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締固め時間を長くできブリーディングも少なく高品質な橋脚を建設

有沿道・三池港IC橋P2橋脚で5~6cmの低スランプコンクリートを用いて打設

公開日:2023.01.31

 国土交通省九州地方整備局有明海沿岸国道事務所が建設を進めている有明海沿岸道路、三池港IC連絡路(延長2.7km)の福岡208号三池港IC橋下部工(P2)工事において、スランプを5~6cmに抑えた24-6-20BBのコンクリートで打設し、長期耐久性を向上させる取り組みに挑んでいる。まず、現場条件に最適と思われるスランプ6cmで試験練りを実施し、その後、コンクリート打設前に供試体による締固め試験を実施し、スランプの妥当性、締固め時間、締固め間隔を決定した。配合を工夫し、単位セメント量や単位水量を大きく減らし、締固め時間を最大で通常の10倍程度行うことで、前回工事では透気係数が17箇所平均で0.0012となる結果を残している。今回施工においても非常に緻密で耐久性の高いコンクリート橋脚の建設を目指している。今回実施されていた梁コンクリートの打設人員は24人(締固めに使う棒バイブの数は8本)と一見、生産性向上の観点からは後退しているように見えるが、「現在起きている損傷の多くは初期欠陥に起因するもので、このような品質向上の取り組みにより、それを減らすことで、維持管理に伴う人員の抑制を行うことが出来る。そのようにできるのは打設当日の適切な締固めしかない」(品質向上の指導を行うファインテクノ・平瀬真幸氏 以下(同))としている。その現場を取材した。(井手迫瑞樹)

ひび割れリスクが大きく低減され、コンクリートの耐久性向上に大きく寄与する
 材料分離抵抗性が向上し、締固め時間を長く取り徹底的に締め固めることが可能

 三池港IC橋(仮称)は、三池港ICオンランプ・福岡県道736号三池港線を跨ぐ橋長171mの鋼単純非合成箱桁橋+PC3径間連結コンポ橋で、基礎工形式は場所打杭基礎、橋脚は張出し(T形)式橋脚を採用している。P2橋脚は瀬口組が建設を担当している。P2橋脚は、フーチングの高さ2mで6層、柱部の高さ2.4mで5層、梁部の高さ約2.7mで6層に分けて打設している。



フーチング打設計画図(瀬口組提供)

 さて、同橋脚では設計スランプ12cmの配合を変更し、スランプを5~6cmに抑えた24-6-20BB(膨張材+高性能AE減水剤配合)のコンクリートを採用していることが特徴だ。設計配合に比べて、ひび割れ抑制を目的として膨張材(ハイパーエクスパン)と高性能AE減水剤(チューポールHP-11)を用いることで設計配合24-12-20BBに比べて、単位セメント量を31kg/m3、単位水量を16kg/m3減らしている一方で、細骨材の量を増やして対処している。このように配合を変更することで「ひび割れリスクが大きく低減され、コンクリートの耐久性向上に大きく寄与する」(同)狙いがある。なお、当現場にて昨年7月11日実施した締固め試験において、スランプ6cmとスランプ12cmで各々製作した供試体を比較すると半年後のひび割れ面積(長さ×幅)で数倍の差がでた事を確認し、さらに透気試験を実施し、スランプ6cmが安定して透気係数(KT値)が優位である事も確認している。

 また、セメントおよび水量を少なくすることで「材料分離抵抗性が向上し、振動時間を長く取り徹底的に締め固めることが可能となるので、コンクリート強度と緻密性を確保できるようになり、高品質なコンクリート橋脚を建設できる」(同)。現場からプラント間の時間的距離は5分程度と短く、コンクリートのスランプ確保という点では好条件といえるが、「距離が遠い場合でも詳細な打設計画を作成し周知することでコンクリートのスランプは十分維持できる。また、以前の施工は夏季の打設がほとんどであったが、綿密な打設スケジュールをプラントにお知らせし、生コンの出荷を合わせる事でアジテータ車の待機時間を抑え、スランプロスを最小限にとどめることが可能となり、品質が低下したコンクリートを打設するリスクをほぼ回避できた」(瀬口組)。さらに圧送距離は約30mあるが、取材時のスランプは5cmであったにもかかわらず、生コン車専用のスロープ台を設置しシュートの勾配を大きくすることにより、ポンプ車への供給も支障なく行われており、圧送時のつまりも起きずスムーズに打設できていた。



スランプ状況など(上は瀬口組提供、下は井手迫瑞樹撮影)

生コン車専用のスロープの設置状況(瀬口組提供)

圧送及び打設状況(井手迫瑞樹撮影)

供試体への試験施工状況

(左写真)スランプ6cm110秒バイブレータ 材料分離していない/
(右写真)スランプ12cm150秒バイブレータ 材料分離し骨材が沈降している

意思の統一が必要
 ブリーディング水やエアを確実に抜くため、1層の打設厚+200mmまでバイブをかける

 コンクリート打設時に必要なのは人手と綿密な準備、そして意思の統一である。通常のスランプで打設する場合の2~4倍の人員が必要になり、棒バイブの本数もφ50が8本必要となる。元々、単位水量が少ないことからブリーディングは少なく、湿式掃除機2台で取り切ることが出来、バケツや柄杓で水を掬い出す様な光景はなく、その点において施工効率性は向上しており、施工後の乾燥収縮クラックも少なくなることが前述の試験施工からも予想されている。


大勢の技能者が必要

 施工は意思統一が重要である。「普通とは違う配合、締固め時間。これらが何を目的にして行われているかが分からなければ、余計なことをさせられていると思われ、手を抜きがちになる。そのため、生コンプラントから施工元請、末端の技能者に至るまで、関わる全ての人々に高品質で耐久性の高いコンクリートを作ることの必要性とその効果を伝え、方向性を一つにすることが大事」(同)である。


P2柱部の打設計画

P2柱部及び梁部の打設計画
打設高さがあり締固め不足が懸念される下層はスランプ7.5cmとして不具合が生じないよう配慮した。

 施工時における分かりやすさも追及している。型枠内側の面木にはコンクリートを打設しても鉄筋位置をロストしないように黒い点で示した目印を付けている。配筋間隔は配力筋が100~150mmピッチで、主筋が約120mmピッチ。配力筋の径がφ22mmであるため、配力筋同士の間隔は最小で78mm、主筋は同φ35mmであるため、同85mmとなっている。配筋されている鉄筋のあちこちにはリボンがつけられているが、これはポンプ車から供給される際のコンクリートの自由落下高(1.5m以下)を守ることと、落下した際の材料分離抑制のための圧送ホースを差し込むコンクリートの投入箇所を示している。赤白の繰り返されるラインは棒バイブを挿入する間隔を示す。その間隔の決定は、「着工前に実施したコンクリート締固め試験施工(以下試験施工)の結果から300mmとした。これも通常は500mm程度であることを考えると狭い」(瀬口組)といえる。


赤白の繰り返されるラインは棒バイブを挿入する間隔/鉄筋位置をロストしないように黒い点で示した目印

リボンはコンクリートの投入箇所を示している

フーチングの打設状況

柱部の打設状況

 締固めは、型枠外周の被りコンクリートと橋脚の天端という外部に晒される重要な箇所を長い時間かけて棒バイブで締め固める。コンクリートの1層あたりの打設厚はフーチングが最大400mm、柱および梁部が同500mmであるが、バイブの挿入深さは、1層の打設厚+200mm(つまり直前打設層の200mm)までバイブをかけることにしている。これは「より深く挿入することで取り切れていなかったブリーディング水やエアを抜いてより高品質なコンクリートを形成するため」(同)ということだ。また締固め時間は最外縁の被りコンクリート部分は60秒以上程度(過去の現場と試験施工の結果から決定)、天端部は120秒以上とし特に慎重に締固めを行った、被り以外の内部については、締固め時間は30秒程度としている。


橋脚柱上部及び梁部の施工

かぶり部については特に念入りに締め固めていた

締固め状況のクローズアップ写真

打設完了後の梁部

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