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阪神高速道路の維持管理報文連載

①阪神高速道路の構造物の劣化と維持管理の課題を考える(1)

阪神高速道路株式会社
大阪管理局 
保全部 保全設計課 課長 

小林 寛

公開日:2017.02.21

PC桁の修繕
 設計年次が古く、上フランジ上面にケーブル定着部を持つポステン桁は、舗装面からの漏水が生じるとケーブル定着部からケーブルに水が滲入し易く、グラウト不良があればケーブルの腐食を招き、周辺コンクリートのひび割れや剥離、さらにはケーブル破断による耐力低下にもつながる恐れがある。(編注:関連記事) 

 阪神高速ではPC桁大規模修繕工事の第1弾として、11号池田線、13号東大阪線において4工区126径間の詳細調査を実施中である。
 工事は調査と設計を含み(図10)、現在鋭意調査実施中である。

 グラウト充填状況調査はインパクトエコー法(IE法、図11)により、ここで異常が認められたときは小径コアを削孔し、目視確認を行う(微破壊調査、図12)。この際、シース内から出水が認められた場合は、塩化物イオン濃度計測も実施する。


 IE法を4548箇所実施したところで、微破壊調査の結果と照合し、検出精度を検証した。
IE法でグラウトが充填されていると判定されたもの2092箇所のうち7箇所について微破壊調査を実施したところ、全て充填が確認された。一方IE法でグラウト充填不良と判定された箇所のうち763箇所について、微破壊調査を実施し、結果を検証したところ、充填不良或いは未充填箇所は615箇所で空隙検出率は約80%であった。また、IE法で充填不良の可能性有りと判定されたもののうち276箇所については、充填不良或いは未充填箇所は198箇所であり、空隙検出率は約70%であった。ここでは、シースのスリーブ継手を充填不良の可能性有と判定したものが多いことが明らかとなったことから、今後IE法の実施に当たっては箇所選定に留意する必要がある。
 現在のところ、調査進捗度は4割程度ではあるが、ケーブルの腐食調査、コンクリート物性調査とも深刻な劣化は報告されておらず、耐力補強を伴うような補強設計には着手できていない。

おわりに

 以上、阪神高速道路のコンクリート構造物の劣化と維持管理の課題について事例からの紹介を行ったが、紹介できたものまだまだ一部であり、毎月の定期点検結果報告では、毎回のように新たな損傷が報告されている。幸いこれまでにお客様の安全に係わるような深刻なものはないが、人間と同じく50歳を超え還暦を迎える頃には急速にガタが来るという最悪の想像をしながら、点検、設計、工事の担当者が一丸となって日々戦っているところである。
 次回は鋼構造物その他の損傷について、事例を紹介していきたい。
(次回は3月中旬に掲載する予定です)

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