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来年3月の国道325号復旧後は戸下大橋の本復旧を施工

熊本地震から4年半 新しい阿蘇大橋の中央径間が閉合

 国土交通省九州地方整備局熊本復興事務所は、2016年4月の熊本地震で崩落した阿蘇大橋の架け替えを進めているが、54ブロックに上る上部工のワーゲン架設を進め、9月14日に中央径間の閉合(剛結)を完了した。既に側径間部分の桁架設は完了しており、今後は渡河部橋梁のPCケーブルの設置・緊張などを進めて行き、橋面工事や舗装工などを仕上げ、国道325号不通区間の来年3月供用を目指す。


知見を活用し維持管理や早期機能回復のしやすさを追求

 沓交換用ジャッキ設置スペースや特殊高所技術用インサートを配置

 架け替え中の阿蘇大橋は、アプローチ部が鋼3径間連続鈑桁橋(橋長115m)+鋼単純箱桁橋(橋長65m)。今回剛結した渡河部は橋長345mのPC3径間連続ラーメン箱桁橋で、最大支間長は165m(PR2~PR3間)となっている。元の阿蘇大橋と比べて、黒川を600mほど下流に下った位置に架け替えられている。アプローチ部も含めると崩落した旧阿蘇大橋よりも300mほど長い橋長となっている。橋梁形式は複数の形式を比較したが、崩落を免れた阿蘇長陽大橋の形式などを考慮し、PCラーメン箱桁形式が採用された。詳細はリンク()参照。

新しい阿蘇大橋の諸元(国土交通省九州地方整備局熊本復興事務所提供、以下注釈なきは同)

 9月14日に行われた閉合式は、打設コンクリートの最後の締固めや均しなどが地元の小学生によって施工され、記念写真も撮影された。

地元の小学生によって施工され、記念写真も撮影された

 同橋は、施工効率化を図るための大規模なインクライン設置、下部工においては、柱状節理の崩壊を防ぐための竹割式土留め工法の採用、帯鉄筋のプレファブ化、クライミングシステムの採用、上部工の超大型ワーゲンを用いた施工など、工期短縮のための工法・材料を多く用いている。

工事着手前状況/PR1橋脚完了状況/PR3橋脚完了状況


PR2橋脚完了状況/
中央部-A2間橋桁完了

中央径間閉合状況

 加えて、その後の点検に資するための様々な工夫も施している。P3~PR1間の斜面に架設のベント基礎を残置し、上部構造のずれを復旧するための応急工事や地盤の変状を調査するための起点として活用する。また、支承交換のためのジャッキ設置スペースを橋座面に配置し、支承交換を容易にした。地震時を想定して一定の桁の横ずれ量を考慮した横梁を設計している。RC橋脚頂部横梁の鉄筋間隔を広くして、桁がずれた場合の応急仮設支承の設置をやりやすくしている。

 一方、阿蘇長陽大橋で、緊急点検の際に役立った特殊高所技術を活用するため、橋脚点検に必要なインサートを先施工で全周に40本ほど事前に設けた。通常はプラスチック製の詰め栓で閉めておき、地震などの有事の際は削孔することなく、橋脚周囲の移動のために必要な特殊高所技術上の中間点を設けることができる。


(左)発災直後の阿蘇長陽大橋の特殊高所技術による調査(特殊高所技術提供)
(右)新しい阿蘇大橋では特殊高所技術夜橋脚点検に必要なインサートを先施工で全周に事前配置した

改めてふるさと阿蘇の美しさを感じた

 地形・気象等、施工条件が厳しいなか24時間体制で施工

 同事務所の大榎謙所長は閉合を迎えて、「晴天の下で無事、中央閉合を終え、新しい阿蘇大橋の橋桁が1つに繋がりました。最終ブロックのコンクリート打設を手伝って頂いた地元小学校の生徒さんからは「ひとつひとつが人の手でできていることに感動した」、「完成したら家族と渡りたい」、「(橋から見た景色を見て)改めてふるさと阿蘇の美しさを感じた」等の心温まるコメントを頂きました。地形・気象等、施工条件が厳しいなか24時間体制で施工が進められてきたわけですが、工事が予定通り進んでいることは工事関係者の方々の不断の努力と、関係各位のご理解・ご協力の賜物に他なりません。本当に感謝の念に堪えません。本橋は令和3年(2021年)3月頃の供用を予定していますが、引き続き、1日でも早く皆さんに利用していただけるよう職員一同全力で頑張ってまいります」と述べた。

 また、大成・IHIインフラ・八方JVの長尾賢二現場代理人は本NETの取材に対し「本工事は熊本震災からの復興事業の中でも事業全体の工程を左右し兼ねない難工事である。苦労したことは気象条件の厳しい環境の中、架橋地点が外輪山の入り口に位置し急峻な地形に沿って吹き抜ける強風が通年に渡りクレーンによる資材揚重作業に影響を及ぼしサイクル工程を確保するためには24時間の施工体制を余儀なくされる状況となり、そのための要員調達として全国各地から専門のプロフェッショナルを集結させ全体工程のクリティカルパスであるPR2橋脚の施工を予定通り完成することができた」と話していた。


新しい阿蘇大橋の供用後は戸下大橋を本復旧へ

 新しい阿蘇大橋の供用後は、同橋を含む国道325号線に交通を流し、一旦、現在の阿蘇長陽大橋を含む南阿蘇村道栃の木~立野線を通行止めし、仮復旧している戸下大橋のP4~P6部の本復旧工事を行う予定。上部工形式はP4~P5が桁長9.97mの単純プレテンホロー桁、P5~P6が桁長19.93mの単純プレテンT桁。P5~P6については山側に橋脚と深礎杭を1本増設する。

P4~P6部の本復旧設計

戸下大橋の崩落状況/仮復旧施工状況(井手迫瑞樹撮影)

戸下大橋仮復旧(写真奥)
(2020年9月24日掲載)