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PC縦締めによる床版接合を北海道支社管内で初採用

NEXCO東日本 札樽道神威橋床版取替工事 床版取替機を用いて施工

公開日:2022.12.21

 東日本高速道路(NEXCO東日本)北海道支社は、札樽自動車道朝里IC~銭函IC間に架かる神威橋(上り線)の床版取替工事を本年8月から10月にかけて実施した。本工事では、施工会社の安藤・間が開発し、本現場が初適用となった床版取替機を用いるとともに、床版接合において同支社管内で初めてPC縦締めを採用した。その現場を取材した。

供用後50年以上が経過
 床版下面にひび割れなどが発生

 神威橋(上り線)は、小樽市道神威線と私道を跨ぐ橋長132.95m(総幅員10.4m)の鋼4径間連続鈑桁橋(3主桁)で、1971年12月の供用から51年が経過している。平面線形はA=350~R=∞のほぼ直線橋で、勾配は縦断方向下り3%、横断方向2.6~2%である。既設RC床版厚は210mmで、これまで増厚などの床版補修・補強は行っていない。


神威橋(NEXCO東日本北海道支社提供。以下、注釈なき場合は同)

 朝里IC~銭函IC間の2021年交通量は約14,000台/日で、大型車混入率は約14%となっている。凍結防止剤は札樽自動車道(延長38.3km)で約3,400t/年(5カ年平均)を散布している。長期的な疲労に加え、凍結防止剤散布の影響や床版への水の浸入など複合的な要素により、床版下面では遊離石灰をともなうひび割れ、一部でエフロレッセンスが確認された。舗装面のポットホールは発生していないものの、床版上面には部分的に土砂化と鉄筋露出が見られた。これらのことから、抜本的な対策として床版全面1,383㎡をプレキャスト床版に取り替えることにした。


既設床版下面および上面の状況

安藤・間が開発した床版取替機を初適用
 取替機1基でプレキャスト壁高欄の撤去・架設も可能

 床版の撤去・架設には、安藤・間が開発し、本現場が初適用となった床版取替機を用いた。その採用理由は「今後、都市部などのさまざまな制約があるなかで施工していくには床版取替機が必要になる。継続契約方式で床版取替工事を実施予定の橋梁のなかには、空頭制限がある橋梁があり、それらを見据えて本現場で用いることにした」(元請の安藤・間)ということだ。



本現場が初適用となった床版取替機(写真:大柴功治撮影。以下、撮影=*)

 床版取替機は、片持ち式の門型支柱脚で天井部のホイストクレーンおよび吊装置を保持する構造だ。青山機工、サンコー技建の協力のもと開発した。全断面での床版撤去・架設が可能で、既設床版撤去時には吊上げ重量20tのホイストクレーンを使用し、新設床版架設時はそのホイストクレーンに吊装置を接続して施工する。また、同機の先端には吊上げ重量2.8tのホイストクレーンが設置されていて、プレキャスト壁高欄の撤去・架設ができることも特徴となっている。


吊上げ重量20t(左)および2.8t(右)のホイストクレーン(撮影=*)

 同機のサイズは全長25.0m、高さ7.8mで、幅は神威橋の外桁幅に合わせて7.6mとした。支柱脚を同機の先端ではなく中央部と後方に設置する片持ち式としたのは、施工範囲をできるだけ確保して、取替機の移動を行わずに撤去・架設できる床版枚数を増やすためだ。
 移動は外桁上に敷設したH鋼レールに沿って、支柱脚下部に取り付けた車輪と片側に1基設置した水平ジャッキ付レールクランプ(36t)によって行う。40分で約8mの移動が可能である。
 本現場では横断勾配に加え、縦断勾配3%も付いていたため、その対応としてランウェイのレベルを保つようにした。3%の下り勾配ならば床版取替機が動き出す摩擦係数にはなっていなかったが、安全対策として下り方向にはレールクランプ装置を取り付けて、レベルを確認後に固定して万全を期した。


推進力となる水平ジャッキ付レールクランプと安全対策として設置したレールクランプ装置(撮影=*)

門型クレーンだけでなく低揚程クレーンでも使用できる吊装置
 ワイヤー長を機械制御 現場の縦横断勾配にあわせて架設可能

 新設床版架設用の吊装置は、鋼製梁をX字型に組み、各梁の端部からワイヤーを降ろして床版を4点吊りする構造となっている。サイズは幅約5m、占有高さ(上部の吊具からワイヤー下部まで)約1.2mで、重量は約3.5t。占有高さを低くすることにより、低揚程のクレーンでも床版架設が可能であり、梁中央を空洞化して重量の軽量化を図ったことで、クレーンの揚重能力の条件を緩和できるなど、床版取替機での使用以外でも利点を有している。


新設床版架設用の吊装置(撮影=*)

 床版を吊るワイヤーは各梁の内部で一体化していることから、機械制御によってその長さを調整できる特徴もある。これにより、床版に縦断・横断双方に任意の傾斜をもたせることで、現場の縦横断勾配にあわせて架設することが可能となっている。縦断勾配は30%、横断勾配は7%の幅で調整可能だ。
 床版取替機は、25tラフタークレーンで部材の荷卸し、ホイストクレーン設置などを行い、220tオールテレーンクレーンで支柱脚や本体部材の組立てを行い、約1週間で完成させた。


床版取替機の組立て

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