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過年度にストップホールや再溶接などの補修を行ったものの、亀裂の進展が確認

埼玉県 行田大橋で同県初の鋼床版上SFRC+CFRPグリッド補強を施工

 埼玉県行田県土整備事務所は、一般国道125号バイパスが武蔵水路および秩父鉄道を跨ぐ箇所に供用している行田大橋について、SFRC(鋼繊維補強コンクリート)とCFRPグリッドを用いた鋼床版補強を行っている。同橋は1988年に1期線として供用された鋼床版箱桁で床版支間(ウェブ間)は5mとかなり広く、デッキプレート厚は12mmとなっている。同時期には都市高速を中心にこうしたウエブ間の床版間隔が広い橋梁が建設されており、交通量によっては早期に各溶接部やデッキプレート貫通亀裂が生じるケースも出ている。行田大橋では、よりシリアスな損傷といえるデッキプレート貫通亀裂こそないものの、各種溶接部に亀裂が生じており、過年度にストップホールや再溶接などの補修を行ったものの、亀裂の進展が確認されたことから、今回鋼床版使用部全面をSFRC+CFRPグリッドで補強するものだ。埼玉県が所管する鋼床版橋でSFRCを上面に打設して補強するのは初めて。(井手迫瑞樹)

行田大橋の橋梁台帳および概要図(埼玉県提供、以下注釈なきは同)


 同橋は、2017年に2期線が供用されており、現在は4車線化されている。4車線化される前年の2015年(平成27年)の24時間交通量は31,784台に達し大型車混入率は25.0%だった。1994年に主桁ウエブ直上の舗装ひび割れを防止するために補強リブを設置していたが、2007年に定期点検で亀裂が発見された。さらに11、13年の定期点検ではその亀裂が進展していた(右表)。舗装修繕のため12年にグースアスファルト基層からの全面打替を実施したが、15年にさらに亀裂の進展が確認されたため、SFRCを検討した。その時は後述するように50mmのSFRC+30mmの表層舗装でなく、2期線の供用と合わせて80mm厚のSFRCを打設し、その上に滑り止めを施す計画であった。想定工期は3ヵ月と長いものの、「2期線供用直後の計画のため可能であった」(同事務所)。しかし諸般の事情で舗装工事が発注できず、4車線供用中の現在では長期にわたる対面通行規制が困難であることから、約1か月で施工を終えることができる2層構造を採用した。


補強一般図/鋼繊維補強コンクリート仕様

 今回は、2期線を対面交通規制し、1期線を全面通行止めして鋼床版上の補強を行っている(右写真、井手迫瑞樹撮影)。補強範囲は橋長295.2mの内、3径間連続鋼床版箱桁部の217(62+93+62)m。有効幅員9.25m中、車道部の7.25mの幅を補強する。総面積は1580㎡におよぶが、2車線・217mを幅員方向に1回当たり1車線(約3.6m)、橋軸方向に約110m、約395㎡ずつ4回に分けて施工していく。(元請の小川工業)。

 施工手順は、まず1車線ごとに切削機とバックホウ及び人力で既設舗装版を撤去する。次いで長期の天気予報をにらみながら、施工する箇所の床版上面について、防水層剥がしやショットブラストによる表面研掃を行う。ショットブラストは付着性を考慮して1種ケレン相当の素地にするため、投射密度は300kg/㎡とした。次いで防錆材を塗布し、防錆材の効果がもつ1週間以内にSFRCを打設しなくてはならない。CFRPはあくまでも負の曲げ応力が働く位置(今回は追い越し車線)に配置した。

切削機とバックホウなどによる舗装切削状況

ショットブラストの施工状況

研掃後は防錆プライマーを塗布する

 SFRC打設に際しては、まず鋼床版上面にエポキシ系コンクリート接着剤を塗布し、次いでモービル車で製造されたジェットコンクリートを作業員の負担軽減のため採用した。敷き均しはSFRC専用の打設機械を用いている。

エポキシ系コンクリート接着剤を塗布し(左)(左右とも井手迫瑞樹撮影)
ホイール式バックホウでジェットコンクリートを所定の位置まで運び、荷卸しする工程を繰り返す(右)

CFRPグリッドの配置状況/コンクリート敷き均し状況

 打設機械は打設上面を均等に均すロータリースプレッダー、と締め固めて仕上げるコンクリートフィニッシャ、その後の仕上げを行うための作業台車、さらに養生シートを敷設するための養生台車からなるが、今回はこれらを「分離しつつ小型化した打設機械」(一次下請の前田道路)を採用した。打設機械を支える車輪ないしキャタピラは、橋梁の路面構成上、片側の足を地覆上、もう片側の足を床版上に置くアンバランスな配置を採用せざるを得ない(写真)。取材時は歩道側地覆に片側の足を置いているが、追越車線側は中央分離帯の地覆に足を置かねばならない、「そのための段取り替えを考えると、各部材がより軽量な分離型を採用することにメリットがあった」(同)。アンバランスな構造であることから、事前にレベリングを確保できるか試験施工した上で採用している。


ロータリースプレッダー(井手迫瑞樹撮影)/コンクリートフィニッシャによる締固め


養生台車及び作業台車(井手迫瑞樹撮影)

 SFRCは3時間程度で硬化する超速硬コンクリート(3時間で24N/㎡以上の強度)に㎡当たり100㎏の鋼繊維を混入している。同橋は縦断の最大勾配が5%あることから、スランプ管理を慎重に行っている。また、コンクリート養生は「より水分が逸散せず養生効果の高いポリエステル製の養生シートを採用した」(元請の小川工業)。

鋼繊維(井手迫瑞樹撮影)

 隣接するコンクリート打ち継ぎ目は垂直面にもエポキシ系コンクリート接着剤を塗布することで、コンクリートの付着性能を高め、打ち継ぎ目からの劣化を抑止する。


 防水層及び表層は、塗膜防水及び舗装(改質Ⅲ型WF)を施工する。SFRC上面にアスファルト防水層を施工した後、全幅員をアスファルトフィニッシャ2台配置するホットジョイント工法で舗設を行う。「合材温度が高温の内に連続して舗設するためコールドジョイントが発生せず、シームレスな施工ができ、上面からの水の浸入を抑制する。」(前田道路)。


アスファルトフィニッシャ2台配置するホットジョイント工法で舗設

 設計は玉野総合コンサルタント、元請は小川工業㈱、一次下請は㈱富士見道路、前田道路㈱、二次下請は東京コンクリート技研㈱、埼玉ニチレキ㈱、㈱フタミ、㈱松橋工務店。

(2020年11月16日掲載)