道路構造物ジャーナルNET

アームローラーも改良 間詰にはUHPFRCを充填

阪神高速 守口線の床版取替で平板型UFC床版を採用

公開日:2020.12.23

既設スタッドの処理は新設スタッドに干渉する箇所だけ
 位置決めはアームローラーが主に行う

 施工はまず、既設床版をアームローラーで全数撤去し、主桁上フランジを処理する。処理する箇所は既設スタッドが新設スタッドに干渉する箇所だけとし、施工効率を上げている。次に新設床版のずれ止めのため、スタッドを1箇所2~4本ずつ設置する。

アームローラーによる床版撤去状況

全数撤去し、先行スタッドを配置した状況(大柴功治撮影)

影響のない旧スタッドは完全にケレンしない(大柴功治撮影)
 ついで、11月15日17時から床版パネルの架設を始めた。
 床版置き場からクレーンで床版を10tトラックに積み込む。トラックがバックで守P21端部近くまで近づいて(トラックは上下線とも中分側に停車)、アームローラーがトラックから床版を受け取り、旋回して架設位置に移動する。アームローラーは固定治具により床版を4点で固定して運んでいた。架設位置ではアームローラーが前後左右に移動しながら、位置を微調整する。左右幅を調整できる機能も付いているが、左右移動は少ししかできないため、位置決めはアームローラーが主に行う。1枚目、2枚目(端部定着パネル)の架設では位置決めに時間がかかっていた(1時間弱)が、「架設が進めば段取りもスムーズになり、早く架設できるようになる」(鹿島建設)ということだ。床版の架設は、片側の架設を先行させて、もう片側を追いかけで架設していく。縦目地が200mmしかなく、さらに鉄筋も出ているので、同時に架設するとお互いが干渉するためだ。こうしてまず全数を設置し終えた。

アームローラーが移動し、UFC床版を積み込んだトラックがバックで近づく(大柴功治撮影)

アームローラーの把持状況(大柴功治撮影)

1枚目(端部版)の架設状況(大柴功治撮影)

2枚目(端部版)の架設状況(大柴功治撮影)

早い場合は1枚30分で架設

 床版の架設にあたっては、その後の緊張工をスムーズに行うため、シースの仕口合わせに留意した。床版端面にリングスポンジを配置しているが、その大きさや硬さを工夫した。床版がついたときに、あまり硬いとつぶれないし、柔らかすぎると、曲がってしまうため、程よい硬さが必要なためだ。架設もスポンジに横からあたらないように、床版を前に下して、手前に引いてスポンジをつぶす工夫をしている。
 架設は11月16日の昼頃に完了した。工程上は約20時間で完了予定(1時間あたり約1枚)としていたが、早ければ1枚30分で施工できた。

床版パネルの中間敷設状況

床版パネルの架設完了状況

間詰材はUHPFRC
 縦締めPCを採用

 次いで縦継ぎ目に(UFC床版と同等の強度(150N/mm2))を有する早強性のUHPFRCを間詰コンクリートとして打設する。その後緊張工を行い、縦目地にUHPFRCを充填し、同様にスタッド部にUHPFRCを打設し、合成桁化する。縦締め緊張には、上り線46本、下り線(拡幅あり)50本、1S28.6の裸PC鋼材を採用した。

縦目地はエポ鉄筋を採用して重ね接手でつなぎ、UHPFRCを充填

充填完了状況

縦締めPCの設置状況

 床版同士の間詰幅は20mm。こちらは縦締めPCのため最小限の間詰幅だが、(上下線間の)縦目地は標準150mm~200mm幅となる。縦目地はエポ鉄筋を採用して重ね接手でつなぐ。工夫しているのが先打ちスタッドだ。フランジ上には、短いスタッドをうち、床版側にはインサートを埋め込んでおいて床版下面にボルトを挿し込む。両方とも桁と床版の接合部の間詰コンクリート内部に収まる長さとしており、2本1セットで、1本のスタッドとして機能する形とし、周囲のUHPFRCを介して力を伝えるようにしている。これにより通常の長さの後打ちスタッドを減らし、箱抜き孔を不要とし、耐久性を向上させた。

スタッドの配置状況と間詰部へのUHPFRC打設状況

 間詰め材料として使用する場所打ちUHPFRCの量は、10m3に達するため、同材料の練り混ぜが可能な500L練りの車載式のミキサーを現場に導入して施工した。

壁高欄 床版を傷めないように事前に貫通孔を明けておく
 1ブロック当たり長さ3.5m 全部で23ブロックを施工

 壁高欄、中央分離帯と床版間はアンカーボルトを差し込み、間詰部にモルタルを充填して一体化した。既存のプレキャスト壁高欄をベースに、アンカー(接合方法)を工夫していることが特徴だ。壁高欄をアンカーボルトで固定するが、将来の高欄取替時に床版をなるべく傷めないように、事前に床版に貫通孔を明けておき、床版下面からナット固定する機構を採用した。UFC床版より壁高欄のほうが、取替時期が早いことが予想されるため、ボルトを緩めれば壁高欄が取れるようにし、取替えやすくしている。軸方向はせん断キーを用いて接合した。壁高欄の長さは1ブロック3.5mとしている。全部で23ブロックを施工した。

プレキャスト壁高欄の設置状況

壁高欄と床版間の間詰コンクリート打設状況

完成状況写真

 元請は鹿島建設。主要一次下請は富士ピー・エス(UFC 床版製作・架設)、丸栄コンクリート工業(アームローラー開発・運転)、ケイコン(壁高欄・中央分離帯製作・設置)など。(2020年12月23日掲載)

【関連記事】
阪神高速 守口線の床版取替でHydro-Jet RD工法の改良版を採用
大阪府 田尻スカイブリッジの大規模耐震補強が最盛期
大阪モノレール 軌道桁の長寿命化進む コンクリート桁45000m2にシラン系含浸材を噴霧

ご広告掲載についてはこちら

お問い合わせ
当サイト・弊社に関するお問い合わせ、
また更新メール登録会員のお申し込みも下記フォームよりお願い致します
お問い合わせフォーム