道路構造物ジャーナルNET

⑫セカンドオピニオン

民間と行政、双方の間から見えるもの

富山市
建設技術管理監

植野 芳彦

公開日:2016.11.16

 民間と行政の双方を経験し、何が見えるか?書いてほしいとの話があった。執筆を引き受けたのは良いが全く書く内容に困った。しかし、これから大きく変化する、社会情勢の中で特に、何が今問題なのか?我々は何をするべきなのかを考える一助になればと思い書くことにする。技術的内容よりも、一般論に近いものとなる。書くに当たっては、批判も罵声も大いに結構である。さまざまな考えの方が居て当然であり、私の考えが間違っているかもしれない。大いに批判していただきたい。

1. 老朽化問題の課題

 現在、橋梁等のインフラの老朽化問題に関しては、各所それぞれ取り組まれていると思う。お互いに共通の課題が存在するのではないだろうか?最近感じていることを、改めて整理してみる。現在は「点検」に終始しているが、それで、終わるわけが無い。点検して劣化を見つければ、その後の補修問題が出てくる。点検に比して、補修工事となると、1桁、下手をすると2桁違いの工費が必要となってくる。既に点検で破綻状態(大げさだが)の自治体も出てくる中、本当に、早期に劣化を補修していく、「予防保全」は可能なのだろうか。
 国と自治体、管理目的によって管理水準を変えるべきではないのか、と思う。高速道路、国道、県道、市道はそれぞれ、目的が違う。当然管理の目的が違っているはずであり、管理水準も違って当然であると考える。


持続可能な橋梁マネジメント基本計画(平成27年度策定)と施策の推進例

 一方で、「点検」や「補修設計」をコンサルに任せてよいのか。維持管理においては、材料、設計、施工、検査法などの知識が必要である。実際にはこれまで、橋梁をほとんど設計したことも無いコンサルタントに、補修設計を「地元だから」と言う理由で発注してよいのだろうか。日本のコンサルの生い立ちに問題があるので、先人に責任があると思うのだが、今後も間違いを犯していく必要はない。維持管理において、今後、無駄な出費をしていく余裕は無いはずである。
 先日、ある方から「どうせセカンドオピニオンをするなら、全数市の職員で見たら。」という意見をいただいた。ごもっともである。効果的補修材料、補修法の確立と技術的担保、責任の所在の明確化ができていないので、新技術を使い辛い状況であり、「技術認証制度」の必要性がある。よくある勘違いは、新技術を使えばコスト縮減になるという考え方である。考えても見て欲しい、新技術のほうが安ければ誰もわざわざ、苦労して開発しない。「新薬」と「ジェネリック」の違いであるはずである。開発費を適正に、回収できるような仕組みのほうが、社会全体から考えれば大切なのではないだろうか。
 民間側からすれば、「せっかく苦労して、開発したのに」の物でも、役所側からすれば、その効
果や耐久性、コストなど非常に厄介な判断を迫られるので、安易に使えない。
 こうした齟齬の解決を図るため、官・民ともに、適正なマネジメントが出来る人材の育成が、急務であるが、これが非常に困難な状況である。私は、これまで上司に恵まれていた。直属の上司には恵まれなくても味方が居た。「外に行って勉強しろ」とか、悩んでいると指導をしてくれた。そういう方々が現在は意外と居ない。下手をすると、組織の中には一人も居ない場合がある。団塊の世代の方々の多くは、部下を育てるのが下手な方が多い。というか、育てる気がなかったのではないか。自分の後継者を育てるよりも、自分が残ろうとした世代なのではないだろうか。
 学・官・民と何処の組織でも人材育成は、大きな課題である。しかし、今後最も重要な課題である。教育に関しては、我々ロートルがモット積極的になるべきである。しかし、よく言うのだが、「育つ意識の無い者は、育てられない」。赤ん坊は無意識のうちに、早く一人前に成ろうと育とうとしているので育つのである。育つ意識の無い者は育てられないし、ましてや他の組織の者は育てられない。最近、コマーシャルを見ていて感じた言葉に、「何かを学ぶのに、自分で体験する以上に良い方法は無い。(アインシュタイン)」である。この精神が足りない。私は、不器用なので、壁に当たるとそうしてきた。
 維持管理に関する十分な見識と経験を持った、技術者が必要である。「育成する」というのでは、遅く、現在は数少なくとも将来に向けて、経験を積む心構えが重要だと感じる。

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