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中央道 沢底川橋を片側53日で施工

NEXCO中日本 国内初 PC連続合成桁を対象とした床版増厚・PC外ケーブル補強の併用工法

公開日:2015.12.07

 中日本高速道路八王子支社松本保全・サービスセンターは、中央自動車道(岡谷JCT~伊北IC間)に位置しているPC3径間連続合成I桁橋の沢底川橋で大規模補修工事を行っている。中間支点上のPC床版の損傷が顕在化したため、詳細調査を行った結果、中間支点付近の床版に配置された橋軸方向PC鋼材の腐食等が一部確認されたことから、中間支点上の床版の撤去、RC床版への打ち替えと支間中央部の床版増厚、PC桁の外ケーブル補強を行うもの。PC連続合成桁橋として、床版更新と外ケーブルによるPC桁補強の併用工法は、国内でも初の取り組み事例となる。工期は上下線それぞれ53日ずつという短さ。短期施工の工夫も問われる難工事を取材した。(井手迫瑞樹)


沢底川橋

PCケーブルの一部が損傷、内部鉄筋が腐食
 中央分離帯底面からも路面上の水が漏水

損傷状況
 同橋は昭和48年以前の仕様で設計され、昭和56年に供用された橋長70㍍、幅員8.5㍍の3径間連続ポステン方式合成桁橋である。既存の橋軸方向のPCケーブルは橋脚支点上のみ一次床版部分まで入っている。建設工程としてはI桁を橋脚上に架設して、横桁を打ち、支点上の床版(当時、一次床版と呼んでいた)を先に打設して、ケーブルを緊張した後に(中間部のRC構造となる)二次床版を打っていた構造となっている。


写真(左)劣化損傷した床版の補修状況/写真(右)床版補修箇所の劣化状況(補修時に撮影)

 変状は、表面の舗装表面を除去し詳細調査を実施したところ床版のPCケーブル定着部の一部が損傷していた。また、床版底面では床版コンクリートの損傷部から、路面上の水が漏水していること、中央分離帯の底面からも路面上の水が漏水し、内部の鉄筋を腐食させ、一部のコンクリートを剥離させていることが分かった。床版厚は190㍉と薄く、特に一次床版部はPC床版であり鉄筋量は少ないため、RC床版に比べてPC鋼材の腐食がクリティカルに効いてくる、また、雪氷地域であり、凍結防止剤を多量に散布(H25年度:15㌧/(km・年)とH26年度:30㌧/(km・年))し、その上下線の合計散布量は、本線上下線延長84.4kmで約1200㌧(H25年度)、約2,500㌧(H26年度)であるため、塩を含んだ水が劣化を促進している。加えて古い橋のため排水勾配がほとんどなく、塩分を含んだ水の滞留を疑われ、集水升や排水管の腐食が進んでいる状況であった。加えて断面交通台数は約35,000台で大型車混入率も22%と高く、今後は疲労による損傷の進展も考えられる。
 過去には平成20年度、21年度に床版下面の剥落防止工、部分的な補修を実施しているが、23年度の健全度調査の結果、劣化を踏まえて床版打替えが計画されている。

ワイヤーソーとWJを併用して撤去
増厚部は超速硬コンクリート、エポキシ樹脂塗装鉄筋を採用

床版取替え
 以上のような損傷が生じていたことから、一次床版部(橋脚支点付近長さ14.4㍍×2)は床版を撤去、再構築し、残りの二次床版部は床版を補修した後に増厚補強する。ここで課題となるのが、同橋がPC連続合成桁ということである。つまり一次床版部のプレストレスを抜いた状態で施工する必要がある(安全上重要であると同時に、プレストレスが入っている状態ではカッターの刃が入らない)が、主桁部分のケーブルまで誤って切断することは避けなくてはならない。そのため床版切断の際に、床版部のプレストレスを除去するためのコアを削孔し、ガス切断により既設PC鋼線のプレストレスを除去する。その際は、グラウトの充填状況などを考慮して突出防止に万全の注意を払いながら施工した。



 一次床版部の撤去は、主桁間の中央部分をカッターで、高欄部はワイヤーソーでそれぞれ切断、桁直上部は全てWJではつり、桁と隣接する耳部分については、主桁部分を誤って損傷させないようにブレーカーで被りが100㍉程度になるまではつり、残る100㍉部分についてはマイクロクラックが生じないようにWJで慎重にはつった。ただし配筋が密な箇所はブレーカーの刃が入らないため、そうした箇所はWJで全てはつりを実施している。

 WJの水圧、水量は、230MP/4立方㍍/hで調整した。はつりすぎを防ぐためにコリジョンジェットも採用している。WJは最大4台使用した。切断に際しては撤去床版の重量が1パネル2㌧以下になるように配慮し、16㌧クレーンで吊下ろしした。規制開始から既設床板の撤去作業完了までは、規制工事期間の53日間のうち約30日間を充てている。
 撤去終了後は鉄筋を組み、型枠を設置して生コン車を持ってきて早強コンクリートをバケット打ちする。並行して二次床版部も、劣化部を断面修復したうえで、床版を増厚する。床版厚は285㍉のRC床版(H24道示対応、主桁間隔から決まる最少床版厚に相当)に打ち替える(取替前は190㍉のPC床版)。打替部の床版厚の増加に伴い、既存のRC床版部も105㍉増厚しレベリングを合わせている。二次床版部のコンクリートは、断面修復部に早強コンクリート、増厚部に超速硬コンクリートをそれぞれ採用し工期短縮に努めている。
 なお、凍結防止剤の散布量を鑑みて、鉄筋は床版(二次床版の増厚部も含む)、地覆、高欄とも全てエポキシ樹脂塗装鉄筋を採用している。





床版打替、増厚の施工状況

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