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塩害で大きく損傷した桁の補修補強

新潟県 新胎内橋の補修補強

公開日:2015.07.16


新胎内橋の今次対策概要図(赤い部分の2径間が今回の補修補強範囲)

外部から見た新胎内橋

2.対策
 保護塗装の除去にはウォータージェット(WJ)工法を採用した。これは「面積が大きいことと、ディスクサンダーなどと比べて表面を傷つけず平滑に除去できる」(元請の日本サミコン)ため。「プライマーやパテがコンクリート面の窪み部分に入り込んでいることもあり、そうした個所を除去する際、既存工法ではコンクリート面ごと研掃する必要があったが、WJの場合、(水圧や水量を調整することで)コンクリート面を傷つけず、塗装のみ除去できると考え採用した」(同社)。


(写真左)撤去前のコンクリート保護塗装/(写真右)WJによるコンクリート保護塗装の撤去

(写真左)WJによるコンクリート保護塗装の撤去/(写真右)コンクリート保護塗装の撤去完了状況

 塩害対策は損傷部に対しては塩分吸着材入りの防錆ペースト(SSI工法)を吹き付け塗布した上でポリマーセメントモルタルを吹き付け断面修復する。また、損傷が出ていない床版裏面および主桁は、予防保全対策として鉄筋腐食抑制型シラン系含浸材を塗布する。


(写真左)鉄筋防錆剤の塗布状況と(写真右)塗布完了状況

(写真左)断面修復材の吹き付け施工/(写真中)施工状況拡大図/(写真右)断面修復が完了した主桁

 SSI工法は正に帯電させた層状構造を有する塩分吸着材により塩化物イオン(CL⁻)を吸着し、予め保持していた亜硝酸イオンを供給することにより、長期的な鉄筋防錆効果を実現するもの。アクリル系粉末ポリマーを使用することで鉄筋や下地に対する付着耐久性にも優れており、硬化したペーストは緻密で、鉄筋を長期にわたって防錆できる。当初設計では、鉄筋位置に腐食抑制型シラン系含浸材を塗布することになっていたが、懸念されるマクロセル腐食に対してより効果が高い工法として、元請提案により、SSI工法を採用した。SSIで使う防錆ペーストは内在塩分量に応じて塗布厚さを変えることで適切な防食性能を発揮する。そのため今回の現場(1立方㍍あたり約2㌔)に応じて塗布厚を3㍉に設定して施工した。


SSI工法フロー図とシステム概要図

 また、桁全面・床版裏面1,668平方㍍には鉄筋腐食抑制型シラン系含浸材「ビルテクト-100E」を採用している。同製品はアルキルアルコキシシランを主成分としたシラン系表面含浸材で、含浸深さは5㍉、透水抑制率は80%以上の性能を有する。吹付けやローラーによりコンクリート表面に塗布した後、含浸材が内部の空隙に浸透し、水と反応してシラノール化(SiH3OH)、シラノールとコンクリート中のケイ酸塩が結合し、さらに生成されたシラノール同士が結合することで、コンクリート表面および内面に防水保護層を形成するというメカニズムを有している。このため外部からの水や塩化物イオンの浸透抑制性能に優れており、鉄筋の腐食抑制効果を発揮する材料として採用した。


(写真左)含浸材の塗布/(写真右)塗布後の撥水性の確認

 下フランジは全桁で炭素繊維シートによる補強を行った。補強面積は延べ237.6平方㍍で、橋軸方向に600㌘目付のシートを2層貼り付けた上に橋軸直角方向にフランジを巻くような形で200㌘目付のシートを1層貼り付けた。


(写真左)炭素繊維シートによる補強と(写真右)表面保護塗装

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