道路構造物ジャーナルNET

送出し、ジャッキダウンとも6回に分けて実施

愛媛県八幡浜土木 JR予讃線や国道197号を跨ぐ郷高架橋A1~P1間の架設が完了

公開日:2022.09.09

 愛媛県八幡浜土木事務所は、大洲市と八幡浜市を結び、松山自動車道とつながる大洲・八幡浜自動車道の建設事業を進めているが、そのうち2022年度内の供用を目指して、八幡浜IC(八幡浜市大平)~八幡浜市郷までの「八幡浜道路」3.8kmの建設を進めている。そのうち最大の橋梁である郷高架橋(橋長200m、鋼2径間連続鋼床版箱桁橋)のA1~P1間約130mの架設をJR四国に委託しており、5月上旬には昨年9月から6回に分けて実施してきた工事の最後の送り出しを行った。また、6月からは、7mの高さにも達するジャッキダウンを6回に分けて行い、無事施工を完了している。同径間は直下のJR予讃線および国道197号線を跨ぐ箇所であり、大洲側はランプになるため幅員が変化している。その現場を取材した。(井手迫瑞樹)


施工箇所図(愛媛県提供、以下注釈なきは同)

径間長がアンバランスな構造 幅員も大きく変化
 施工時の合計重量は最大で1,873t

橋梁上部工概要
 同橋は橋長200mのうち、A1~P1が135m、P1~P2が67.5mという径間長がアンバランスな橋梁である。また、A1~P1間は上り勾配でかつA1側に若干の斜角が入っており、R=900の曲線(右曲がり)も有する。加えて、G1桁とG2桁に若干のレベル差があり、そうした点も考慮する必要がある。また、幅員や桁高も大きく変化する。
まず幅員はA1橋台上が最大(本線とICの分岐部に隣接しているため)で、23.435mに達する。一方でP1橋脚上は13.873mと135.5mの支間長の間に10m近く幅員が減る。ちなみにA2橋台はさらに幅員が小さく10.089mまで絞られる。


橋梁一般図

 桁高はA1~P1間は支間長から4.6mと高い。P1を超えると急激に絞られ、A2橋台上の桁高は2.5mまで低くなる。加えて、横断勾配や曲線からG1(A1→A2方向の2主箱桁の左側)桁がG2桁(同右側)に比べて若干高い位置となっている。送り出しやジャッキダウンにおいてはこうした位置の違いも配慮する必要があった。


P1上のエンドレスローラーの配置や、A1橋台側の桁の高さ位置と実際のA1の高さの違いが分かる(井手迫瑞樹撮影)

 施工時の重量は、上部工の本体が1,629t、手延べ機が137t、連結構が52t、後方桁が55tの1,873tとなっている。

橋脚を1本立てることが難しく、当初設計のPC桁から鋼桁へ変更しスパンを飛ばす
 P1を中空断面から充実断面へ

下部工と上部工工種の変更
 同橋は当初(概略設計時)、PC3径間ラーメン箱桁を想定していた(下旧図面)。しかし、当時のP1橋脚設置箇所(JR予讃線とA1橋台に挟まれた崖地)は非常に狭くJR予讃線に影響を及ぼすことからランプ専用の橋脚を建てることが出来ず、P1を省略し、支間長を伸ばすことを余儀なくされた。


PC3径間ラーメン箱桁を想定していた

 その結果、旧図面におけるP2を新しいP1(以降、P1)として再設計した。P1は中空構造であったが、平成24年道示に対応するため中間拘束筋を配置した充実断面に変更した。しかし、それでは基礎(大口径深礎杭、φ10m、長さ20m、1本)が持たない。一方でP1は千丈川と市道に挟まれ、ヤードが狭いため基礎の拡大も難しい。その課題に対応するため、上部工形式をPCラーメン箱桁から鋼床版箱桁に変更して軽量化するという大胆な変更を行った。その結果P1橋脚の上部工死荷重反力は38,500kNから20,700kNに減少させることが出来、基礎の拡大を不要とした。
 下部工が橋台部が逆T式橋台、橋脚が張り出し式橋脚となっており、橋台基礎はいずれも深礎杭(A1:φ3m×6本、長さ18m×3本、13m×3本、A2:φ2.5m×4本、長さ23m×2本、21m×2本)である。高さはA1が12m、A2が15m、P1は30.5mというハイピアとなった。桁幅員の変化に対応するため、施工済みの橋脚から高さ6m×幅12mの梁を用いた構造とした。


P1橋脚構造一般図 中空断面から充実断面へ

P1橋脚の施工状況 充実断面にしていることが分かる(上段右写真)

 下部工の施工にあたっては、鉄道に近接しているため、掘削に伴う落石や地盤沈下が生じないように鉄道に影響を与えないよう細心の注意を払った。また、地盤に空洞のある風化岩が確認されたため、鉄道や国道に近接した大規模構造物の施工は避けている。



A1橋台の施工

 また、架設は送り出し長135mを中間ベントなしで行うことは難しい。そのため、国道197号のA1側に高さ25m弱のベントを構築した。同ベントは架設時の巨大な反力と、地盤を想定して十分な地耐力を得るべく、G1、G2側にφ1,000mm、長さ22~28mの中掘鋼管杭を9本ずつ18本施工した。その上にタワー材(5m角800×32本×4段+2m角800×32本×1段)を用いてベントを構築した。


B1ベントの基礎杭/フーチング/タワー材の施工状況

A1→P1に向かって3.2%の上り勾配 横断勾配も最大4%の下り勾配
 平面線形はR=450mの単円からクロソイド曲線を介して直線に変化

架設(送出し)
 鋼桁はA1からP1に向かって3.2%の上り勾配がある。また、横断勾配はG1からG2に向かって最大4%の下り勾配を有する。さらに平面線形はR=450mの単円からクロソイド曲線を介して直線に変化する。2主箱桁の平面線形が主にクロソイド曲線で各主桁の曲率が異なり、加えて幅員もA1からP1で大きく変わるという特性を有している。、高低差など、桁形状が複雑で、送出しの際にはエンドレスローラーの位置、平面的な回転、高さを追従させる必要がある。そのため、桁の架設開始高さを調整し、7m程上げて勾配を水平にして送り出しを行った。逸走防止としては、耐震対策としてA1、中間ベント、P1に方杖材を配置した。


A1側に足場を作り架設時の勾配をフラットにした

方杖材を桁の両側に設けている(井手迫瑞樹撮影)


送出し・降下設備詳細

ジャッキや台車など架設設備配置状況(A1側背面ヤード)

 架設長に伴う総延長は、本桁140mに加え、連結構7.4m、後方桁8.8m、手延べ機58.5mと200mを超える。これを後方に台車を1主桁につき3台設置して架設した。最後部の1台は1回目の送り出し時は15t、1,500mmストローク、2~4回目は50t、1,050mmストロークの押し引きジャッキ(レールクランプジャッキ+クレビスジャッキ)を12基使って推進することにした。また、後方台車の上部には、桁がずれないように推進するための推進伝達装置(フランジクランプジャッキ8基+クレビスジャッキ8基、50t、1,050ストローク)を設備している。送出しを円滑に進める為に、桁位置計測と併せてエンドレスローラーを橋軸直角方向移動、平面回転できる設備を用いて支持点位置をリアルタイムで管理して連続的に送出しを行った。


後方のジャッキ設備拡大写真(井手迫瑞樹撮影)

 推進力はヤード内の推進台車とベント上の駆動式エンドレスローラーの2か所での曲線桁の送出しとなり、インアウト、駆動方法が異なる推進力の同調管理が必要であった為、それぞれの推進力、推進速度の設定を事前に設定し、安定したバランスを保って送出しを行うことに努めた。


B1上の駆動式エンドレスローラーなど架設設備

 推進台車の推進装置は1回目とそれ以降で異なる。第1回送り出しは、送り出し桁の延長が短く、張り出し長が長くなるほど不安定となる事から、送り出し一夜間で中間ベントまで手延べ機を到達させ、安定化を図る必要があったが、第1回の送り出し重量は847tで、最大となる第3,4回の1873tと比較すると軽く、推進力が小さくて済むことから、押引き能力は小さいが、速度が速い推進ジャッキを選定した。

 また、A1、ベント、P1上にはエンドレスローラーを設置したが、後方の推進台車のみでは推進力が不足することから、A1および中間ベント上には600t駆動式エンドレスローラーを使用し、架設時の推進力の補助とした。

ご広告掲載についてはこちら

お問い合わせ
当サイト・弊社に関するお問い合わせ、
また更新メール登録会員のお申し込みも下記フォームよりお願い致します
お問い合わせフォーム