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桁および梁の仕口合わせに万全を期す

NEXCO中日本 名古屋西JCTのランプ橋桁と門型橋脚を架設

公開日:2019.08.22

P15・P28門型橋脚架設
 6月13日夜から14日未明にかけては、国道302号の島井交差点~服部一丁目交差点間の約1kmを22時から通行止めにして、P15とP28の門型橋脚の同時架設を行った。P15は名二環本線とB・Cランプ橋の桁が載る橋脚で、P28は本線と名古屋西JCT南IC(仮称)のON/OFFランプ橋の桁が載る橋脚だ。


P15橋脚とP28橋脚の位置図(NEXCO中日本提供、橋脚位置は編集部で加工)

① P15橋脚架設
 島井公園東交差点近く位置するP15橋脚は、中央分離帯が狭く中柱がないために、移動多軸台車を用いての一括架設となった。架設橋脚は、橋軸直角方向約50m×橋軸方向約3mで、鋼重は274t。


P15橋脚構造一般図(NEXCO中日本提供)

 移動多軸台車は1軸4輪の12軸台車を左右に2台配置し、台車上には上下架台とストローク高2,100mmの150tユニットジャッキ4基を設置した。移動多軸台車の最大積載荷重は約1,000t(1軸約42t×24軸)であるが安定した施工をするためには設備能力に余裕が必要となることから、橋脚と台車上設備の総重量約427トンの半分以下に抑制している。さらに、「台車の安定計算、台車上設備を設置するスペースも考慮して移動多軸台車の仕様を決定した」(JFE・IHI・横河JV)という。
 国道302号脇(南進側)の地組ヤードで橋脚を移動多軸台車に搭載後、架設当日昼間に約5m国道側に移動して夜間の架設に備えている。22時に通行止め作業を開始し、30分後に国道302号(南進)の通行止めが完了してから中央分離帯および国道東側の仮設防護柵を撤去し、移動多軸台車の荷重分散と不陸調整のために厚さ約22mmの敷鉄板と、タイヤの緩衝材としてのゴムマットを国道上に設置した。


国道進入前の架設橋脚/国道に鉄板とゴムマットを敷設

 23時に国道302号(北進)の通行止めが完了し、移動多軸台車が移動を開始。まず45°半時計回りに旋回し、安全確認後にさらに45°の旋回を行った。その後、2m前進して、15分後に架設位置に到達している。旋回時を含めた移動速度は、分速約16.6mだった。


架設ステップ(NEXCO中日本提供)


合計90°の旋回後、前進して架設位置に到達した

 その後、位置調整を行い、23時30分ごろから約1mのジャッキダウンを開始して、慎重に仕口を合わせていったが、今回の架設で最も難しかったのが、この仕口合わせだ。

溶接の縮み代を計測して柱の据付位置を事前に調整
 仕口が合わない場合に備えてジャッキ設備を用意

 橋脚(梁)が橋軸直角方向約50mと長く温度による梁の伸縮がある上に、門型柱のために両方の柱の仕口を完全に一致させなければならなかった。調整代がまったくなく、柱が少しでもねじれると角度が合わなくなる問題もあった。
 これに対してふたつの対策を講じた。ひとつは、「地組時に梁の長さと溶接の縮み代を綿密に計測して、夜間架設時の温度を想定して柱の据付位置を事前に調整した」(同)ことだ。さらに、「架設時に万が一、仕口が合わないことを想定して、下の柱を動かして仕口調整ができるジャッキ設備を設置した」(同)。100tジャッキ2台を西側の下柱に設置して、設計上で約10mm東側に押せるようしたのだ。
 梁の伸縮量は計測時に温度差により最大約10mmとなることもあったが、架設当日はジャッキ設備を使うことなく完璧に仕口を合わせることができた。


慎重に仕口を合わせていった

 架設橋脚と下柱は架設後に溶接で接合するため、架設時にはエレクションピースを挿入している。エレクションピースは1リブあたり13本以上でレベル2地震動に対応できるが、安全のために東側(L柱)、西側(R柱)ともにすべてボルト接合を行った。接合したボルトの本数は、それぞれ224本だった。さらに、二重の安全対策として、ベントに受け替えを行い、ラッシングを行った。


仕口調整完了後、ボルト接合を行った

ベントへの受け替え

 1時すぎには、移動多軸台車の荷重を開放し、梁部のタッチアップ後、2時ごろに移動多軸台車が退出した。


移動多軸台車の退出

架設完了

② P28橋脚架設
 P28橋脚は、名古屋西JCTの南側に位置する服部高架橋(橋長541m、鋼4径間連続非合成鈑桁橋×3連)の最南端にある橋脚で、服部一丁目交差点の北側に位置する。P28橋脚では、中柱が構築済みのため、左右の梁を分割架設した。R梁(西側)は橋軸直方向約15mで鋼重約59t(架設重量70t)、L梁(東側)は橋軸直角方向約18mで鋼重約68t(架設重量78t)だった。


P28橋脚構造一般図(NEXCO中日本提供)

550tクレーンと400tクレーンを用いて分割架設

 国道302号の通行止め後、まずR梁から550tオールテレーンクレーンを用いて架設した。23時ごろに吊上げを開始、作業半径17.9mで反時計回りに旋回して、架設位置に到達後、仕口調整を行い、23時30分ごろからR柱部と中梁部にエレクションピースを挿入していった。R柱部は112本、中梁部は124本のボルト接合を行い、1時20分ごろに完了している。


P28橋脚架設計画図(NEXCO中日本提供)/架設前

R梁の架設

 L梁は400tオールテレーンクレーンを用いて、23時50分ごろに吊上げを開始。作業半径は11.4mで時計回りに旋回して架設位置に到達させた。0時20分ごろからはL柱部と中梁部にエレクションピースの挿入に着手し、L柱部は112本、中梁部は124本を1時50分ごろに完了させた。


L梁の架設

架設完了(NEXCO中日本提供)

 P15およびP28橋脚の架設が完了したことから、4時すぎには通行止め解除作業を開始して、5時には通行止めを解除した。

 C-2ランプ橋(J11~J13)架設の施工は、JFEエンジニアリングIHIインフラシステム横河ブリッジJV。協力会社は、長谷川建設(架設)、アイチ建運(クレーン)など。P15橋脚架設の施工は、JFEエンジニアリング・IHIインフラシステム・横河ブリッジJV。協力会社は、ミック(移動多軸台車・架設)など。P28橋脚架設の施工は、川田工業。協力会社は、長谷川建設、アイチ建運(クレーン)など。
(2018年8月22日掲載 大柴功治)

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