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予想外の飛来塩分の到達で腐食が進む

NEXCO西日本 耐候性鋼材が損傷した飯牟礼橋の補修検討

 西日本高速道路九州支社鹿児島高速道路事務所が所管する南九州道飯牟礼橋の補修工事が進んでいる。同橋は市来IC~伊集院IC間の日置市伊集院町飯牟礼の谷を越える個所に架かる橋長365mの鋼4径間連続(箱+トラス桁)橋で谷間を通過する3径間がトラス、県道を跨ぐ1径間が箱桁となっている。そして耐候性鋼材を裸仕様で採用しており、これが北側の下弦材を中心に悪性錆や層状錆、最もひどい個所では孔食が生じており、現在、トラス桁の2径間(P2~A2)の損傷部約3,000㎡について、錆や塩分の除去及び防食を模索している。今後の耐候性鋼材の防食方法について大きな示唆となる現場を取材したものをまとめた。(井手迫瑞樹)

 飯牟礼橋は、東シナ海より直線距離で5㎞以上離れており、一般的に飛来塩分の影響は少ないと判断されることから、耐候性鋼材が採用されている。


北側/および南側から見た飯牟礼橋

 2009年に詳細点検で腐食を確認し、12~14年にドライガーゼ法(JIS Z 2382)で調査したところ年間を通して耐候性鋼材の使用限界値である0.05mddをはるかに超える値が検出(13年検出値は北側で0.05~1.32mdd、南側でも最大0.3mdd)された。凍結防止剤も散布されているが、「散布回数と比例しておらず凍結防止剤の影響度は低く、海からの飛来塩分の影響が大きい」(西日本高速道路)としている。これは同橋が南北にある谷間に沿って、風に乗り、飛来塩分が到達しやすい地形にあるためと考えられる。北側の損傷が南側より卓越しているのは、北側の飛来塩分が単純に多いことや、日照時間が少なく湿潤状態が長く続くことがその原因として考えられる。


腐食マップ(2012年調査、NEXCO西日本提供、以下注釈なきは同)

 さて、さらに詳しく損傷状況を確認すると、損傷は下弦材下面や下弦材と斜材の格点部や添接部、斜材の一部、そして下弦材の上側の穿ったような損傷に大別できる。それ以外の例えば上弦材には損傷は見られず補修の必要もない。これは降雨による洗浄効果が働いているものと思われる。洗浄効果が働かない下弦材下面は損傷が著しく、塩がたまりやすく流れにくい格点部や添接部も損傷が大きい。また弾着痕のような下弦材上面の損傷は、床版の水抜き穴から滴下した凍結防止剤や塩分交じりの水が長い期間でこうした損傷を作った可能性が大きい。斜材の損傷は上から伝う水の筋に損傷が出ていた。格点部付近のひどい個所は層状錆にとどまらず、孔食が起きている個所も視認できた。北側の下弦材や格点部付近においては、著しく減肉が生じている区間もあった(区間最大で4.6㎜)。



層状錆の状況

弾着痕のような下弦材上面の損傷(井手迫瑞樹撮影)

断面が少し欠損した状況(いずれも井手迫瑞樹撮影)

 補修は、基本的にブラスト及び塗装、必要な個所は当て板を施す方針である。そこで必要なのは単純にアンカーパターンをつけるだけではなく、塩分を50㎎/㎡未満に抑えることを目標としている。そのため現在はブラスト方法やその量、回数について試験施工している。


 試験施工内容は、まずジェットタガネで大きな錆を落とす。次いで一次ブラストをフェロニッケルスラグまたはアルミナ系の小粒径研掃材を用いて行い、表面および深い腐食を除錆する。次いで水洗いを施し、塩分が50㎎/㎡未満に落ちているかどうかを念入りに確認したうえで、二次ブラスト(アルミナ系仕上げブラスト)でアンカーパターンをつけ、塗装を施す。塗装は基本的に重防食塗装系を採用するが、下地に付着塩分の影響を抑制する塗料を塗布することも検討している。
 特徴的なのは、ブラスト量だ。今回取材した際でも、吐出量は通常の数倍の250㎏/㎡を2回に分けて施工していた。これでも二次腐食(一次ブラストを行った後に見つかった深い腐食)およびそこに溜まっている塩分を掻き出せているかどうかは分からない。現状では1回だが、「錆に含まれている塩分を除去するためにもブラストの回数は増やさざるを得ないのではないか」(西日本高速道路)と研掃材の種類等について検討している。


粗錆除去状況


 仕上げブラストは通常の防食塗装と同様にSa2.5~3の素地調整を行う。その際は湿度養生と外来及びブラスト時に舞う塩分の絶対量を減らし、下地品質を向上させるため、長さ5m、高さ1.7~1.8mの囲いで覆った上で施工していた。1回当たりの施工範囲は相当に限定されるため、人手を多く突っ込む必要がありそうだ。


長さ5m、高さ1.7~1.8mの囲いで覆った上で仕上げブラストを施工し、下地塗装を塗布する
(井手迫瑞樹撮影)


遠方からも格点部の狭い範囲を囲っていることが分かる。足場はクイックデッキを採用した
(井手迫瑞樹撮影)

 格点部など狭い個所の錆除去や塩分除却を目的としたレーザーにも注目している。「室内試験の結果は良好と聞いているが、課題は、施工方法と施工能力」(西日本高速道路)。「レーザー処理による腐食孔底の除錆・除塩の効果を十分に得るためには、レーザー処理前に厚さび層を十分に除去するなどの前処理が求められる。また、レーザーを照射することで本体が入熱されるため、施工手順を明確にしておかないと、本体に悪影響を及ぼすこともあり得る。そのため、室内試験結果を基に作業手順書を作成した上で、施工する必要がある。また、レーザー装置が何台確保できるか注視していく」(同)と今後も検討を進めていく方針だ。

 足場は、先行床施工式フロア型システム吊足場「クイックデッキ」(日綜産業)を採用し、広い施工空間と安全な足場仮設を実現している。


 元請は富士技建、一次下請は磯部塗装、二次下請は極東メタリコンなど。九州大学の貝沼重信准教授などが、技術的な助言を行っている。工期は2019年7月1日~21年3月31日まで。(2020年4月9日掲載)