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PCケーブル制振ワイヤの抜本的な改良、塩害対策

日本初の本格的なPC斜張橋「呼子大橋」の補修補強

 国土交通省九州地方整備局佐賀国道事務所は、唐津市が所管する呼子大橋の直轄診断・修繕代行を実施している。同橋は、日本が建設した初の本格的なPC斜張橋で、平成元年4月に開通し、呼子町内の離島である加部島と本土を結んでいる。しかし、斜張橋のケーブルの振動抑制として実施した、斜張橋主ケーブルの風雨などによる振動を抑制するため、主ケーブル間を横断する形で付けられた制振ワイヤが度々破断していたことやそれに伴う影響で主桁などにひび割れが生じる懸念があることから、抜本的な改善およびその他の修繕工事を行っているものだ。現地を取材した。(井手迫瑞樹)


 直轄診断

 同橋は、橋長727.85m、幅員10.90mの斜張橋形式を伴うPC箱桁橋である。詳細には、A1~P5側の弁天島に至る5径間がPC3+2径間連続のPC連続ラーメン箱桁橋(233.6m)、弁天橋から加部島に至る、漁船などの主航路を阻害しないために径間長を長くとる必要があった区間(P5~A2)がPC3径間連続斜張橋(494.25m)となっている。同橋の斜張橋形式はサスペンデット・マルチケーブル方式を採用している。エスイーがフランスで学んだ技術を初めて本邦で採用したもので、海面高から約100m(桁からの高さは約55m)のコンクリート製主塔、250m(主塔間)のスパンとも全て当時としては画期的なものであり、この技術が発展したものが、矢部川大橋(有明海沿岸道路)や鷹島肥前大橋(佐賀県と長崎県の県境部、両県の合併施工)などに使われている。


呼子大橋の側面、平面図および斜張橋部断面図(国土交通省九州地方整備局提供、以下注釈なきは同)

冬の呼子大橋(井手迫瑞樹撮影)

 今回の直轄診断では、主要部位・部材に対して、橋梁点検車および高所作業車を用いて目視点検を行った。制振ワイヤの破断は、供用後度々みられ、同じ個所で損傷が生じている場合もあった。長大な主径間全てを細部にわたり調査することは合理的ではないため、点検対象はある程度絞った。ケーブル振動自体は、建設時に記録があるが、供用後の調査では報告が無く、実態が不明だった。そのため斜材ケーブルの振動に着眼し、観測体制を整えたうえで点検を開始した。振動の測定はSIPにおいて開発した小型の無線センサ(MEMS)を活用している。


直轄診断における現地調査状況


 直轄診断の調査の結果

 直轄診断の結果、明らかになったのは、①風によるケーブルの振動が明確に確認されたこと、②上部工主桁にひび割れが発生していたことである。

 ①は並行ケーブル特有のケーブル振動現象であるウェイクギャロッピング(上流側ケーブルの後流(これを「ウェイク」と呼ぶ)の影響によって、下流側ケーブルが大振幅の振動(ギャロッピング)を生起させる現象)が発生し、それを抑制するために設置した制振ワイヤによって分割されたサブスパンにおいて振動の発生(つまり制振ワイヤ取付部を節とする強振動)が確認されたもの。加えて風速20m/s下において降雨によるレインバイブレーションと推定される振動も確認された。


ウェイクギャロッピング/サブスパン振動

 ②では、唐津市で実施した点検調書にないひび割れが、斜張橋部の全長で多数確認された。0.3mmを超える比較的幅の大きなひび割れも発生している。ひび割れは主桁のダイアフラム(橋軸に直角に配置した板状の構造部分)間のウェブ面でブロックの継ぎ目部から発生している。ひび割れは、水平方向へ進展した後、一部のひび割れでは斜め方向に伸びていた。


箱桁内部の代表的なひび割れ


制振ワイヤが所々切れていることが分かる(井手迫瑞樹撮影)

 診断の結果、緊急対応が必要な事態までは至っていないものの、現状の制振対策を繰り返すだけでは、比較的頻繁に生じる風に起因するウェイクギャロッピングやサブスパン振動を抑制する十分な制振性能が得られない可能性があり、ケーブル振動によるコンクリート部材における新たなひび割れの発生や既存ひび割れの進展、斜材ケーブルの損傷など、直接、主構造の健全性の低下に影響を及ぼす可能性がある。同橋がPC構造であることや、塩害が厳しい個所であるなど、当該橋の立地条件を考慮すると健全性および耐久性の確保が懸念されることから、唐津市の要請により、直轄による修繕代行を行った。