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5%勾配のある現場でも適用可能

大成建設など3社 UHPFRCを用いた既設RC床版上面増厚工法を開発

公開日:2019.12.12

 大成建設は、大成ロテック、太平洋セメントと共同で、UHPFRC(超高性能繊維補強セメント系複合材料)を用いた既設RC床版上面増厚工法の開発を進めている。UHPFRCは、コンクリート床版の上面増厚に従来用いられているSFRCと比べて、ひび割れが発生しにくく、ひび割れが発生しても内部に混入している短繊維の架橋効果によりひび割れ幅が小さく(最大でも0.06mm程度)、水が浸透しにくいことが特徴だ。圧縮強度は150N/mm2、ひび割れ発生強度は8.2N/mm2、ヤング係数は50.3kN/mm2(いずれも28日経過時)を有しており、より緻密な補強層を構成できる。(ひび割れ開閉や土砂化現象などによる)防水層への負荷も生じにくく、「長期耐久性に優れた上面増厚補強を提供できる」(同社)としている。同社は今後2年を目途に同工法の現場への適用を図る。(井手迫瑞樹)



UHPFRCの適用メリット(上記XYグラフは『内田裕市:繊維補強コンクリート構造物の設計技術の現状と課題,コンクリート工学,Vol.50,No.5,pp.468-472,2012』から引用及び加筆)

3つの課題に対応 フロー値を小さく設定することで勾配でも適用可能
 ミキサーは据置型 フィニッシャも一部改良

 性能的には優れたUHPFRCであるが、現場への適用性については3つの課題があった。①セルフレベリング性を有する材料であることが特質のUHPFRCが、様々な勾配を有する既設橋の床版へ施工できるか、②モービル車やフィニッシャ等の汎用機械による施工が可能か、③既設床版との一体性を確保できるか、である。

 ①については、低流動タイプで早期の強度発現性を高めた配合を選定(材齢24hで49N/mm2、28日で159N/mm2)し、フロー値を140~180mmと小さく設定することで、5%勾配でも適用可能にした。

 ②については、まずミキサーを据置型とした。UHPFRCはSFRCに比べて粉体量が多い配合であり、練混ぜに時間がかかるためだ。SFRC用に用いられるモービル車では時間内製造が難しいと判断した。さらに、UHPFRC対応のモバイルプラントの開発を進め、単位時間あたりの施工能力を高めることで大規模な修繕工事にも適用可能とする予定だ。練り上げたUHPFRCは、ホイールローダーを用いて小分けに運搬され、コンクリートフィニッシャで敷均し、締固めを行いビニールシート等で養生する。敷均し・養生作業は粘性が高い材料に配慮して、バイブレータを高周波の仕様に変更するなど、一部改良したフィニッシャを用いている。

界面は湿潤面あるいは全面接着剤塗布面で付着強度満たす

 ③については、長さ18m、幅3mの模擬床版を作り、下図のように乾燥面、湿潤面、接着剤を額縁状に塗布した面、接着剤を全面塗布した面の4つに分けてUHPFRCを40mm増厚した供試体を用いて試験施工することにより確認した。その結果、乾燥面においては、多くの個所で浮きが生じ、引張強度(規格値1N/mm2)も満たしていないことが分かった。これは接着剤を額縁状に塗布した面の接着剤無塗布部でも同様の傾向を生じた。一方で、湿潤部、接着剤全面塗布部ではいずれも付着強度の規格値を満たしており、接着剤全面塗布部においては、端部での剥がれも生じておらず、打継面が一体化していることが確認された。平坦性もここでは下り2%勾配で試験したが、下り勾配側へのコンクリートのダレは生じていなかった。

施工実験概要



実験ヤード状況


平坦性計測方法および結果

エリアごとの母材との接着状況

 今後はより現場に近い条件で試験を行うとともに、実現場への試験施工を図っていく方針だ。(2019年12月12日掲載)

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