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連載詳細

シリーズ「コンクリート構造物の品質確保物語」⑨

「コンクリート構造物の品質確保の手引き(一般構造物編)の制定 -走りながら考える-」

横浜国立大学
大学院 都市イノベーション研究院
准教授 
細田 暁 氏

1. 復興道路における品質確保の展開

 2013年度に品質確保の取組みは大きく動き始めた。本連載の第8回で紹介したように、2013年9月3日には、東北地方整備局にてほぼ全事務所から監督官等の職員が参加する形での2時間の講習会が開催され、筆者が講師を務めた。講演のタイトルは「復興道路の品質確保のための目視評価と施工状況把握チェックシート」であった。品質確保のための公式な規準類等の整備をする前に、現場での実践が先行したのである。

 筆者は、2013年10月から1年間、フランスに留学する機会を得た。四人家族での渡航であったことや、多くの学生の研究指導を放り出すわけにはいかなかったため、様々な境界条件を考えた上で慎重に開始時期も決定した1年間であった。しかし、復興道路での品質確保の取組みがいよいよ始まろうとするタイミングと重なり、私の周囲からも「どうするのだろう?」とご心配いただくことが多かった。結果的には、フランスに拠点を置いた上で、大型の日本出張を5回組むことになり、そのたびごとに東北の現場調査や講習会も組み込まれ、むしろ品質確保の取組みを大きく推進することができた。筆者は自分の1年間を自分自身のみならず周囲のためにも最大限に有効に使うことを考え、実践したつもりであるが、その実践をサポートしてくださった関係者、関係機関に感謝以外の言葉はない。

 2014年2月3日午後に大型の講習会が仙台の宮城県建設業会館で開催された。300名を超える聴衆で立ち見が出た。講演者は4名で、まず、東北地整の道路工事課長の佐藤和徳氏が、品質確保の試行工事を行う必要性について説明した(写真1)。続いて、筆者が、施工状況把握チェックシートと目視評価法を組み合わせた品質確保の具体的な手法について1時間の講演を行った。さらに、岩手大学の小山田哲也准教授が、凍結抑制剤のスケーリングの促進と防止策に関する1時間の講演を行った。最後に、プレストレスト・コンクリート建設業協会の東北支部のPC橋長寿命化委員会の石井精一幹事長が、2013年8月に発刊した「東北地方におけるPC橋コンクリート施工標準手順書[張出し架設編]」の説明を1時間で行った。産官学の協働での講習会(写真2)となり、復興道路の建設がいよいよ本格化するタイミングでもあったため、会場はある意味、異様とも言える熱気に包まれた。


写真1 2014年2月3日の講習会における佐藤道路工事課長の講演内容

写真2 2014年2月3日の品質確保講習会の話題提供者
(右から、佐藤和徳氏、石井精一氏、小山田哲也准教授、筆者)

 その後も、現場レベルでは様々な実践や勉強会が重ねられた。2014年12月1日に、同じ宮城県建設業会館で大型の産官学協働の講習会が開催された。この講習会に合わせて、筆者の研究室の調査チームが11月28日(金)~29日(土)にかけて南三陸国道事務所管内の構造物の表層品質調査を実施し、筆者が講習会で速報を発表した。調査結果は2015年度のJCI年次大会にも論文投稿し、発表した1)。
 以下が、12月1日の講習会のプログラムである。山口県の二宮純氏もお招きし、現場での施工者の工夫がふんだんに盛り込まれた発表も多く、さらにその工夫の効果を表層品質の調査結果でも示したため、産官学の協働のポジティブな熱気に溢れた講習会となった。

13:35 上北天間林道路におけるコンクリート構造物の品質確保の取組み
八戸工業大学准教授 阿波 稔

13:55 覆工コンクリートの品質向上に関する取組みについて
(表層目視評価を取り入れた覆工コンクリートの品質向上)
西松建設(株) 監理技術者 八巻 大介

14:20 新気仙大橋の橋脚における品質向上に関する様々な工夫
(鉄筋加工組立の省力化及びコンクリートの品質向上に向けたチェックシートの活用と養生方法の工夫について)
高惣建設(株) 監理技術者 小原 正

14:45 唐丹第二高架橋の橋脚における様々な工夫
(型枠最下段での透明型枠、後添加方式の改質剤、材料分離対策ホース等の紹介と効果及び表層目視判定を取り入れたコンクリートの品質向上について)
大豊建設(株) 監理技術者 祖父江 崇
           
15:10~15:20(休憩)

15:20 釜石山田道路でのトンネル工事における様々な工夫
(トンネル坑口部の1週間脱枠の効果、覆工に中流動コンクリートを使った効果、覆工にフライアッシュを使った効果、ひび割れの無い覆工の施工時の工夫など)
(株)熊谷組 監理技術者 野々村 嘉映

15:45  矢本石巻道路深田橋での橋梁下部工における様々な工夫
(施工状況把握チェックシート及び表層目視評価を取り入れ、フーチングからたて壁、パラペットへとPDCAをチェックしつつ、施工管理の向上を行った取り組み)
若生工業(株) 監理技術者 佐々木 純一 

16:10 山口県におけるコンクリートの品質確保における動向
山口県土木建築部 審議官 二宮 純

16:30 コンクリートの品質確保荷関する最近の動向
横浜国立大准教授 細田 暁

 このように、品質確保の試行工事は一気に展開が進み、良い構造物を造るためのノウハウも講習会等で共有される状況となってきたのである。
 なお、2014年10月1日に、土木学会の「コンクリート構造物の品質確保小委員会」(350委員会) の第1回の委員会が土木学会で開催され、その日に小澤一雅先生をお招きしてのワークショップを開催し、活動を開始した。