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鉄筋巻上げ対策はバックアップも含め万全の態勢で臨む 改質グースも一部採用

名古屋高速道路公社 高速3号大高線南行をリフレッシュ

公開日:2022.11.30

 名古屋高速道路公社(以降、名高速)は、10月22日0時~10月30日24時にかけて高速3号大高線南行鶴舞南JCT~名古屋南JCT間の約12.1kmを全面通行止めして、RC床版において床版の補修、複合防水の設置、舗装の打ち替え、鋼床版では舗装打ち替えなどを主とするリフレッシュ工事を実施した。対象面積は94,710㎡で、内訳は、RC床版部が約93,600㎡で鋼床版(1,110㎡)は今回殆どなく舗装のほか、伸縮装置取替え、照明柱点検、その他の付属工事、構造物点検も合わせて行った。リフレッシュ工事に係わるのべ人員は約4,900人に達した。前年度リニューアル工事で起きたバックホウによる鉄筋巻き上げ事故を防ぐための方策や、新しいWJ機械の導入、改質グースアスファルト防水の一部採用なども含めて現場を取材した。(井手迫瑞樹)


今回のリフレッシュ工事区間(名古屋高速道路公社HPより抜粋)

大高線南行 1日平均交通量は平日3.57万台、大混率は13%
  呼続出口~名古屋南JCT間の床版防水は12年に行ったリフレッシュ工事まで未施工

 大高線南行きの1日平均交通量は、平日3.57万台/日(R3年間平均)でコロナ前の9割強程度まで戻している。大型混入率は約13%(貨物+バス)となっている。高辻~大高間は1979年7月、大高~名古屋南JCT間は2003年3月にそれぞれ供用された。
 今回のリフレッシュ工事区間における、舗装の打替えや床版防水を伴う補修履歴は、1996年に鶴舞南JCT~大高JCT、07年に鶴舞南JCT~呼続出口間、12年に呼続出口~名古屋南JCT間の舗装を基層から切削し、アスファルト塗膜系床版防水を施工している。
 大高線は名高速の第一期供用区間であり、供用年数は43年を超えているが、呼続出口~名古屋南JCT間の床版防水は12年に行ったリフレッシュ工事まで未施工であった。また、07年の鶴舞南JCT~呼続出口間の全面的な床版防水までは、路肩や伸縮装置近傍などのみしか防水を施していなかった。
 このような床版防水設置状況の中、冬季の凍結防止剤の散布や床版上面から水と塩分が浸透し、上鉄筋の腐食に伴う床版上面の土砂化が発生した。床版下面においても、塩分の浸透に伴う鉄筋の腐食により床版の剥離が生じた。

度重なる切削で現在の床版厚140mm、被り厚0も
 補修してもマイクロクラックにより再劣化が生じる箇所も

 さらに大高線の今工事区間の設計上のRC床版厚は180~240mmと多岐にわたるが、複数回のリフレッシュ工事および舗装修繕によって、床版上面の被りコンクリートは削られており、いちばん薄い箇所は140mmほどしかなく、設計被り厚40mmにたいして実際の被り厚は0と上鉄筋が完全に露出してしまっている個所もあった。設計コンクリート強度は合成桁部分で35N/㎟、非合成桁で30N/㎟であるが、実際に小径コアを抜いて測定したところ、一部で21N/㎟まで強度が下がっている箇所も見られた。
 名高速もこれらの損傷を補修すべく2015年から大規模修繕工事を実施した。RC床版下面にアラミド繊維シートを貼付けて補強する手法であり、同区間におけるひび割れ補修は全てIPH工法により施工している。同補強補修工事は全面足場となるため、排水管の取替や塗替えなども合わせて施している。
 こうした補修を行ったものの、2018年度以降、床版上面の劣化に起因する舗装のポットホールが著しく増加している。大高線は交通量が多く、また、ポットホール補修は騒音や振動を伴うため、施工時間に制約を受け、維持工事では第三者被害防止の観点からの応急対応しか実施できない。その応急対応箇所は従来、ブレーカーやチッパーを使っていたため、マイクロクラックによる再劣化が生じる場合もあり、劣化の増加傾向をさらに加速させてしまっている可能性があった。


床版上面の損傷状況(井手迫瑞樹撮影)

 さらに床版上面に対して恒久的な対策を行わない場合、床版上面から雨水などが浸入することで、せっかく現在行っている床版下面にアラミド繊維シートを張り付ける補強や補修も効果が持続せず、再劣化が生じる可能性がある。そのため、今年度も複合床版防水を伴うリフレッシュ工事を行うことにしたものだ。

34,090㎡は複合床版防水工法を適用 伸縮装置も29箇所で取替
 鉄筋巻き上げ対策を強化 バックホウ施工箇所には必ず監督員が監視
 

 RC床版部の舗装打ち替えは、過年度の対策状況や劣化度調査を踏まえて、34,090㎡は舗装を基層まで切削した上で複合床版防水工を行い、残り60,620㎡は表層のみ切削オーバーレイして打替えることを基本とし、劣化部のみ基層まで打替えることにした。鋼床版部は大下226~229までの3径間のみしかなく、これらは全て表層のみ切削オーバーレイして打ち替えるものとした。
 合わせて伸縮装置の取替も29箇所(ゴムジョイントor荷重支持型をSPジョイントに交換する箇所も含む)で行った。合わせて鋼床版部の追い越し車線側の鋼製高欄(延長約148m)では、高欄内部の腐食部分をサビシャットで補修した。


鋼製壁高欄の損傷状況(ブルーシートは補修途中の養生)

 施工はまず切削機で舗装を切削し、バックホウで舗装を撤去した後、ビーストなど乗用タイプの大型剥がし機を用いて、アスファルト舗装撤去後に残ったタックコートや接着防水層を除去した。その後、ショットブラスト(投射密度100g/㎡)で研掃した。次に目視および打音検査で損傷箇所を確認する。


バックホウを用いた舗装撤去



ショットブラストの施工状況

 前年度のリフレッシュ工事で起こしたバックホウ施工時に鉄筋を損傷させてしまう事故を防ぐため、今回のリフレッシュ工事では慎重な対応を検討した。
 まず、舗装撤去時のRC床版損傷対策として机上調査および事前調査で床版被り厚が薄い箇所の当てを付ける。次いで舗装基層の切削は床版上面に1cm程度残す形で行い、コンクリート部を切削しないようにした。その上でバックホウを使って残ったアスファルトを剥ぎ取るが、鉄筋が引っかかったことを刃先に感じれば直ちに止めるよう指示した。見落としを避けるためにバックホウの作業時は必ず監督員が現場に配置するようにした。また、昨年度の鉄筋損傷時の復旧工事で活躍したエヌダブルに万が一鉄筋損傷が生じた際のバックアップを舗装工事業者より委託して施工に臨んでいる。
 バックホウでの残アスファルト剥ぎ取り中に鉄筋露出箇所が発見された場合は作業を一時中止し、5m程度離れた位置で再度バックホウによる剥ぎ取りを実施する。そこでも鉄筋が露出するようであれば、その径間のバックホウによる舗装版撤去は中止することとした。これは鉄筋が露出した場合の対処をあらかじめ定めることで、舗装版撤去作業に注力し過ぎ、鉄筋を巻き上げてしまうといった事故を防ぐとともに、監督員が迷わず作業中止を判断できるよう配慮したものである。

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