道路構造物ジャーナルNET

2020年度内の供用目指す

NEXCO東日本 常磐道(山元IC~岩沼IC間)4車線化 橋梁上部工が終盤迎える

公開日:2020.03.01

 東日本高速道路が進める常磐自動車道(山元IC~岩沼IC間)の4車線化事業における橋梁工事が終盤を迎えている。この区間には5橋の鋼橋と1橋のPC橋があるが、阿武隈大橋を除き、上部工の桁架設が完了している。盛土区間も施工が進んでおり、厳しい工程ではあるが、2020年度内の供用に向け工事を進めている。今回はその中から建設中の阿武隈大橋と特殊な手法で桁を架設した荒浜橋の2橋の施工内容を取り上げた。(井手迫瑞樹)


阿武隈大橋橋梁一般図(NEXCO東日本仙台工事事務所提供、以下注釈無きは同)

阿武隈大橋 200tクローラークレーン2台を用いて仮桟橋上から桁架設
 桁や中床版の段取りを工夫し、工期短縮を目指す

 阿武隈大橋は、阿武隈川を渡河する橋長534m、最大スパン110m、鋼重約3,470tの鋼5径間連続鋼床版2主箱桁橋だ。橋脚基礎には、ニューマチックケーソンを採用している。大河である阿武隈川に架橋するため、巨大な仮桟橋を設置している。非出水期(11月~5月)からの作業に向け、阿武隈大橋の高水敷では、上部工工事の準備作業が行われていた中、昨秋の台風19号では「越水はなかったものの水嵩が上がり、作業ヤードが浸水し、冷や汗を掻いた」(山田伝一郎・仙台工事事務所岩沼工事長)状況に至った。幸い、水が引いた後の点検では目立った損傷はなく、作業ヤードを復旧し、早期に桁架設に入ることができた。


上部工着手直前の状況

台風による増水の様子/11月から上部工が本格化した

 さて、阿武隈大橋は少し変わったやり方で桁架設を行う。上部工工事が現場入りしたのはお盆明けで、10月から準備工に着手、本格的には台風を挟んで11月から工事に着手した。鋼床版箱桁形式であるが維持管理性を考慮して従来のUリブタイプではなくバルブリブタイプの12mm厚の鋼床版を採用した。桁架設を開始したのは11月末からで、記者が取材した1月下旬の桁架設状況は、1径間未満、数ブロックを残すのみとなっていた。通常、冬季は北からの季節風の影響により平均秒速10mを超えることも珍しくないが、「今年は風も雪も少なく穏やかで」(受注者の横河ブリッジ)、記者が取材した当日のみしか施工中止にした日はなかった。

 架設ブロックは1ブロック当たり8.5m、桁高が3.3m、主桁ボックス幅が1.9mで、主桁同士の間隔は3.85m、全幅は10.65mと少しスレンダーな鋼床版箱桁。これを67ブロック×2に分割して架設した。
 施工には200tクローラークレーンを最大3台用いた。高水敷の上に架かる部分(J46-A2間)はクレーン+直接基礎ベント(敷鉄板ベント)で架設した。難しいのは、河川域内に架かるA1~J46間の桁架設である。施工の段取りを間違えると工期に影響が出るため、2班に分かれて以下のように施工した。


阿武隈大橋架設要領図

上部工標準断面図

高水敷は先行で架設した



桁架設状況

2020年1月

同2月桁架設は数ブロックを残してほぼ完了していた

取材当日はあいにくの風雨で桁架設していなかった (井手迫瑞樹撮影)

 桁架設については右岸側に配置された班がA1~P1(厳密にはJ12ブロック)まで、中央部に配置された班がJ12~J46まで行う。主桁ブロックは単材及び2ブロック繋げたものを交互に架設していった。また、(主桁間をつなぐ)中床版設置は、右岸側配置班がA1~J12、中央部に配置された班がJ12~J46を施工し、検査路や排水管の設置は両班が分担して施工した。クレーンはいずれも仮桟橋上に200tクローラークレーンを設置しての施工であるが、主桁や中床版の設置量が両班で異なったのは、J15~J23付近の仮橋が無く(他は下部工施工時に設置されていた)、右岸側の班がそれを設置する手間が必要であったためだ。側床版の架設は、ベントの撤去および杭の引抜きを行った上で架設する。桁架設後は壁高欄を(鋼製埋設型枠を使って)現場打ちにより施工を行う予定である。


鋼床版床版の設置状況(井手迫瑞樹撮影)

 工事上苦労したのは、工程管理と風対策、そして安全対策。風が強いため、(供用中のⅠ期線側の)飛散を防止すべく、Ⅰ期線側の手すりにネットを付けた。架設時のクレーン架設の旋回(旋回半径平均17m、最大30m)は下流側(Ⅰ期線とは反対側)旋回で行うが、Ⅰ期線から2mの離隔を取った箇所にレーザーバリアを設置して、事前に危険を回避できるようにしている。河川上の作業のため、作業員にはライフジャケットも必ず装着して作業に従事することを徹底した。
 景観的な配慮として、排水管は全て主桁間に配置し、外から見えないようにしている。
 設計は八千代エンジニヤリング。上部工受注者は横河ブリッジ、1次下請けは、みなと(とび)、平世美装(塗装)、伊東工業所(溶接)、ヒルタ(クレーン)。5月末には上部工の施工を完了し、6月初旬には舗装工事への部分引き渡しを予定している。

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