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京都府の耐震補強工事初 詳細設計付補強工事発注

京都府・山家橋 複雑な形状を有する鋼ランガートラス桁の耐震補強

公開日:2017.01.17

 耐震補強
 同橋は鈑桁とトラス桁で構成されている。竣工図はあったが設計計算書はなかったため、当時の設計基準から活荷重を割り出して、図面から設計図を起こすという形で復元設計した。
 それに対して現在の示方書(H24年道示)で耐震性能を満足するかどうか動的解析を行った。動的解析は道示に従いL2相当の地震波を入力して解析した。予備設計段階では動的解析まで行っておらず、地震時保有水平耐力法(保耐法)レベルで解析していたが、ランガーの横桁に鈑桁が載っている構造であるため、詳細設計では鈑桁も含めた全体系で解析している。そのため遊間も全部チェックし、採用した補強工法で桁衝突は起こらないことを確認している。


ランガーの横桁に鈑桁が載っている構造

 今回はトラス桁の耐震補強を行うが、24年道示の耐震設計編で鋼アーチ橋や鋼トラス橋の主要部材については、L2地震動に対して動的解析を実施して最大応答断面力を用いて断面計算し、発生応力が割増係数1.7を考慮した許容応力度以下になっていることを照査する必要がある。


降伏耐力超過径間概略図(青が橋軸直角方向加振時に降伏耐力が超過する径間、赤が同橋軸方向)
(図表は全て京都府提供)


降伏耐力超過率表

 その結果、橋軸方向の加震時においては、トラスの上弦材の両端(最大超過値1.29、以下括弧内数字同)と下弦材の固定端側(1.69)、橋軸直角方向の加震時においては、アーチ上弦材の両端(1.42)、トラス上弦材の両端(1.61)と下弦材の中央(1.01)で降伏耐力の超過が見られた。それに対してダンパー設置案、支承を機能分離支承に変える案や、全超過部を当て板で補強する案などを検討したが、ダンパーを付けるとコストが高くなるし、当て板補強が大きく減るという効果もなかった。また免震支承では桁衝突が起きる可能性が大きく適用はできなかった。全当板補強では、耐震補強がより大規模なものになってしまう可能性があり、最終的には、支承梁の補強、座屈拘束ブレース(横河住金ブリッジ製「SUB」)と当て板補強の複合方式を採用した。なお座屈拘束ブレースの規格は、L1地震動に対しては降伏させず、L2地震時に先行降伏するタイプとして100kNタイプを設置している。


(左)対策前の降伏耐力超過箇所詳細図、(右)座屈拘束ブレース配置後の詳細図
対策後、降伏耐力をなお超過している箇所には当て板補強を行う


 具体的には、座屈拘束ブレースは下弦材の両端側横構に配置する。当て板は上弦材の両端部と下弦材の固定端部に設置している。固定支承であり、そこに力がどうしてもよってしまうため、その応力超過している部分の当て板補強をしている。支承補強は段差防止装置と、ペンデル支承であり沓高が高く、ずれた時に桁の段差が生じないように、高さを保持するため台座を設けている。


座屈拘束ブレース取付前(左)と取付後(右) (京都府提供)

取付状況(左)/端部を塗装して仕上げた状況(右) (京都府提供)

加えて、橋軸および直角方向の変位に備えて、両端部には2方向変位を制限でき、桁の浮きあがりも防止できる耐震装置「パワーストッパー」をP3上に2基、P4上に4基配置している。これらの方針により、当て板補強の量を約17㌧(ランガートラス桁の重量は440㌧強)と大幅かつ、影響の少ない範囲に収めることができた。


パワーストッパーと段差防止工の施工(京都府提供) 

実際の設置状況(京都府提供)

 施工 
 施工上配慮を要する事項は、まず支承補強と座屈拘束ブレースの設置、下横構の取替えの設置である。これらは既設部材を一時切断、撤去しながらの作業が必要だ。とりわけ支承付近は横梁と対傾構がすべて入れ替わる形となる。既存の横梁と対傾構を切断しなくてはならず、一時的に桁の剛性が下がる可能性があるため、仮支材となるH鋼を入れて既設断面と同等かそれ以上の補強を行った状態でできるだけ桁剛性が落ちないようにしながら入れ替えていった。具体的には①上ガセット・対傾構ほかの既設部材を撤去し、②上ガセットブロックの取付・支承部横つなぎ材の撤去を行う、③次に新設補強部材を設置し、④パワーストッパーや段差防止装置を設置する――という工程。
 また、現道の幅員が5.5㍍しかなく、一般車および大型車の供用を阻害しない形で施工していくという流れの中で、取り込みがどうしても小さいクレーン(ユニックないしは10㌧ラフター)でしか作業できない。そのため比較的小さい吊能力に合わせた部材の割り付けの微調整、長さを確認して設計に反映しながら図面を書き、それに基づいて施工を行った。当て板補強については大きく注意を払う必要はないが、桁の剛性を落とさないように配慮しながら全体的な工事を進めた。
 施工に要した人員は元請け2人、鋼部材補修工は5人、塗装工事は2~3人。

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