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現場を巡る詳細

河川および国道上という現場条件下で資材搬入や打設に苦労

阪神高速道路 1号環状線でディビダーグ橋を連結化

 阪神高速道路は、1号環状線(南行)リニューアル工事(通行止め期間は11月10日~20日)の一環で、大阪市中央区松屋町~同区島之内 1 丁目付近の長堀入口~道頓堀出口間においてディビダーグ橋の連結化工事を行った。同橋梁部は東横堀川と並行(川の中に橋脚)し、国道308号(長堀通)と交差しており、連結部は国道の真上に位置している。計画線形から最大で8㎝程度沈下しているが、桁本体には沈下による目立った損傷は見られていない。沈下は損傷によるものではなく、クリープ・乾燥収縮によるものと考えている。2001年に舗装を表基層打替。詳細の嵩上げ高さの記録は残っていないが、現状で路面に大きな沈下はないため、線形は擦り付けていたものと思われる。ヒンジ部はゲレンク沓を採用している。当初から同沓を採用していたが、損傷が生じたため、今のゲレンク沓は取替えたものとなる。今回はこれを存置してPC連結するもの。現場をレポートした。



(左)ディビダーグ橋(環S171~173)の位置図(阪神高速道路提供。以下、注釈なき場合は同)

(中央・右)東横堀川と並行し、国道308号(長堀通)と交差する環S171~173(大柴功治撮影)


1965年竣工の有ヒンジ3径間連続PCラーメン箱桁橋

 ゲレンク沓は存置。鉄筋量不足の箇所は炭素繊維シートで補強

 今回対象となる橋(環S171~173)は、橋長166mの有ヒンジ3径間連続PCラーメン箱桁橋。1965年に竣工した。交通量は約91,000台/日(平成27年度 全国道路・街路交通情勢調査)を誇る。建設時の適用示方書は、土木学会「プレストレストコンクリート設計施工指針(案)」昭和30 年制定(昭和36年改訂)を適用しているとみられる(詳細は不明)。先述の通り、ゲレンク沓は82年に取替えている。しかし、交通量の増大や累積疲労から車両のヒンジ部通過によるたわみ差の発生や、ゲレンク沓の摺動による摩耗が見られたことから今回抜本的な対策として、PC桁の連結を選択したものだ。



橋梁概要


ヒンジ部の状況


 基本的な工法は、中央ヒンジ部をPC鋼棒(延長1.25m)で連結し、隙間はコンクリートで埋めて、ゲレンク沓は存置とする。また、事前に連結した構造系で照査し、鉄筋量不足になる箇所には不足分を補うような炭素繊維シートで補強する。

 具体的には、PC 鋼棒(φ32)は、既設桁と新設コンクリート部を連結(一体化)するため連結工部分に集中して設置する(11本/1箱)。外ケーブル(19S15.2×6 本/1箱)は、ヒンジ連結による構造系変化とB活荷重対応にともなう補強として箱桁ウェブや橋脚柱頭部に外ケーブルを設置して橋梁全体系を緊張する。炭素繊維シート補強は、常時の B 活荷重や耐震性能照査により上部工全体を通して曲げやねじり、せん断に対する既設鉄筋の不足分を補足するもの。



PC鋼棒と外ケーブルの設置図


連結部の箱桁内部にはコンクリートを充填

 打設は生コン車を国道上に配置して7回に分けて施工

 連結部は、中空の箱型ではなく、すべてコンクリートを充填する。設計強度40N/mm2 の高機能 AE 減水剤と膨張剤を添加した高流動コンクリートを使用した。膨張剤入りコンクリートを使用する理由は、両側の躯体に拘束を受ける部分に打設することから、乾燥収縮等によるひび割れの発生が懸念されるためだ。

 打設時は夜間2車線規制で、生コン車を国道上に配置。配管をして圧送したが、1夜間で複数箇所の打設はできないので、7回に分けて施工した。最大圧送距離は80mにもなった。その後のポンプ車の洗浄や余剰コンクリートの後片づけもヤードがなく、国道上にバキューム車を配置して行った。さらに、プラントに持って帰って処理する必要があった。



夜間2車線規制を行い、国道上に生コン車を配置。圧送距離も長くなった


外ケーブルの外側2本/箱(合計4本)を先行緊張

 リニューアル工事の他工事車両の通過を考慮

 まず、施工のための吊足場を組むのが一苦労だった。国道上の足場設置は夜間1車線規制しか認められなかったためだ。都合9日間をかけて施工したが、約3,000m2の足場面積をスムーズに架設するため、日綜産業のクイックデッキを採用した。「観光船が航行するため、すべて夜間作業(22:00~6:00)。速やかに架設し、船舶や交通への影響を極力小さくする必要があった」(三井住友建設)ためだ。



迅速な施工が求められた吊足場の架設。クイックデッキでは作業床を先行して構築できる(右写真:大柴功治撮影)


 本施工手順は、①炭素繊維シートをケーブルを張る前に補強が必要な部分(柱頭部突起の背面など)のみに設置。②PCケーブルの定着部にコンクリート打設(10/23~ 7回に分けて施工)。その後、③外ケーブル挿入(11/5~)。台船を使用して東横堀川からケーブルを足場上に荷揚げして、1本ずつ手で挿入した。④ヒンジ部をアングル材溶接により仮固定。これはコンクリート硬化中の摺動を防止するためだ。



施工手順③④(環状線通行止め前の供用下作業)


柱頭部突起の背面などの補強が必要な部分に炭素繊維シートを設置



外ケーブル挿入状況


 以降は、通行止め作業(連結部)(11/10~)中の施工となる。

 ⑤(厳密には通行止め前日の夜間から)下床版・ウェブ・先行コンリート打設。桁下からコンクートを充填した。スランプフローは65cm。さらに、⑥壁高欄削孔・既設継手・上床版を撤去。上床版は片側1/2をワイヤーソー(部分的に手ばつり)で撤去した。⑦PC鋼棒・外ケーブル緊張。外ケーブルは外側ウェブに一番近い2本/箱(合計4本)を先行して緊張した。

 外ケーブルの先行緊張は、リニューアル工事での他工事車両の通過を考慮したものだ。一番重いものは、舗装の切削機を乗せたトレーラーで約50tとなる。上床版撤去には数日かかるので、下床版のコンクリートが硬化した段階で、工事用車両の通過に耐えられるように先行して緊張した。

 その後、⑧上床版配筋・型枠・コンクリート打設。上床版撤去済み後に片側ごとに施工し、最後に残る⑨外ケーブルを緊張した。外ケーブルは、柱頭部突起間は4本/1箱、さらにウェブ定着突起部~柱頭部突起間は2本/1箱を追加した。追加するのは、長堀入口が近接していて拡幅されているため、補強範囲が広くなったためだ。



施工手順⑦⑧(通行止め期間中の作業)


上床版コンクリート打設


外ケーブルとPC鋼棒/外ケーブル緊張後(大柴功治撮影)


 さらに(規制開放後の)供用下で、⑩炭素繊維シート設置を行っている。炭素繊維シートはトウシートとストランドシートを使用した。貼付パターンが多岐(約10種類)にわたり、目付量、貼付総数は箇所によって違う。箱桁内部や側面、下面に軸方向や橋軸直角方向、鉛直方向とさまざまなパターンがあるが、原則、1層貼りとし、足りない箇所は2層としている。最大目付量は900g/m2でウェブのせん断補強箇所が該当する。


大阪港から現場まで2日かけて台船で資材搬入

 水門通過時間も21:30~22:00に限定

 施工は「河川上、国道上の施工となり、資材搬入や打設に制約があり苦労した」(三井住友建設)。大阪港から現場まで台船(220t土砂運搬船を使用)で2日かけて資材搬入(急遽、材料を入れることになっても2日待たなければならない)した。5月の作業開始後、1カ月間水門が閉鎖されて、供用下での工程が遅れ、通行止めギリギリとなった。足場撤去も部材を台船で運搬することになるので、これも苦労することになりそうだ。
 大阪港にも仮置きヤードがなく、台船積み込み時間にあわせて、トラックを手配。水門通過時間は、観光船が航行しているため、21:30~22:00に限られた(水門は22:00に閉鎖)。現場の仮置きヤードも狭隘だったので、施工にあわせて資材を順次搬入した。「台船には最大限の材料(トラック約3台分)を積み込んだが、それでも足りない材料が出てきて、調整が難しかった」(三井住友建設)ということだ。



限られた航行時間のなかで、台船により資材搬入を行った


仮置きヤードは東横堀川とビルの間にしかなく、狭隘だった


 元請は三井住友建設。一次下請はSMCシビルテクノス

(2020年12月15日掲載)