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岩手県・田瀬大橋補強補修工事

古い吊材の基部が破断、全吊材を取替え
大型車通行荷重、渦励振の繰り返しが要因

 岩手県花巻土木センターが所管する国道107号田瀬大橋の補強工事が終盤を迎えている。同橋は国道107号の田瀬ダムの渡河する箇所にある橋長119.95㍍(支間長118.8㍍)、幅員9.5㍍(車道幅員6.5㍍)の鋼トラスドローゼ橋+橋長20.6㍍(幅員同)の鋼単純鈑桁で、平成24年1月の点検時に吊材(ロッド材)の下側定着部の1本に球面座金部から破断していることが確認されたため、吊材を全て取り替えるとともに塗装の塗替えなど各種補修を合わせて行っているもの。(井手迫瑞樹)


施工中の田瀬大橋


4箇所の吊材で亀裂を確認

分析の結果、疲労による破壊を推定


【構造および損傷要因】

 同橋が供用されたのは昭和49年。昭和47年道路橋示方書が適用されて設計された橋梁で活荷重はTL20、雪荷重100㌔/平方㍍の考慮がなされている。当時は疲労設計を行っておらず、今回破断した吊材は鋼製の丸型ロッドで日本鋼管製の「NK-TR45」を用いていた。詳細調査の結果、破断した吊材以外にも4箇所の吊材で亀裂が生じていた。


    

破断した吊材                                            破断した個所


 損傷要因としては、交通による振動または谷間にあることから風の影響が考えられた。また、破断面の観察結果から疲労破壊もしくは脆性破壊(遅れ破壊)の可能性が考えられた。現地調査の結果、破断した定着ロッド先端が補剛桁内に脱落しており、定着ロッドのねじ山の凹凸部の凹部に集中荷重が発生し、振動の支点になっていることがうかがえた。


   

  破断した吊材                                                     吊材破断状況 


それを試験室で調査分析(破断面のマクロ観察、電子顕微鏡による破面分析、硬さ試験)を行った結果、遅れ破壊の特徴である粒界破面や高硬度は観察されず、遅れ破壊の可能性は低いものと判断した。疲労破壊の典型的な破面(ビーチマークやストライエーション)は(恐らく破断後の)腐食が激しいため観察できなかったが、マクロ的に起伏の少ない平坦で直線的な破面形態である点は、疲労側面において一般に見られることから、今回の破断は疲労による破壊の可能性が高いと判断した。


    
破断部の調査結果と考察                                          破面調査結果 



        
     破壊形態の分類および推定の考え方                         硬さ測定結果                      


実際の各種試算でも一定方向に毎秒3~8㍍の風が1か月当たり13分程度吹いて渦励振が発生した場合、30年程度で吊材に損傷を招く可能性があることや、同地の平成17年のセンサスに基づき、大型車両が一日500台通過すると仮定すれば(実際は東日本大震災の復旧工事本格化に伴い漸増傾向)34年程度で同じく損傷が生じる可能性があることが確認できた。以上の結果により風荷重および交通荷重による疲労破壊と判断。破断部の交換だけでなく吊材全ての交換が必要なことが明らかになった。