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仮復旧工を残置したまま本復旧を進める

国道210号赤岩防災 2020年7月豪雨からの本復旧が進捗

公開日:2022.04.25

 国土交通省九州地方整備局大分河川国道事務所は、国道210号の日田市天瀬町赤岩付近で、令和2年7月に起きた道路崩落の本復旧工事を進めている。現在は仮復旧として片側交互通行による規制を行っている。これを対面2車線確保するために進めている工事だ。仮復旧で用いた袋詰め玉石や大型土嚢を残置したまま掘り進めることが出来るジャイロプレス工法を用いて鋼管を立て込み、PCアンカーで固定して2車線断面を確保し、その枠外の玉石や土嚢を撤去後、河床を掘削して根固めブロックを設置、鋼管はコンクリート壁で被覆すると共に、全面に5tの消波ブロックを置いて護岸を守るもの。本復旧の工事は本格的には昨年12月から開始しており、合計59本(大口径杭のみ、大口径の隙間を埋める小口径の杭も含めると全部で115本)の鋼管杭を打ちこみ、鋼管杭の施工は今年5月の非出水期までには施工を終えたい方針だ。(井手迫瑞樹)

道路被災延長は最大幅約16m、延長約100mに及ぶ
 被災から41日後に仮復旧というスピード感

 国道210号赤岩地区の道路崩落は、2020年7月6~8日未明の2日間の豪雨によって生じた。3日間は降雨のピークが2度あり、1度目は7月7日の明け方から朝にかけて、2度目は同日の夜遅くで、2日間の累加降水量600mmは平年の7月降水量の約1.6倍に達した。これがたった2日間に集中したため、玖珠川流域に広範囲に被災が生じた。例えば下流の天瀬温泉地区にも大きな被害を齎している。


道路被災箇所(以下、注釈なき場合は、図および写真とも国土交通省提供)

 赤岩地区の道路被災延長は最大幅約16m、延長約100mに及んだ。同地はちょうど河川線形的に水衝部に位置し、水はもちろん、巨石なども衝突し、既存コンクリートブロックを破砕し、その裏込め材の土砂が吸い出されて、道路の路盤が崩壊した。豪雨発生により、通行止めにしていたので人的な被害は生じなかった。国道210号は久留米から日田を経て大分に達する九州を横断する重要な国道であること、同地付近は約8,000 台から約1 万台の交通量を有し、周辺には慈恩の滝や道の駅などもあることから早期の復旧が望まれた。そのため豪雨が収まった直後から応急復旧工事に着手した。


被災状況


 応急復旧工事はまず、被災箇所の損傷が広がらないように1,000個以上の消波ブロックを投入して水勢を緩和し、合わせて河川内への進入路を確保した。次いで瀬替えを行ったうえで施工ヤードを造成し、崩壊した路体基礎部には袋詰め玉石、路体盛り土部には大型土嚢を据え付けて、布製の埋め殺し型枠を用いて保護コンクリートを打設し、最後に1個3tの消波ブロックを路体全面に配置した。上部の舗装を完了し、応急復旧が完了したのは被災から41日後の8月17日7時という速さであった。

仮復旧施工状況

河川内進入路の設置/瀬替え/施工ヤードの造成

袋詰玉石の敷設(左)/大型土嚢の設置(中、右)

路床盛土および舗装(左)/24時間体制で仮復旧工事を行った

仮復旧完了状況

鋼管杭とPCアンカー、コンクリート壁により護岸
 圧入機に回転機能を付加した専用機「ジャイロパイラー」を採用

 さて、本復旧である。本復旧は本来、応急復旧で用いた仮設材料を取り除き、本設材となる材料に置き換えて施工するものであるが、それでは時間がかかりすぎるし、再び全面通行止めを余儀なくされてしまう。そのため、仮設材料をそのままにして、本復旧すべく、今回の鋼管杭とPCアンカー、コンクリート壁により護岸し、水害から道路を守る工法が採用された。

施工概要(現場立看板と同内容、西松建設提供)



本復旧工事一般図

 施工は、2021年8月から行われる予定であった。しかし、その時に襲来したのが再びの豪雨である。8月12日に襲った豪雨は仮復旧道路を脅かし、道路自体は幸いにして大きな損傷を生じなかったものの、ヤードはきれいさっぱり洗い流し、3tの消波ブロックもほぼ消失していた。8月17日から施工を始める予定で、重機や材料の手配も済んでいたが、現場にはまだ運び込んでいなかったが不幸中の幸いであった。しかし、ヤードの復旧を余儀なくされ、その工事には3か月の期間を費やした。


2021年8月に流失した施工ヤード

 そして12月頭から本復旧工事が本格化した。工区は2つに分かれており、西側を西松建設、東側を錢高組がそれぞれ担当している。
 施工はまず鋼管杭の回転圧入から始まる。鋼管杭は最長26.5m、平均25mの長さに達する。φも1,500mmと大きい。その大口径鋼管杭の真ん中の隙間を埋めるためにφ318mm(深さは大口径と同じ)の小口径鋼管を回転圧入し、これらを1セットとして施工していく。


施工ヤード遠景


2種類の鋼管杭を使っている

 同地の基礎地盤は、凝灰角礫岩であり、その上に仮設材(袋詰め玉石、土嚢)が載っている。そこを掘り進めていくため、鋼管最下部の先端には写真の様な刃(リングビット)が付いている。

基礎地盤は凝灰角礫岩であり、その上に仮設材(袋詰め玉石、土嚢)が載っている。そこを掘り進めていく

リングビット

 これを圧入機に回転機能を付加した専用機「ジャイロパイラー」を用いて回転圧入させていくことで、玉石など硬い岩があってもスムーズに鋼管を建て込んでいくことができる。専用機は、最初は200tトラッククレーン(TC)により吊りこんで据え付け、反力を取るための矢板が別途必要になるが、図のように後部に施工完了した鋼管を把持して反力を取ることが出来るクランプを有しているため、4本目からは矢板を撤去して本設構造物を利用して施工することが出来、クレーンによる盛り替えは不要で、200tTCは設置と最後の撤去の時にしか使う必要がなく、経済的に施工できる。鋼管そのものの現場への吊下ろしは120tTCで行う。鋼管は約25mを3分割して施工し、溶接で継手して全長を圧入している。鋼管杭1本あたりの施工は2.5~3日、1セット(=大口径鋼管2本+小口径鋼板1本)は7~10日ほどを要する。




ジャイロパイラーによる施工

先に建て込んだ鋼管で反力を取る/夜も施工し、非出水期にできるだけ工事を進めていく

アンカー長は16mから最大24mに達する
 上面には500mmの路版・路床および舗装を施工

 鋼管杭の施工が完了した後は、腹起し材を設置し、路体を守る構造の主体となる大口径鋼管を傷つけず、小口径鋼管部に通すようにPCアンカーを打設し、鋼管と地山を一体化させる。PCアンカーはエスイー製のφ146mmの鋼材を用いており、アンカー長は16mから最大24mに達する長さとなっている。
 PCアンカー設置後は、全面の仮設材を撤去したのちに、鋼管杭前面をある程度掘削し、鋼管杭を保護するためのコンクリート壁(厚さ500mm、構造は⼆次製品によるパネルと間詰コンクリート)を設置する。最後に河床には根固めブロック、コンクリート壁前面には5tの消波ブロックを配置すると共に、上面には500mmの路版・路床および舗装を施工して、対面2車線の本復旧を完了する。河川内の工事は今期の非出水期に鋼管杭打設とアンカー設置を完了したい考えだ。

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