検討委員会を開催し、国道357号線全体の維持管理計画を策定した。同事務所管内の国道357号線の鋼床版を有する橋梁のうち荒川河口橋をはじめ10橋中7橋で鋼床版に疲労亀裂が見つかっていることを受けて検討を進めていたもの。前回の第3回委員会で示されたFEM解析の傾向が、荒川河口橋での載荷試験による実測値によって裏打ちされたことから、同橋の維持管理方法に順じて対策を進めていく。また、優先順位が高い橋梁として、葛西高架橋(山側)、京浜大橋(海側)が示された。一方で今後はモニタリング、健全度評価、補修方法、鋼床版亀裂の発生メカニズムについて継続検討していくことも確認された。


対策優先順位(以下資料図表は全て東京国道事務所提供)

SFRCが大きな低減効果をもたらす
 施工後のひずみは施工前に比べ7~9割減少

 第4回委員会で検討されたのは①SFRCの効果検証、②補修方針、③維持管理計画、④今後の課題・継続検討事項の4点。


荒川河口橋および鋼床版の疲労亀裂が発見されている橋梁

 まず、①では、施工前後で動的・静的載荷試験を実測した結果、鋼床版上に基層代替および補強材料として敷設される75㍉のSFRCが、輪荷重載荷による歪みを低減し、鋼床版の疲労による亀裂を抑制できることが明らかになった。載荷試験を行ったのは国道357号荒川河口橋(2+3+2径間連続鋼床版箱桁、52,800台/日、大型車混入率49%)。デッキ付近の測点における歪みは、SFRC施工前に比べて10~30%(70~90%減)程度まで低下しており、大きな応力低減効果が得られていることが確認された(左図上下)。これは、過去の首都高速道路での移動輪荷重疲労試験結果や、国道50号大平高架橋(上り線交通量約20000台/日、大型車混入率35%、1983年に上り2車線を供用)での静的試験結果と同様の傾向であり、デッキから離れた測点のひずみもSFRC施工前に比べて20~50%(50~80%減)まで低下させていることが確認された。

損傷酷い箇所は当て板+SFRC舗装

 この結果を踏まえて②では、荒川河口橋と同様の補修・補強を各橋梁でも実施していくことを決めた(右下表)。
 デッキ―縦リブ溶接部においてデッキプレートに8㍉以上の貫通亀裂が生じている個所は従来通り当て板による補修を行った上でSFRC舗装を施工する。8㍉未満についてはSFRC舗装のみを行う。ビード進展亀裂についてはビード上の亀裂長さが400㍉以上であれば当て板(コーナープレート)、ストップホールを行った上でSFRC舗装を施工する。400㍉未満はストップホール+SFRC舗装で対応する。ビード進展+縦リブ進展の場合は、ビード上の亀裂長さが400㍉以上または亀裂が縦リブ高の1/2に達している場合は当て板(コーナープレート)+ストップホール+SFRC舗装、400㍉未満ないし1/2未満の場合はストップホール+SFRC舗装。縦リブ角折れ防止材溶接部においては、縦リブ高の1/2以上であれば当て板+ストップホール+SFRC舗装、1/2未満であればストップホール+SFRC舗装でそれぞれ対応する。
 縦リブ突合せ溶接、垂直補剛材―デッキ・ウエブ溶接部、縦リブ―横リブ溶接部、デッキ―横リブ溶接部においては、SFRC舗装の補強効果に期待して経過観察を行うことにした。但し、縦リブ突合わせ溶接のうち、フランジ幅1/3以上もしくはウエブ高さの1/2以上に進展しているものは当て板(添接板による接合)を施す方針。また、その他の亀裂についても状況はモニタリングし、進展があれば対策を検討していく。
 ③は亀裂に対するものと、SFRC舗装に対するものに分けた(下フロー図)。

 SFRC舗装についてはAs表層の異常などがあればSFRC基層の劣化調査、次いで基層と鋼床版の付着調査を行い、剛性低下や局部応力の増加がみられた場合、対策工を施す。鋼床版の亀裂については、損傷部のモニタリングを亀裂調査(磁分探傷試験など)あるいは定点ひずみ計測にて実施。亀裂調査については異常があれば対策工を施す。通常部については目視点検などを行った上で異常があれば詳細な亀裂調査(MT・UT・ひずみ計測・湛水調査(Uリブ滞水)・赤外線調査(Uリブ滞水))を行い、異常があれば対策工に進む――ものとした。
 葛西高架橋(山側)と京浜大橋(海側)の橋梁定期点検の分析から、亀裂は輪直下の縦リブに多く発生し、横リブ交差部および縦リブ継手を有する支間中央部に特に多く集中していることから点検時はそうした個所を重点的に確認していく。

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