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南三陸国道で行われる受発注者の協働思考 高品質のトンネルを実現するには

シリーズ「コンクリート構造物の品質確保物語」⑮

横浜国立大学
大学院 都市イノベーション研究院
准教授 
細田 暁 氏

 インタビューシリーズの第3回目は、南三陸国道事務所事業促進PPPチームで復興道路(三陸沿岸道路・釜石山田工区)の主任技術者を務める加藤ひろし氏(下写真、井手迫瑞樹撮影)に話を聞いた。長年のトンネルマンとしての覆工コンクリートへの知見、保全業務に携わり感じたトンネル覆工コンクートへの危機感、指揮を執った2016年5月に東北地整が策定した「コンクリート構造物の品質確保の手引き(案)(トンネル覆工コンクリート編)」の作成過程の裏話、現場を率いるリーダーシップの発揮の仕方、など多岐に渡る面白いものとなった。その詳細をお伝えする。(聴き手:細田暁・横浜国立大学准教授)(編集:井手迫瑞樹)


管理業務で知った厳しい現実

 施工継目の損傷が顕著

 ――加藤さんといえば、間組(現安藤・間)のトンネルマンでしたので、まず、覆工も含めて、そのトンネルに対する熱い思いをお話していただきたいとおもいます

 加藤 施工者というのは、私も含めてみんな、発注者やその後利活用するエンドユーザーの方々に対して、良い構造物を納めるため、一生懸命努力して取り組んでいます。私も22年トンネルに携わってきて、その都度その時代で努力してきました。しかし、その後に立場が変わって、トンネルの定期点検という業務を4年やって厳しい現実を知りました。有体に言うと少なくない数の不具合を発見しているわけです。今、ゼネコンでトンネル工事に従事されている技術者は、10~15年後にこんな状況が出ているというのが分かっていないと思います。そのため南三陸国道事務所内に覆工コンクリート品質向上委員会を立ち上げて、品質向上に努めようというところにまた細田先生も加わっていただき、コンクリート構造物の品質確保の手引き(トンネル覆工コンクリート編)の制定にこぎつけました。きちんと施工しているつもりでも不具合が出ているということは、手引きを見れば大体わかると思います。造っている側が、現状に納得せずさらに突っ込んで施工しないと良いものができないということをみんなに知って欲しかったという思いがあります。

 ――22年間で施工したトンネルの数はいかほどになりますか

 加藤 延長にして、ちょうど22㌔です。だいたい毎年1㌔ペースですね。避難坑や向かい掘りも含めての総延長になります。

 ――なるほど、現場所長としては

 加藤 現場所長は42歳からやらせていただきました。

 ――いくつくらいの現場で所長を務めたのですか

 加藤 現在NEXCO東日本が所管する秋田横断道の和賀仙人トンネルというとこがあるんですけど、あそこが初めての所長でした。工費は約100億くらいでした。結構あの時代も良いものを造ったはずなんですけど、やはり先生が解析されたようにNATMの弱点が施工継目に出て(漏水などの損傷を惹起して)いました。先ほど話したトンネルの定期点検は北海道で行ったのですが、先生の分析と同じ結果が出ています。同じような技術、コンクリートを使っているから、全部、施工継目に損傷が出てしまうわけです。大きなショックを受けました。


施工継目のうき(両写真とも加藤ひろし氏提供、以下同)


定期点検時のうき部分のはつり作業/点端部の亀裂



年間80本、4年間で300本のトンネルを点検

  変状がないトンネルも稀にある

 ――およそどれくらいの数のトンネルを点検したのですか

 加藤 平均して年間に80本です。年間といっても、年度が変わって7月か8月に発注されますから、正味半年で、3月までに納めなければいけない。真冬にトンネルの中で点検する場合もありますが、日は当たらないし、風は冷たい、本当に厳しい環境で一生懸命叩いて、業務をこなしました。だいたい北海道全体に80本のトンネルが分布していました。寒くなるのは分かっていますから、北から順番に点検スケジュールを組みました。多いときは4班編成くらいでやらないと納品が間に合いませんでした。現在は携帯タブレットPCや動画編集による変状管理等、点検技術の高度化が進み、当時に比べると効率化が進んでいると聞いています。ちなみに、最近の発注時期は4月、点検時期は6月~11月が基本となっています。


北海道内において、年間平均80本の点検をこなした


 ――4年ですと300本くらいですね。ほとんど無傷のトンネルもありますか

 加藤 ごく僅かですがありました。

 ――施工目地の損傷も無かったのですか

 加藤 変状がほとんどないトンネルもNATMでは稀にあります。

 そういうトンネルは過去(の点検履歴)を見ても損傷はありません。施工時に丁寧に作ったのだと思います。ですから基本は今のコンクリートの配合を変えるとかじゃなく、丁寧な施工をすれば耐久性の高いものは作れるんです。供用後10年、15年経っても損傷はほとんど発生していません。それは北海道の業者でした。