道路構造物ジャーナルNET

水尻橋・立沢川橋・蛇王川橋・赤牛川橋・気仙沼湾横断橋P12

仙台河川国道 復旧・復興道路の現場を巡る

公開日:2017.11.16

狭隘化での施工をCIM活用で克服

蛇王川橋
 さらに国道45号を北に進むと南三陸町志津川の蛇王川を渡河する険しい谷に架かる蛇王川橋の建設現場についた。同橋は橋長121m、幅員12.66mのPC2径間連結ラーメン箱桁橋で、縦断勾配は2.5%、横断勾配は-0.63%~2%という構造で、A1側は山側に勾配がついているが、進むと海側に勾配がついていくような、少しS字型の形状となっている。現場は既に桁をかけ終えており、橋面工が進んでいた。IHIインフラ建設が上部工の製作・施工を行っている。


蛇王川橋(既に上部工は連結した状態だった)(井手迫瑞樹撮影)

 同橋でまず特徴的なのは、狭隘な中でクローラークレーンを建て込み、それを用いて脚頭部の配筋や張出施工のための移動作業車の組立をしなくてはいけない点だ。クレーンはクローラーのタワー仕様にして組んだが、組む前にCIMを使ってシミュレートした上で、資材を運ぶための旋回方法や資材の置き場所などを決めて、実際の図面に落とし、クレーンの組立て、施工を行った。


蛇王川橋の移動作業車の組立・解体(IHIインフラ建設提供)

 CIMは脚頭部の配筋をスムーズに行うためにも採用した。脚頭部とPC桁の剛結部分は鉄筋が過密であり、なおかつ少し斜めに拡幅するような形状になっている。そのため配筋作業の手順を明確にし、作業を軽減するためにCIMを用いて3D化し、鉄筋形状や手順を決め、分かりやすくしたもの。


CIMの活用例1(IHIインフラ建設提供)

「原設計は配置している状態での図面であり構造体としては適確であるが図面通りに配置しようとすると鉄筋を入れられない箇所もある」(IHIインフラ建設)ため、検討会議に鉄筋工も含めて検討し、図のような3Dモデリング化し、かつアニメーション化し、作業手順を視覚的に叩き込んだ。また継ぎ手部分などの色を変え、作業を間違えにくくしている。CIMデータは全体的だけでなく局部も拡大して詳細を見ることができる。加えて、安全面の意識も向上させるため、過去の転倒事例や落下事例などの事故をCIMで再現し、現場作業者の注意を促した。


CIMの活用例2(IHIインフラ建設提供)

 脚頭部はコンクリートの打設にも配慮している。打設部位が(4×6×5m)のマスコンクリートなっている。また、打設時期が夏場であったため打ち重ね管理に留意する必要があった。そのため実際のコンクリート打設を想定し、打設直後から120分後まで10分毎に簡易貫入試験(突き棒を上から落とし何cm貫入するか確かめる試験。標準値は12cm)を行った結果、80分を目安に打設間隔を設定し(打設1層を6分割)、実際のコンクリート打設を行った。


コンクリートの打設にも配慮(IHIインフラ建設提供)

 脚頭部の初期ひび割れへの検討も行っている。具体的には①標準養生(メタルフォーム、養生マット、7日間)、②保温養生(型枠保温養生、Qマット、10日間)、③保温養生+膨張材添加(型枠保温養生、Qマット、10日間)についてFEM解析を行った結果、③が最も良い解析結果となったため同手法を採用し、ひび割れがほとんど出ない脚頭部を実現した。コンクリートは耐久性を向上させるため、水セメント比43%以下を採用している。


脚頭部のひび割れ対策検討(IHIインフラ建設提供)

 その他の耐久性向上策としては、桁端および壁高欄の一部へのエポキシ樹脂塗装鉄筋の採用、縦締めPC鋼材への被覆タイプの活用と緊張端部へのプラスチック製グラウトキャップの使用、横締めPC鋼材へのプレグラウト対応、ポリエチレンシースの採用などを行っている。支承はSGめっき+ナイロンコートの2重防食を採用、耐久性を高めている。伸縮装置についても経年劣化を予想して二重止水機能を有しているものを使用している。


支承に採用した二重防食 (IHIインフラ建設提供)

 次に向かったのは津谷川橋。ここはインタビューで多く触れているので割愛するが、何しろ橋台部のスケール感がちょっと異常に見えるほど大きい。海の方向には架け替え中の小泉大橋が眺望できた。上部工架設は11月半ばからスタートする予定だ。


津谷川橋(井手迫瑞樹撮影)

幅員の変化を精密な測量やプレキャストPC部材の製作でカバー

赤牛川橋
 さて、次に向かったのが赤牛川橋である。ここもIHIインフラ建設が製作・施工しており、橋長71.0mの2径間連結PCコンポ橋であるが、幅員が19mから最大24.1mに大きく変化している。そのため架設に使用する門型架設機の主梁が、幅員が広く従来の機材では強度不足であり、また幅員変化に対応する必要があった。それに対して現場では40tガーダーを主梁に使用し、A2橋台の門型架設機組立て時に主梁の組み換えを行い、19mから5m足して24mに変化させて架設を行った。


赤牛川橋の工事概要/P1~A2構造図(IHIインフラ建設提供)

赤牛川橋 幅員の変化が見て取れる(井手迫瑞樹撮影)

上部工着手前(IHIインフラ建設提供)

 また、幅員の変化に伴い、P1-A2間の主桁(7本)を平行ではなく扇形に設置する構造であったため、主桁据え付け位置を1点1点、場所、角度と距離の測量を従来よりも綿密に行い、桁の製作・架設に生かした。架設据え付けの際は、事前ミーティングにおいて協力業者に精度の重要性を強く理解してもらった上で正確に桁を設置した。


プレキャストセグメント桁の製作(IHIインフラ建設提供)

PC版の製作(IHIインフラ建設提供)

セグメント桁の接合(IHIインフラ建設提供)

PCケーブルの組み立て・緊張(IHIインフラ建設提供)

架設準備工/主桁の引き出し・架設(IHIインフラ建設提供)

 桁架設後はプレキャストPC版を配置していくが、これについてもP1-A2間については幅員変化に伴い橋軸直角方向の寸法や角度が変わるため、現場でのとり間違いがないように分かりやすい番号表示を行い施工に臨んだ。


PC版の配置(IHIインフラ建設提供)

連結工(IHIインフラ建設提供)

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