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国道36号と恵庭バイパスと交差 斜角は28°~29°

NEXCO東日本 道央道桜森橋ロッキングピアで基礎も含む下部工補強

公開日:2019.12.18

 NEXCO東日本は、北海道恵庭市の国道36号恵庭バイパスと斜めに交わる箇所に架かる道央道桜森橋の耐震補強を進めている。同橋は国道の上下線の間にロッキングピアが配置された橋長60.05mの鋼2径間連続非合成鈑桁(5主桁)橋で、上下線に分離斜角は28~29°と非常に小さい橋梁である。耐震性能を照査した結果、RC巻立てによる橋脚補強だけでなく基礎を補強する必要があると判断された。その現場を取材した。(井手迫瑞樹)


斜角のきつい現場

基礎補強の考え方 ヤード幅は8m、余裕幅は3m
 小径(φ216.3mm)のマイクロパイルを採用

 ロッキング橋脚は、単独では自立できない構造であり、地震により想定以上の変位が生ずると落橋に至る可能性が大きい。そのためロッキング橋脚の耐震補強は、RC巻立てによる壁化とし、単独で自立可能な構造とすることを基本としている。しかし桜森橋のP1橋脚は、既設杭が1列の千鳥配置となっており、レベル2地震時の照査結果において、杭のせん断耐力が不足となったことから、基礎の補強が必要となった。しかし基礎の補強においては、ヤード幅は8mしかなく、橋脚の壁部と防護柵の間は実に3mの余裕しかない。その中に入る重機で必要な耐震補強をしなければならない。そのため、基礎の補強杭には小径(φ216.3mm)のマイクロパイルを採用した。補強杭の本数は上り線側が40本、下り線側が34本としている。マイクロパイルを使用することで、フーチング規模も幅1,000mmに抑えることができた。上り線は土被りが浅く、フーチング上部に400㎜の増厚が行えないことから、杭の本数が多くなっている。


同橋全体一般図/耐震補強構造一般図(P1)

基礎の施工 歩道を削って車線をシフト
 空頭に配慮しSTマイクロパイル工法を採用

 基礎補強に当たっては、施工ヤードを確保するために、まず国道の両側に設置されている歩道を500mm縮小し、車線を歩道側にシフトさせ、防護柵を設置した。次いで補強部上の舗装を剥ぎ、国道36号側に影響を与えないよう、鋼矢板を使って土留しながら幅2.5ⅿ、深さ3m掘削した。


土留め工の施工

 マイクロパイルは杭長7mほどが必要であったが、上部に桜森橋があるため、空頭に制限がある。そのため狭いヤード内に重機を収められ、空頭制限下でも施工可能なSTマイクロパイル工法(タイプⅠ)を採用した。2m長の鋼管杭を回転削孔方式で打設していき、鋼管杭間はねじ式継手で繋げていった。


マイクロパイル施工前の状況/非常に狭く空頭がない中での施工を要求された

マイクロパイルの施工状況/施工完了状況

フーチングの床掘/杭頭処理

 フーチングはマイクロパイルの杭頭を処理した後、鉄筋を組んで、コンクリートを打設した。打設に当たっては狭いヤード内でポンプ車は使えないため、定置式のコンクリートポンプを用いた。コンクリートはスランプ15㎝の膨張剤入り普通コンクリートを採用した。


フーチング部のコンクリート打設状況

橋脚補強 受台部はPCM、脚本体はRC+炭素繊維
 アンカーはセメフォースアンカーを仕様

 次に橋脚の施工である。足場で全体を覆った後、既設の受台壁部をWJで表面処理し、PCMで断面修復した。橋脚本体の補強はRC巻立て+炭素繊維シート補強を用いた。下沓のカバープレートを外してロッキングピアも含めて鋼材部分を3種ケレンし、アンカー筋を削孔した後、鉄筋、型枠、アンカーを設置(ここではセメフォースアンカーを用いたした上で、鉄筋を組み、ピア高3.71mのうち、3.2mの高さまでコンクリートを一括打設した。ここでの特徴は受台幅と同じ幅で立ち上げたこと。「本来は250mm増厚するが、国道の道路幅を考えると、地上に出る部分を横に増やすことはできない。しかし、RC補強だけではせん断耐力が不足してしまう。それを補うために炭素繊維シートで受台全高+900mmの高さを補強した」(NEXCO東日本)。炭素繊維シートは200g+300g目付の2層貼りで東レの「トレカクロス」を用いている。


受台壁部のはつり出し/PCMによる断面修復

RC巻立て補強(配筋/型枠を設置して打設)

RC巻立て補強(施工完了状況)/炭素繊維シート貼付け補強

補強が完了したP1橋脚

支承はゴム支承へ取替
 施工時期は毎年4~11月の7カ月間に限定

 現場は11月末で一回施工を完了し、開放している。次は来年4月ごろの雪解けを待って、今回と同様に中央部の規制を行い、残る上沓のゴム支承(固定はFxSB、可動HiPS)への取替と、上端部分のコンクリート巻き立て補強を行う。施工は仮設ベントおよび吊足場を組み、桁をジャッキで仮受して現在の上沓への荷重を開放した後、切断・撤去して新しい支承へ取り替える。新しいゴム支承の沓高は176mm。これを長さ490mmのアンカーで支え、その周囲に直下のRC巻立てと同じ厚さのコンクリートを打設して支承部は完成となる。なお、路面から4m以上の高さにある部分のコンクリート部は表面にコンクリート片剥落防止工を施工する。ここではレジテクトRTワンガード工法を用いる予定だ。


今後は上沓のゴム支承への交換、上端付近のRC巻立て補強などを行っていく

 また、両橋台も300mm縁端拡幅し、支承を橋脚と同様ゴム支承に取替える。取替えに当たっては橋軸直角方向に配置している横移動拘束用のコンクリートブロックなどをワイヤーソーで撤去し、コンクリート部分をはつった後に拡幅および沓交換しなければならないため、「骨の折れる工事になる」(元請のドーピー建設工業)。

 これらの施工は全て毎年4~11月の7カ月間で施工しなくてはならず、さらに本工事は他3橋のロッキングピアの補強も同時に行っており、各工程が干渉しない様に上手く回す必要があった。国道36号恵庭バイパスの交通量も激しい、ヤード幅も狭く、フーチングの型枠組みの際は人が一人入れるかどうかの状態だった。マイクロパイルの施工の際には道路側に飛散しないようにシート養生を綿密に行うなど、施工、工期、環境面共に気を遣っている。
 元請はドーピー建設工業、一次下請はサンキット・エーイー(補修)、日本基礎技術(基礎)、日吉建設(構造物・土工)。(2019年12月18日掲載)

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